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立ち食い店にも栄枯盛衰の波 焼肉は隆盛もそば・うどん苦境

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「立ち食い」がブームだ。新規参入の「立ち食い」店が隆盛を誇る一方で、苦況に立たされる店もある。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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 いまから20~30年前。「立ち食い」と言えば、そば・うどんと相場が決まっていた。スタンドカレーや、一部に立ち食い寿司などもあるにはあったが、「風情」はあっても「質」は決して高くなかった。当時は、日本の外食産業が急成長していた頃。急成長するということは、それだけの伸びしろがあったということだ。

 対して、少し前に爆発的なブームとなった「俺のフレンチ」などの価格破壊系立ち食いでは、食べ物の「質」は向上した。もっともそこには懐かしき立ち食いそばの「風情」はなく、その代わりに「コスパ!」を合言葉に人が押し寄せる喧騒があった。気づけば「立ち食い」という言葉がもともと持っていた「風情」のようなものは失われてしまっていた。

 しかしこのところ、「風情」に「質」を兼ね備えた立ち食いが人気になっている。新店の勃興に、再注目すべき老舗など、さまざまな「立ち食い」が都心を中心にそこかしこで注目を集めている。とりわけ熱いのが「焼肉」だ。近年では「一人焼肉」という言葉も一般的になってきた。この言葉は「一人(でなかなか行くことのできない)焼肉」という意味も内包しているが、その抵抗感を下げたのが「立ち食い」という業態だった。

 ブームに火をつけたのは、2010年にオープンし、いまや開店から閉店まで連日超満員の神田「六花界」だろう。わずか2.2坪の店内にひしめく十数名の客が2つの七輪でめいめい肉を焼く。見知らぬ客同士が和気あいあいと盛り上がる、稀有な業態の焼肉店だ。

 さらに2014年に新宿にオープンした「治郎丸」。部位ごとに一枚ずつ肉が注文できる、寿司店の「お好み」のような注文方式で人気となっている。このほか、椅子こそあるものの恵比寿「おおにし」や中野「中野ビーフ」など、この1~2年で開店した一人客歓迎という焼肉店が好評だ。

 他ジャンルの「立ち食い」の人気も高い。東銀座の「銀座しまだ」や勝どきの「かねます」など、割烹のような料理を出す和食立ち飲みもある。立ち食い寿司に至っては、江戸時代創業の老舗で外国人客が喜々として寿司をつまんでいたりもする。その他、中華に牛丼、大阪でおなじみの串かつなど下町の老舗から新店まで百花繚乱。花盛りである。

 もっとも何かのジャンルで文化が成熟するとき、既存の主な業態は苦境に立たされることが多い。実際、「立ち食い」の象徴だった立ち食いそば・うどん店は苦境に立たされている。

 厚生労働省が2014年に発表した「平成24年度生活衛生関係営業経営実態調査」では、調査対象となった「立ち食いそば・うどん店」の実に75%が売上高減少となっている。そればかりか、売上増加という回答はND(ノーデータ)――つまり得られていない。今後の経営方針についても、50%が「廃業」を視野にいれるという厳しい現状が伺える。

 もちろん立ち食い業態でも繁盛しているそば・うどん店はある。だが、先日の本稿でも触れたように、大手の「富士そば」も「ふじ酒場」というちょい呑み業態に乗り出した。

 立ち食い市場全体が変化するいま、その象徴的存在であるそば・うどん業態も安穏としてはいられない。そして食べ手として好みの店を支える、唯一最善の行動は店に通うこと。多様になった新店に食指を伸ばすだけでなく、最近足が遠のいているあの店にもまた顔を出そう。


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