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シャープは日本の大企業の象徴 「社員に優しすぎて切らない。断腸の思いで切ったら遅すぎた」

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リストラ実施中のシャープでは、この9月末で3200人を超える社員が早期退職した。会社を去る選択をした社員の中には、苦渋の決断をした人もいたようだ。10月1日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)は、そんなシャープに密着。高橋興三社長は「全社キックオフ」で国内外の社員にこう呼びかけた。

「3200人を超える希望退職を募集せざるを得なかったことに、あらためておわびする。シャープのブランド、技術、人の3つを残したい」

早期退職者は「いち早く立ち直ってほしい」と祈る

前日の9月30日夕方、早期退職者とみられる大きな紙袋を持った人たちが社員通用口から出てきた。49歳のSさんも最後の勤めを終え、その足で会社の裏手にある行きつけのお好み焼き屋に向かう。

シャープに残る選択をした先輩社員とともに、飲み交わす約束だ。「全然実感がわかない」というSさんは、高校を卒業後シャープに入社。31年間の会社人生で工場勤務などを経て営業にまわるなど、様々な職種を経験してきた。

Sさんはビールを飲みながら「人を育てる会社」と評し、「シャープでなかったら、どこかでのたれ死んでいたかも分からへん。おやじのような存在」と深い愛着を語った。

3年前の早期退職者の募集では会社に残る決断をしたが、今回は会社を取り巻く深刻な状況を肌で感じて退職を選んだ。Sさんは、穏やかな笑顔でこう話す。

「絶対シャープにはつぶれてほしくないし、いち早く立ち直ってほしい」

同席した先輩社員が「残った方が大変や」と言うと、Sさんは厳しい表情になり「そうそう。残った方が大変」とうなずいていた。とはいえSさんより年上の人たちに、会社を立て直す力がどれだけあるのか分からない。それぞれの生活もあるのだろう。
リストラにも「誰が悪いということでもない」

シャープはかつて世界シェア1位を誇った液晶テレビをはじめ、主力の液晶事業が低迷。あらたな事業を模索中だ。先輩社員は「戦うしか生きる道がない」と語るものの、「戦うには優しすぎる」と弱点も漏らす。

「社員に優しすぎて、切らない。断腸の思いで切ったら遅すぎた」

Sさんの今後の仕事は決まっておらず、49歳での転職は難しそうだ。しかしそれなりの退職金などは得ているのだから、当面の生活は問題ないのだろう。後悔はないのか聞くと、「誰が悪いということでもないし、会社が生き残るためにそうしたなら仕方ないと思う」と語る。

シャープは好きですかという最後の質問には、「大好きです」と即答した。それはこれからも変わらないと話すSさんは、寂しそうな微笑を浮かべていた。他の退職者のことは分からないが、Sさんのように「会社のために犠牲になろう」と決断した人がいたことが伺える。

そんなシャープは10月1日から、新たに家電や液晶など社内を事業ごとに分けるカンパニー制をスタート。管理職ポストを600程度廃止するなどして、意思決定のスピードを上げるという新体制になった。
それは本当の「優しさ」なのだろうか

厳しい言い方をすれば、社員たちはしきりに会社を「優しい」というが、それは本当の優しさなのだろうか。ただ自分たちの手を汚さないために、責任の所在が明らかにならないように、決断を先送りし続けただけではないのか。

会社が倒れかけるまでリストラは許されないという風潮も、結局は社員を路頭に迷わせる。もっと早くリストラに着手し、会社を立て直した上で社員を呼び戻す機会もあったはずだ。「誰が悪いということでもない」という社員の諦めの言葉を聞くと、シャープが日本の大企業の象徴に思えてくる。(ライター:okei)

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