Demand MediaがGoogleに撃墜された原因はブランディングの失敗?

access_time create folderデジタル・IT
SEO Japan

今回はSEO情報ポータルサイト『SEO Japan』からご寄稿いただきました。

Demand MediaがGoogleに撃墜された原因はブランディングの失敗?

パンダアップデートの調整でついに上場までしているコンテンツファームの代表格Demand Mediaの『eHow.com』の検索順位が下落したことが少し話題になりました*1が、今回はSEO Bookのアーロン・ウォールがその理由を独自の見解で分析。 ? SEO Japan

*1:「Google、パンダアップデート更新でDemand Mediaの“お咎(とが)めなし”を撤回」2011年05月10日『SEO Japan』
http://www.seojapan.com/blog/Google、パンダアップデート更新でDemand%20Mediaの“お咎めなし”を撤回

●コンテンツファームではありません
Googleがコンテンツファームを堂々と話題に挙げるようになったころ、Demand Mediaのリチャード・ローゼンブラットCEOは、同社のサイトをコンテンツファームと呼ぶことに嫌悪感を示し、同サイトの質、そして、そのための手入れを強調していた。当然だが、コンテンツファームのコンテンツを見ることに嫌気が差していた人たちは、異なる見解を持っていること *2 が多かった。

*2:The Evolution of Man & Media [Sweet Infographic]『SEOBOOK』
http://www.seobook.com/evolution-man-media-sweet-infographic

Google Content Mill Update: Panda Tank Rides Over AdSense Farms『YouTube』
http://www.youtube.com/watch?v=skbnL6ZPsIg


●パンダIIがDemand Mediaを直撃
Googleは今月の初めにパンダアップデートを世界展開した際、コアのパンダアルゴリズムに対するアプローチを調整し、ユーザーがブロックしたサイトに関するデータ *3 を導入し始めた:

*3:High-quality sites algorithm goes global, incorporates user feedback『Google Webmaster Central Blog』より抜粋(原文英語)
http://googlewebmastercentral.blogspot.com/2011/04/high-quality-sites-algorithm-goes.html

本日、Googleはこの改善を世界中の英語を用いるユーザーに展開し、新たにユーザーフィードバックのシグナルを導入し、ユーザーがより質の高い検索結果を探すことができるようにしました。信頼度が高い一部の状況では、Googleは、ユーザーがブロックしたサイトに関するデータをアルゴリズムに対して導入し始めました。さらに、この変更は質が低いウェブサイトの“ロングテール”にも深く入り込み、以前はアルゴリズムが評価することができなかった質の高い検索結果を返すようになりました。このような新しいシグナルのインパクトは初回の変更よりも(影響を及ぼす)範囲が狭く、米国のクエリの約2%が影響を受けました。これに対して初回の変更では12%近くの米国のクエリが影響を受けていました。- アミット・シングハル

Demand Mediaのサイトの多くは初回のアップデートでダメージを被ったが、コンテンツファームが衰退することで影響を受けなかった、同分野で活動しているいくつかのサイトのトラフィックが急激に増加する状況が生まれた(競合の多くが失速したため)。『AnswerBag(アンサーバッグ)』や『Livestrong(リブストロング)』等のサイトが衰退する中、『eHow』のトラフィックは大幅に増加していた。Googleはエンドユーザーがブロックしたデータに頼りたくなかったのだと私は思う。人々が容易に競合者の飛躍を妨害することができるようになるからだ。しかし、アップデートを介して『eHow』に打撃を与えるために、このデータを利用する必要があったのだろう。『eHow』はいくつかの特徴を持っていた(一部の古い質の高いコンテンツ、素晴らしいウェブデザイン、配信提携、多くのメディアでの露出)。このような特徴が原因で、ブロックに関するデータを利用しない場合、二次的犠牲を出すことなく打撃を与えることが難しかったのだ。

●Demand Media、『Google』経由のトラフィックが40%減少
『Forbes.com』は、Demand Mediaの『Google』経由のトラフィックが40%減少した *4 と予測したHitwiseのデータに注目した:

*4:Google Traffic to Demand Media Sites Down 40 Percent『Forbes.com』より抜粋(原文英語)
http://blogs.forbes.com/jeffbercovici/2011/04/25/google-traffic-to-demand-media-sites-down-40-percent/

1月の一週間目および二週間目で、『Google』からDemand Mediaを訪問したのは0.57%であった……4月の中旬にパンダアップデートがすべて展開されると、Demand Mediaは痛手を感じることになった。4月16日の時点で、『Google』のダウンストリームは0.34%にとどまり、2011年の年明けに比べると40%減少した。

Demand Mediaの株価も40%下落
ちなみにここ数週間でDemand Mediaの株価が約40%下落した。

Demand Mediaの株価も40%下落

その点を考慮して、『eHow』が狙われた理由を考えてみよう。その前にコンテンツファームの台頭と衰退を視覚的に表したインフォグラフ *5 と『eHow』に関するストーリーの第1部 *6 に目を通しておこう。第2部はこれから始まる。

*5:Google’s Collateral Damage『SEOBOOK』
http://www.seobook.com/learn-seo/collateral-damage.php

*6:Google Kills eHow Competitors, eHow Rankings Up『SEOBOOK』
http://www.seobook.com/google-kills-ehows-competitors

●ブランディング
結局、コンテンツファームがまともに宣伝を行っていたら、誰も気づかなかったし、気にもとめなかったのではないだろうか。Demand Mediaが安物の使い捨ての答え製造工場として、『WIRED』で特集 *7 されるまでは、“コンテンツファーム問題”が取り上げられることはほとんどなかった。

*7:The Answer Factory: Demand Media and the Fast, Disposable, and Profitable as Hell Media Model『WIRED』
http://www.wired.com/magazine/2009/10/ff_demandmedia/all/1

人類とメディアの進化

このエントリはジャーナリストを煽(あお)るだけでなく、オリジナルのコンテンツを作成し、その後『eHow』がリライトした作品に居場所を奪われた人たち(リストラ、アウトソーシング、そして、技術の変化により仕事を失った人たち) *8 の逆鱗(げきりん)に触れたのであった。

*8:How to eHow『johnon.com』
http://www.johnon.com/728/how-to-ehow.html

このエントリ(『eHow』が大もうけしていると主張していたが、これはコンテンツの価値の下落の説明によっては、曖昧である)は、Demand MediaをIPO *9 に向かわせること、そして、より多くのメディアの配信提携先を獲得することを目的としていた。

*9:Initial Public Offering の略。株式を新規に公開すること。
株式公開『Wikipedia』参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/株式公開

しかし、実際にはウェブコミュニティを怒らせ、そして、同業者を増やし、Demand Mediaが明かした青写真を基にコンテンツファームが乱立したのだった。マーケティングが多くの人々の怒りを買い、同時に怒らなかった人たちが直接競合するようになると、マージンが割れるため、マーケティングのアプローチとしては失敗と言えるだろう。

●賃金
ジャーナリストがDemand Mediaの悪口をためらうことなく言えたのは、あまりにも賃金が低かったため、詳細なリサーチを行うことができなかったからだ(最低賃金を下回っても喜んで働くなら話は別だが)。そのため、『eHow』のビジネスモデルをジャーナリストたちが探り始めると、『eHow』のライターたちに次のようなことを打ち明けさせたのだった *11 :

「ゴミのような作品を書いていることは自覚している」とその人物は述べた。「家でジンを作る方法に関する私のアドバイスが誰にも読まれないことを祈っている。なぜなら自ら毒を盛っているようなものだからだ」と続けた。

そして、「『eHow』のアドバイスには絶対に耳を傾けるべきではない」と、自らの作品のほとんどが掲載されている、Demand Mediaのトラフィックの多いウェブサイトの一つの名前を挙げていた。

*11:Writers Explain What It’s Like Toiling on the Content Farm『MEDIASHIFT』より抜粋(原文英語)
http://www.pbs.org/mediashift/2010/07/writers-explain-what-its-like-toiling-on-the-content-farm202.html

●スケール
スケールが大きければ大きいほど、自分の行動の問題点を見つけるのが容易になる。1%の大きな数字は、10%の小さな数字よりも大きい。手を抜いて、大きな規模で運営するなら、できるだけ多くの敵を作り、あとは天に祈るのみである。運は後々必要になるからだ。

●常軌を逸したコンテンツ
素通りすることができないほど常軌を逸したタイトルが『eHow』にはいくつか存在する。私の友だちがいくつか教えてくれた。そして、5分間の検索で、次のようなコンテンツを私自身も見つけた:

鼻をほじる
・適切に鼻をほじる方法 ehow.com/how_5722363_pick-nose-proper-way.html
・誰にも見つかることなく鼻をほじる、もしくはこする方法 ehow.com/how_2181862_pick-nose-scratch-surreptitiously.html
・効果的に鼻をほじる方法 ehow.com/how_5067366_effectively-pick-nose.html

お下劣系
・おならをする方法 ehow.com/how_2151823_fart.html
・おならを止める方法 ehow.com/how_4785860_stop-farting.html
・おならを抑える方法 ehow.com/how_2320127_muffle-fart.html
・森の中で大便をする方法 ehow.com/how_2179463_poop-woods.html

生産性に関するアドバイス
・『eHow』の記事を消されないようにする方法 ehow.com/how_5570908_not-ehow-article-erased.html
・仕事をさぼる方法(そして見つからない方法) ehow.com/how_4522164_slack-work-not-caught.html
・仕事でさぼって、ばれない方法 ehow.com/how_4837878_slack-off-work-not-caught.html
・仕事場で何もしないにも関わらず、給料をもらう方法 ehow.com/how_4430256_do-nothing-work-still-paid.html

礼儀を磨く & 礼儀作法を学ぶ
・人を巧みに操って自分の命令通りに動いてもらう方法 ehow.com/how_2167832_manipulate-people-do-bidding.html
・飲酒運転でつかまる方法 ehow.com/how_4825159_get-a-dui.html 「飲酒運転でつかまる行為は、酒を飲んだ後に車を運転するだけで達成されると思っているのではないだろうか。しかし、それはまだまだ折り返し地点に達したに過ぎない。警察に車を止めるように指示される必要があるのだ」
・ばれずに浮気をする方法 ehow.com/how_5528899_not-husband-caught-cheating.html
「浮気をしていることが分かる痕跡を残してはならない。相手にeメールやIMで連絡を取るときはパートナーがアクセス可能なコンピュータを利用してはいけない点をまず忘れないでもらいたい」

アドセンスのクリック詐欺
・『Google AdSense』を利用禁止にされる方法 ehow.com/how_5740892_banned-google-adsense.html
・クリックスルー率を『Google AdSense』を使って高くする方法 ehow.com/how_5203081_increase-through-rate-google-adsense.html
・『Google AdSense』のクリック詐欺に引っ掛からない方法 ehow.com/how_5979999_not-caught-google-adsense-fraud.html

期限が切れたドメインを活用
Demand Mediaは、eNomと呼ばれる大手のドメインネームの登録機関を買収し、『eHow』を支えるリンクを掲載し、ドメインを『eHow』の奥深いページに301リダイレクトすることで、期限切れのドメインの一部を活用した *12 。

*12:eHow.com Using Expired Domain 301 Redicts to Spam Google『SEOBOOK』
http://www.seobook.com/demand-medias-ehow-com-using-interesting-expired-domain-redirect-seo-strategy

●アウンバウンドリンクにJavascriptのNofollow
大半の『eHow』のアウトバウンドリンクは、Javascriptでコーディングされており、Demand Mediaのライターがコンテンツの基盤として使ったオリジナルのコンテンツのソースを『Google』が評価しないようにしていた。

リンクを放出すれば *13 、仲間のウェブマスターからそれ相応の見返りを得ることができるが、ページランクのブラックホール *14 を好むパブリッシャーはいない(所有している場合は別だが)。

*13:Why Paris Hilton Is Famous (Or Understanding Value In A Post-Madonna World)『chartreuse』
http://chartreuse.wordpress.com/2006/09/18/why-paris-hilton-is-famous-or-understanding-value-in-a-post-madonna-world/

*14:Black Hole SEO『SEOBOOK』
http://www.seobook.com/black-hole-seo

●重複 & 自動生成コンテンツ
『eHow』は浅はかなコンテンツを大量に生産するだけでなく、Demand Mediaは『eHow』から集めたデータを使って、姉妹サイトを作り *15 、自動的にページを作り、検索エンジンに自らの結果を供給していた。

*15:LiveStrong OR SpamStrong? You Decide!『SEOBOOK』
http://www.seobook.com/the-spammer-lifestyle

●Googleが間抜けに映った
ある行為に勤しみ、別のことを主張すると、ある程度時間を稼ぐことができるかもしれないが、その搾取的な方法がGoogleの競合者たちに大きなマーケティングのヒントを与えてしまう *16 と、寿命が残り少ない点を悟ることになるだろう。また、『WIRED』のエントリが、メディアのDemand Mediaバッシングを呼び起こした結果、同じように若干対立している立場の人たちを除き、四面楚歌(しめんそか)の状態にDemand Mediaは陥った。

*16:total spam pages created since January 1, 2011『spamclock.com』
http://www.spamclock.com/

結局、Demand Mediaを失墜させた大きな問題点は、ブランディングだったのである。

Googleが間抜けに映る状況は何としても避けたいところだ。それがSEOで最も重要なルールである。
Paid Links – Dont Make Google Look Stupid『YouTube』
http://www.youtube.com/watch?v=vOBcXEja_dM

この記事は、SEO Book *17 に掲載された「Why Was Demand Media Torched by Google? Branding」*18 を翻訳した内容です。

*17:『SEO Book』ウェブサイト
http://www.seobook.com/

*18:Why Was Demand Media Torched by Google? Branding『SEO Book』
http://www.seobook.com/dmd-damned-by-google

しかしトラフィックだけでなく株価までも40%下落するとは……。『Google』の影響力の強さを改めて感じる出来事ですね。『Google』に依存しすぎるウェブビジネスの怖さも感じますが、しかし内容を読んでいると「大手とはいえ、上場企業とはいえ、落とされてしかりかな。。。」と感じることも事実ですけどね。日本でも『nanapi』をはじめ頑張っているコンテンツサイトが成長しつつありますが、Demand Mediaの成功だけでなく失敗からも学ぶべき点は多くありそうです。って既に十分してると思いますけどね。 ―SEO Japan

執筆: この記事はSEO情報ポータルサイト『SEO Japan』からご寄稿いただきました。

  1. HOME
  2. デジタル・IT
  3. Demand MediaがGoogleに撃墜された原因はブランディングの失敗?
access_time create folderデジタル・IT

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。