Album Review: アニャンゴ 世界初の女性ニャティティ演奏家によるアーバン&プリミティヴなインスト作品

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Album Review: アニャンゴ 世界初の女性ニャティティ演奏家によるアーバン&プリミティヴなインスト作品

 これだけ日本の音楽シーンが成熟し、マーケット自体も非常に大きくなっているというのに、世界を舞台に活躍する日本のミュージシャンというと、本当に数えるほどだ。それはなぜか?なんて議論はさておき、胸を張って日本代表!と叫びたいひとりに、アニャンゴという音楽家がいる。本名を向山恵理子というこの女性は、単身でケニア奥地の村に赴き、ルオ族からニャティティという楽器の手ほどきを受けた。このニャティティは小型のハープのような弦楽器で、足に付けた打楽器と一緒に鳴らしながら演奏する。しかも、これまでは村の限られた男性にしか演奏を認められておらず、アニャンゴは世界初の女性演奏家となったそうだ。

 こうして世界中で活躍するようになったアニャンゴにとって、初のインストゥルメンタル作品となるのが、本作『サバンナ』だ。本来は演奏しながらら歌うというのがニャティティのスタイルなのだが、ここでは楽器の音色そのものにしっかりとフォーカスしている。民族楽器や民族音楽なんていうと堅苦しくマニアックなイメージを持つ方も多いかもしれない。しかし、この作品からそういった閉鎖的な印象は一切感じられない。軽やかな音色で弾かれる響きが心地よくループし、ゲスト参加したラティール・シーによるシンプルなパーカッションのリズムが躍動感を与えていく。

 全体的にはいわゆるミニマル・ミュージックのようであり、曲によってはテクノやエレクトロニカにも通じるクールな世界が広がっている。「Gaudensha」で聞こえてくる笛の音は、どこか日本の祭囃子を思わせてくれるというのも面白いし、詩の朗読を挿入したりダブ的な音響効果を取り入れるなど実験的な部分も多々感じられる。要するに、アフリカ音楽という狭い枠組みでとらえられない、グローバルな魅力がたっぷりと詰め込まれているのだ。アーバンとプリミティヴが渾然一体となった音世界は、いつまでも浸っていたいと思わせる心地よさがある。そして、海外に自信を持って差し出せるこんな傑作が、日本から生まれたことを誇りに思うのだ。

Text: 栗本 斉

◎リリース情報
『サバンナ』
アニャンゴ
2015/10/18 RELEASE
2,000円(tax incl.)

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