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富士そばが「ちょい呑み」参戦 ならではの「天ぬき」は格安

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 ファストフード店といえば「さっと食べ」て「さっと帰る」ためのものだが、最近は「ちょっと呑む」というのが流行っている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

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 今年、和製ファストフードが「呑み」をキーワードに集客を伸ばしている。先鞭をつけたのは吉野家だった。2013年に神田で実験的にスタートさせた「吉呑み」対応店舗を今年、一気に拡大した。当今年5月上旬の時点で150店強に。さらに6月末までに360店舗とハイペースで対応店舗を増やしている。

「吉呑み」の好評を受けて、今年ファストフード業界が一斉に「呑み」へと舵を切った。まずは牛丼業界のライバル、松屋がこの夏、生ビールの提供をスタートさせた。しかも一杯150円。加えて、「牛焼肉定食」「豚キムチ定食」など定食商品のおかず部分を切り分けて、おつまみ牛焼肉、おつまみ豚キムチなど単品の形で提供を始め、生ビールとのセットメニューにも展開した。

「すき家」も松屋同様、既存メニューをいかした、おつまみ展開だ。「きのこペペロンチーノ牛丼」、「にんにくの芽牛丼」、「かつぶしオクラ牛丼」など、トッピング系牛丼の具材をサイドメニューとして提供している。もっとも酒呑みから見るとサイドメニューというより、つまみに見える。

 マンガ『野武士のグルメ』(作・久住昌之 画・土山しげる)にも牛丼屋飲みのエピソードが登場する。酒の本数制限こそあるものの、牛丼屋には「牛皿」という他の業態にはないつまみもあり、何よりリーズナブル。一度経験するとハマる人が続出するのも無理はない。

 今年の「ちょい呑み」業態の新機軸といえば、「ふじ酒場」だろう。立ち食いそばチェーンの「富士そば」が7月から一部店舗で展開している、平たく言うと「吉呑み」の「富士そば」版ちょい呑みサービスだ。この7月、高円寺店を皮切りに、人形町、新橋などの富士そばで15~05時の時間限定で展開。現在都内に数店舗を数え、今後さらに増やしていく予定だという。

 内容も「ちょい呑み」系らしく、生ビール(ザ・プレミアム・モルツ)や角ハイボールを280円で提供。しかも2杯目以降は200円。ほかにも板わさに卵焼きなど、いかにも蕎麦屋らしいつまみもある。セットメニューの「ちょい呑みセット」はビールに枝豆、玉子焼きで580円ぽっきり。もちろんお通し代やチャージもつかない。

「蕎麦屋」ならではのおつまみメニューもある。「天ぷらそばのそば抜き」の「天ぬき」だ。文字通り天ぷらそばからそばを抜いたもので、最近では裏メニューのようにも位置づけられている。ふじ酒場の天ぬきは、かき揚げ、ちくわ天、春菊天、いか天など。立ち食い蕎麦店だけあって、価格も110~130円と格安だ。

 惜しむらくは、ふじ酒場の「天ぬき」は皿に盛られた天ぷらにかけつゆが少しかかっているだけという、ややさみしげな風情だが、考えてみれば天ぷらだけ食べるなら、つゆが丼になみなみと注がれている必要はない。つゆに泳ぐ「ぬき」が食べたければ、老舗にいけばいいのだ。代わりにふじ酒場には「カツカレー ライス抜き」というオリジナルメニューもある。

 江戸時代から、酒は庶民の楽しみだった。海苔や板わさなどで一杯やることを「蕎麦前」と呼ぶほど、蕎麦屋の居酒屋使い――蕎麦屋酒は大衆文化として定着していた。「ふじ酒場」で蕎麦屋酒を覚えた客が老舗の蕎麦屋で酒を嗜むようになり、現代で失われつつある「粋」を覚えていく。その端緒が、現代の大衆食の象徴とも言える「富士そば」や「吉野家」だとしたら、それはちょっと楽しいことのような気がする。


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