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高1女子に奨学金を返還命令!福島市の非情な決断の是非

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生活保護の現場で一見シビアな判断が下される原因

ある女性のコラムによると、平成26年4月、福島市は母親と生活保護を受けて暮らす女子高校生が得た給付型奨学金の全額を収入と認定し、保護費を返還するよう求めたとのことです。福島市の行った処置は人道的に信じがたいように思えます。しかし、生活保護の現場ではこうしたケースは決して珍しいものではありません。

今年の3月には、生活保護を受けて暮らす女子高校生が修学旅行に参加するために始めたアルバイトによって稼いだお金を、川崎市が返還するよう決定した処分について、これを取り消すという判決が出ています。生活保護の現場で一見シビアな判断が下される原因は、大きく二つあると考えられます。一つは生活保護の目的、一つは現場の判断方法に関連するのではないかと考えます。

「最低限度の生活」に必要な分しか支出しない

生活保護の目的は、「その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること(生活保護法1条)」です。「最低限度の生活」については、保護の種類によって基準額が細かく決められており、余分な援助が出来ない仕組みになっています。誤って過分に保護費を出してしまった場合や、不正な手段を用いて過分の保護費を得た者に対しては、返還や徴収することにより、事後的な解決を図る仕組みです。

生活保護は、世帯の収入と基準額との対比により支給されるか否かが決まりますが、ここにいう「収入」は働いて得たお金、いわゆる「勤労収入」というもののほか、年金や恩給、仕送りによって得たお金なども含まれます。あくまでも、「最低限度の生活」に必要な分しか支出しないというルールが定められているわけです。

生活保護のルールは非常に難しい

こういったルール(生活保護法)があり、それを使って実際に生活保護を支給したり、返還を求めたりするのは、法律の建前上は「都道府県知事」や「市町村長」等と定められています。しかし、実際に知事や市長らが現場仕事をしているわけではなく、生活保護の実務については、公共団体の職員が対応しているわけです。

生活保護のルールは非常に難しいところがあり、各職員一人一人が正確に理解した上で対応を行っているのかは非常に疑問が残ります。また、「水際作戦」に代表されるように「生活保護を受給させない」ということに価値観を見出して仕事をしているのではないかと疑いを持たざるを得ないケースも存在します。

もちろん、生活保護の不正受給については大きく報道されるケースもあり、現場を担当する職員としては警戒心を持っていることは理解できます。担当する職員とすれば、生活保護が税金を元に運営されており、支出の増加が財政の圧迫に繋がるという意識があるのでしょう。そんな意識自体は正しいと思われますが、前提となる知識が十分ではない者が節約する意識を全面に押し出して仕事をすれば、どういう方向に話が進むかは一目瞭然です。

少なくとも「不正だ」と糾弾されるべき内容では無い

冒頭で紹介した2つのケースでも、現場担当者の十分ではない知識により、誤った判断が生じた可能性があります。いずれも学業を充実させるためのお金であり、贅沢をするためのお金ではありません。少なくとも「不正だ」と糾弾されるべき内容では無いはずです。福島市のケースも、再審査請求によって裁定がひっくり返ったようです。

もちろん、一つ一つの判断は非常に難しいケースもあります。そうした場合、現場の職員とすれば、「支給したものを返せというよりは支給しないとした方が良い」「返させるかどうか迷ったら、とりあえず返させる決定を出す」と考えるのが立場上、自然なのかもしれません。ただ、もし不合理な判断がなされたとしても、不服申し立てや裁判によって判断は変更される可能性もあります。生活保護を受給している人で疑問を抱く人がいれば、「法テラス」という機関を利用し、弁護士への相談や依頼を検討してみるべきでしょう。

(河野 晃/弁護士)

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