耳が聴こえない雑種犬と小さな甲斐犬の感動の“交流”

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耳が聴こえない雑種犬と小さな甲斐犬の感動の“交流”

 飼い主とペットの話ではなく、2匹の犬が一緒に暮らす9年間を文字と写真で綴った一冊の本がある。『ももとじん 小さな甲斐犬と耳の聴こえない雑種犬』(むらかみかづを/著、メタモル出版/刊)だ。

 本書は、生まれつき身体が小さい甲斐犬の「もも(桃子)」と山寺で野犬の子として生まれた雑種犬の「じん(仁)」の2匹が、よりそって暮らしてきた9年間を描いたフォトエッセイ。
 現在、多くの犬や猫がペットショップで売られる一方で、年間約13万匹もの犬や猫が保健所で殺処分されているという現実がある。また、日本では取引額が高くなる人気種を無理に交配し、生後数週間で親と引き離すことが多いことも問題となっている。本書は、保護犬や保護猫のことを多くの人に関心を持ってもらうという目的のもと、製作されたのだという。

 ある日、ホームセンターのペットショップで、買い手がつかなかったのか、未熟児として生まれた甲斐犬の子犬をほとんどタダのような値段で連れて帰り、桃子(もも)と名付けた。ももは甲斐犬としては、極端に身体が小さく、明らかに貧弱な子犬だったという。でも、一緒に暮らしてみると、手を焼くほど元気のいい犬だった。そして、ももが6歳のとき、仁(じん)が家にやってくる。
 飼い主の「私」は、その頃、奈良の山間にある静かな寺によく参拝していた。その山寺には多くの犬が住み着き、子犬を産み、そのまま野犬化していた。そこで野犬の子犬を保護し、飼い主を見つけるボランティア活動をしている人から、引き取り手のいない黒い子犬をもらい受けることになる。その子犬がじんだった。ただ、じんは生まれつき聴覚神経の異常があって、まったく耳が聴こえなかったのだ。

 一緒に暮らすようになったももとじん。ももが耳の聴こえないじんに対して困った態度を見せることあったそうだ。しかし、あるときから、じんは変わった行動をとるようになる。ももが少し強く吠えたときに、ももの頬のあたりに自分の鼻先をつんと引っかけるようになったのだ。ももは嫌がることもなく、ときにはお返しのように自分の鼻先をじんにつけることもあった。
 それから1ヶ月後のこと。ももが何かに反応して吠えると、続いて「ワン!ワン!」とじんが吠えたのだ。耳が聴こえないじんが、初めて吠えた瞬間。このときからももとじんの距離は縮まり、意思が通じているように、常に一緒に行動するようになるのだった。

 ももとじんの感動の物語、写真のかわいさだけでも、楽しめるが、それだけではなく、犬の生態、犬同士のルール、犬の生きる時間の早さや飼い主の心構えや責任についても、考えるきっかけとなる一冊だ。
(新刊JP編集部)


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