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月給22万のはずが13万に…「自腹営業」の実態

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月給22万のはずが13万に…「自腹営業」の実態

 「自爆営業」という言葉はブラック企業の実態の一つとして、すっかり有名になった感がある。
 これは、営業ノルマを達成するために、営業マンや販売スタッフが自腹を切って自社の商品を購入することを指す言葉だが、額が少額でなおかつ一度や二度であれば特に疑問に思わずに自腹を切って、すぐに忘れてしまう程度のことかもしれない。しかし、中には額も頻度も生活を圧迫するほどの「自爆営業」を、半ばスタッフに強いる形でやらせている企業や団体があることもまた、広く知られはじめている。

 『自爆営業』(樫田秀樹/著、ポプラ社/刊)は、その実態はもちろん、自爆営業が生まれる背景や対策について、実例を交えて解決している。
 本書によると、ひとくちに「自爆営業」といっても、その手口はさまざまで、単に商品を自分で買うだけではないケースも多く、本人が自覚しないままに「自爆営業」をさせられている人は案外多いのではないかと考えさせられる。

 ◇    ◇    ◇

 牛乳配達などを全国展開するN社の千葉デリバリーセンターにつとめる山田さんは、2006年、入社前の面接でこんなことを言われたという。
 「牛乳配達に使う車のガソリン代は自己負担」「その車のリース代として給与から1万6千円が差し引かれる」
 この時点で辞退していれば、山田さんがその後苦しい思いをすることはなかったはずだ。しかし、山田さんは「ボーナスは前年実績で2.8カ月分」という面接官の言葉を信じて「それならガソリン代とリース代をカバーできる」ということでその条件を飲んだという。当時すでに50代後半だったため、正社員での雇用であれば贅沢は言えないという事情もあったようだ。

 N社の牛乳配達は荷物の積み込みから配達、集金、そして新規顧客を得るための営業など多岐にわたり、過酷なものだった。しかし、山田さんは毎日懸命に働き、半年ほど経ったころ、上司にボーナスの時期について尋ねたが、返ってきたのは意外な言葉だったという。
 「ウチの会社にボーナスなんてないよ」
 驚いて、入社時にみた求人票に「ボーナスは年2回」と書かれていたことを話すと、「あれはミスプリント」という一言で片づけられてしまった。
ボーナスがあるからこそガソリン代を自腹で払い、リース代を支払ってきたのだから、この言い分は到底納得できることではない。しかし、N社のケースはこれだけではなかった。

 N社には、毎月の配達本数が7200本というノルマがあり、このノルマに達しないと、不足分1本につき30円が給与から引かれるというシステムだったのだ(2014年2月時点)。自社商品を買うというのではなく、ノルマ不足分を給料から天引きする形だが、これも明らかな「自爆営業」だ。
 7200本というのは一見しただけでもかなりの数字で、達成できているのは、全国に1000人ほどいるとされる同社の販売員のうち13%ほど。残りはすべてノルマ不足分を給料から天引きされていることになる。
 山田さんもまた、月に6000本ほどしか配達できなかったという。つまり車のガソリン代とリース代に加えて、毎月3万円以上が給料から天引きされるということ。これらを差し引くと、本来22万円の固定給が13万円ほどだった。そして会社への交通費も出ないため、さらにお金が出て行ってしまうのに加えて、残業代も一切出ない。

 こうした劣悪な条件を見ると「そんなに経費を削りたいのならば、会社は最初から個人事業者に業務を委託すればいいのではないか?」という疑問が浮かぶが、この割に合わない条件を引き受ける業者はいない。
 そこで会社は正社員を募集して、それにつられてやってきた人を実態を隠したまま採用するのだ。

 しかし、もちろんこんな状態で従業員が不満を抱かないはずがないし、「正社員なのに配達の車はリース」など矛盾している点も多い。
 こういった条件の改善を求めて山田さんは他の販売員たちとともに会社と争う決心をしたが、N社の悪質さがここから徐々に明らかになっていく。

 「自爆営業」は、会社側が明らかに意図的に導入しているシステムだけに悪質性が高いといえるかもしれない。実際、山田さんらが対決したN社も、団体交渉に応じなかったり、労基署の是正勧告を無視したりと一筋縄ではいかなかったようだ。
 ここまで極端な「自爆営業」がシステムとして定着している会社はさすがに少ないだろうが、もし自腹で自社の商品を買わされていたり、ノルマの不足を給料から払っているならば、どんなことを考えて、どんな行動を取るべきか。
 本書では様々なケースが提示され、自分の行動とそれがもたらす影響についてシミュレーションする助けになってくれるだろう。
(新刊JP編集部)


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