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「宇宙から写真を撮影するときは、まず粘土をこねるところからはじめます」――岩谷圭介さんインタビュー(後編)

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 岩谷圭介さん、1986年生まれの29歳。
 岩谷さんは北海道大学在学中に“個人レベルの投資”と身の回りの素材だけで「ふうせん宇宙撮影」という壮大な“宇宙開発”をはじめます。そして、2012年には日本で初めて小型風船カメラを使い、上空3万メートルからの撮影に成功。
 彼の撮影した写真は、CMや広告にも起用されるなど、大きな注目を集めています。
 このほど出版された『宇宙を撮りたい、風船で。』(キノブックス/刊)はそんな岩谷さんの想いが詰まった一冊。彼が今までやってきた「挑戦」と、諦めないで一歩を前に出すことの大切さが書かれています。そんな岩谷さんへのインタビュー後編をお伝えします。
(新刊JP編集部)

■「宇宙から写真を撮影するときは、まず粘土をこねるところからはじめます」

――二度目の大学4年生のときにこの「ふうせん宇宙撮影」を始められたんですよね。

岩谷:本当は(大学を)卒業したくなかったのですが、単位をもらってしまって。ちょうどそのとき、風船を使って宇宙撮影をしようとしている人たちがいるという海外のニュースサイトの記事を見つけて、自分もやってみようと思いました。
昔から宇宙はすごく好きだし、自然科学も好きでした。また、自分が発明家になりたいという夢を持っていたこともあり、自分の好きだったものが一気につながった感じです。でも最初は失敗続きでしたね。

――この本にもそのエピソードは触れられていますよね。ちょっと変な質問ですが、岩谷さん、失敗は好きですか?

岩谷:うーん、失敗はしないほうがいいと思いますけど(苦笑)、完全にそのものによりますよね。失敗自体はしない方がいいですが、しないまま進むと痛い目にあうこともありますからね。

――痛い目とは?

岩谷:例えば、失敗せずにそのまま上手くいってしまった場合、自分が優秀だからと勘違いしてしまいます。実は成功しているのはまぐれで、もう一度あとからやってみると、そのときは失敗してしまい、みんなの前で大恥を晒す…ということもありますよね。

――岩谷さんが失敗を重ねながら実験を続けていくなかで、手ごたえをつかんだのはいつくらいのことでしたか?

岩谷:手ごたえというか、一度やってみると何かしらのフィードバックが得られます。全然ダメでも、どうして失敗したのか、何が悪かったのかということは考えられると思うんですね。これは科学的な事柄でなくてもそう。好きな女の子にアプローチをするのも同じです。言い方が悪かった、もう少しおしゃれな店に行くべきだった、とかね。最初の一歩はなんてことないレベルから始まってもいいんです。
僕は最初に設計をする際、その辺にある粘土をこねて「こんな感じかな」というところからはじめます。実は最初からがっつり設計すると大変になんです。実際にその通りにいかないことが多いので…。だから最初は簡単なところからはじめると、挑戦を挑戦と感じなくなると思います。

――今、「ふうせん宇宙撮影」で成し遂げたいことはありますか?

岩谷:これはたくさんあります。今進めているのは、プラネタリウムで体験できるようなプロジェクトですね。風船を少しずつ切り離しながら空に橋をかけたような、ちょっとアーティスティックなものを作りたいと思います。装置自体はすでに組み上がっているので、あとは飛ばすだけですね。

――宇宙の撮影以外には何か取り組んでいることはありますか?

岩谷:深海用の装置も作っています。これはおそらく来年になると思いますが、海の底の暗黒の環境で、自分の見られない世界を撮影してみたいですね。

――岩谷さんがこれまでに影響を受けた本をご紹介していただけますか?

岩谷:『NASAより宇宙に近い町工場』という本です。著者の植松努さんからは非常に影響を受けていて、実際にお会いしてお話もうかがったことがあります。
おそらく最初にお会いしたのは2012年の番組の撮影だったと思うのですが、宇宙開発を風船でするというプロジェクトに協力してくれる方として、植松さんの工場に行ったんです。すごく広い敷地の中に工場があるのですが、中に入ってみると中学生くらいの学生たちが300、400人くらいいたんですね。工場見学かなと思って見ていると、そうではなく彼らは紙のロケットを持っているんです。そこで実際に植松さんに挨拶して話を聞いてみたら、彼らが作ったロケットを敷地で飛ばす、と。でも、誰もがそうだと思いますが、ロケットを飛ばしたことがある経験はみんなありません。だから不安そうにしているのですが、実際、ロケットは勢いよく飛んでいく。その時の表情の変わり方を見て、「自分はこういう仕事をしなくちゃいけないんだ」と感じたんです。
僕は生まれも育ちも裕福ではありませんから、お金を稼ぐということはすごく意識しています。でも、あの表情の変化を生み出せるのなら、稼ぐなんてくだらないことだと思いました。彼らの中にある「無理だ」「できない」が壊れる瞬間を生み出せるのならね。

――本書をどのような方に読んでほしいとお考えですか?

岩谷:若い方ももちろんそうですが、夢を追いかけたいと思っている人にも届いてほしいです。何かやりたいことがあるけれど、でも…という人に読んでもらえたら嬉しいです。また、夢って何だかわからないという人にも読んでほしいです。

――最後にお聞きしたいのですが、岩谷さんは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドクに憧れていらっしゃるそうですね。シリーズの最初の作品で30年前からきたマーティに自分の未来が書かれた手紙を渡されて、ドクが「未来は知りたくない」と拒むシーンがあります。岩谷さんはご自身の未来を知りたいですか?

岩谷:そうですね…。未来の世界がどんな風になっているかは見てみたいですが、ドクと同じように自分自身の未来は見たくないですね(笑)

(了)


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