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井筒和幸監督、映画『ゴッドファーザー』を語る 「日本映画界でシシリーのコルレオーネ村に行ったのは俺だけ」【後編】

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映画『ゴッドファーザー』がこのたび、デジタル・リマスター版の大迫力の最新映像と、シンフォニー・オーケストラの生演奏によるニーノ・ロータの映画音楽という、夢のコラボレーション『ゴッドファーザー・シネマコンサート』として復活。2015年10月3日(土)に、東京国際フォーラムで上演されることが決定。

日本で最も映画『ゴッドファーザー』を愛している人物、井筒和幸監督にお話を伺った後編です。監督はなんとシシリーのコルレオーネ村へ行った事があった!

Q:本作は音楽が貢献している部分も大きいと思いますが、音楽的に注目すべきシーンはどこでしょうか?

井筒:それはあの”馬の首”のシーンですよ。

最初は薄く、スーッとあの曲(「The Godfather Waltz」)から入るんです。それが段々に編成も厚くなって、不協和音も高まってくるのよ! それで(カメラが)ベッドに近寄り、シーツをまくったら、男の叫び声で音楽も殺されるの。あれはスゴいですよ。

だから今回のシネマコンサートは見物やね。ちゃんと生演奏してくれるんちゃう? 高まってきた曲が、馬の首でパツーン! とカットアウトですよ、指揮で。(俳優の)「うわーっ!」ていう声と重なって切り替わる。あれ、実は叫び声が先に出て、その後に音が切れるんだよね。ミキシングって難しいのよね、その人のセンスだから。

音楽がパッっと切れたときに「わーっ」て声が出る…と思うじゃない、大学の映画芸術学部は(笑)。でも、ホントは違うんだよね。高まった音楽がまだ続いてるときに、叫び声が入って、その声が音を消してくれる、っていうのもアリなんですよ。俺たちもそういうダビングを覚えたものね。授業とは違うんだよね(笑)

Q:他には、この『ゴッドファーザー・シネマコンサート』で期待しているポイントはありますか?

井筒:この企画、誰が考えたか知らんけど、どうしてこんなオモシロイこと今まで気づかなかったのって(笑)
時代が、もう一回ちゃんとしたアナログの生に戻りたいっていう、そういう気運があるでしょうね。これだけデジタルだらけのウソっぽい時代が続くとね、もういい加減、本当の迫力を感じられなくなってるんですよ。

ハリウッド大作がどんなにスゴいことやってくれても、まったく驚けないんです。映像そのものの迫力がないのよ。例えば、ドカーン! て円盤が落ちてきて目の前で破裂しようが、人が何百人フッ飛ぼうが、なんとも思わないでしょ?

人間の眼の黄斑、視神経細胞ってスゴいもんでね、本物をジャッジできるようにできてるんですよ。迫力ってのは、生で映したホンモノにしか感じないですよ。

だから音楽も含めてだけど、リアルな、生々しいことに戻りたいっていう、世界の潮流じゃないかね。

Q:今回、そんなシネマコンサートの上映作品に『ゴッドファーザー』が選ばれたというのは?

井筒:当然の事です。最高やね。組合せとして最高。こんなに生々しいストーリーは他にないわけだから。こんな3時間近いバケモノみたいな作品に全編(生演奏)を乗っけるなんて、とんでもないことですよ。

Q:あらためて、この映画における音楽の貢献度を再認識できそうですね。

井筒:味わってみたいよ、生音で!フルオーケストラでどこまでやんのか?ってね。今の劇伴って鳴りっぱなしか、すぐ切れて、急になくなるか。だから
きっと音楽の意味も発見できると思うよ、再編曲してくれるかも。プラス10秒とか。うまく余裕でやってくれるんじゃないかな。聴いてみたいよねえ。

やっぱり時代が求めてるちゃうかな?ライブなものに戻りたいとか、バーチャルなものには飽きたと。こういう企画が出てきて、しかもロンドンやらニューヨークで大騒ぎしてるんだから。こんなん調子にノったらパート2もやるで(笑)

Q:『ゴッドファーザー』では、仲間やファミリーの”絆”も印象的に描かれています。現代の若者たちが、同作から社会を生き抜くためのメッセージを受け取るとしたら?

井筒:あのとおりに生きてみろって言ったら、捕まってまうよ!(笑)生存競争の殺し合いの映画だから!

公開当時は、イタリアの移民協会から「上映中止してくれ」って申し出とかあったのよ。「イタリア人みんながマフィアじゃない。あれは一部のことで、我々はマジメに暮らしてるカトリックだ」と、そんな苦情が殺到したらしいよ。

シシリアンだって勘違いされてしまう。シシリアンは全員あんな不良か? と、そうじゃないでしょうと。そんなことやめといてくれよと、イタリアのマジメな商店街の人たちはね(笑)。

『仁義なき戦い』も同じことよね(笑)。広島人は全員あんなんか?って。

Q:『ゴッドファーザー』のコルレオーネ家、そしてマイケルから学べる「男の仕事観」とは?

井筒:仕事観でいうと…彼のやってること鬼やからね。ヤバいよ、あれは!(笑)。

なんでもカネで片付けてね。地位と権力とカネですよね、裏表のもんだけどワンセットやね。それで動いてるアメリカの世界を描いてる。政治家もマフィアも、どいつもこいつもカネにまみれて生きてるだけじゃねえか、みたいな。マトモな奴は1人もいないと。これは資本主義の象徴を描いてるわけよ。

Q:最近の草食系な若者に一言、喝を入れて下さい!

井筒:べつに草食系でも格差社会の底辺でも仕方ないんだけどさ(笑)やっぱり人間の闇の奥をね、そういうものを、自分を見つめるにはいい機会ですよ。今はそういうものが無くなってしまったからね。

ハリウッド大作とか金かけただけの映画じゃ社会の闇も覗けないし、人の心も分からないよね。この国はこれでいいのか、自分を見つめなおすとか・・・「心の中」やね。そういうことには一番いい映画だと思うな。

Q:シネマコンサートの前に映画『ゴッドファーザー』を予習してから行ったほうがいいでしょうか?

井筒:観ないでいったほうがいいでしょう。これが最初のゴッドファーザー体験で全然OK、そのほうがいいと思う。小さいテレビ画面で観て来るなんてダメ。彼らの人生観に圧倒されないと、何を感じて思うか?ってことですよね。

そうそう!俺、シシリーのコルレオーネ村行ったんよ。日本映画界で行ったのは俺だけですよ。テレビ番組で「どこ行きたいですか?」って聞かれたから「(挙手して)コルレオーネ村!」って(笑)。そしたら番組の編成がみんなノッちゃって。

これ俺、唯一の自慢やねん。サクさん(深作欣二)に言ったら「本当か!? いいことしてんじゃねえか」って。大島さん(大島渚)にも言われたよ。若松さん(若松孝二)にも「井筒、お前コルレオーネ村行ったんだって? テレビ見たぞ! 良いとこだった? どうだ?」って言われて、「最高でしたよ」つってさ(笑)

ちょっと閉鎖的な村だったけどね。コルレオーネ村にゴッドファーザーの撮影クルーは実際に来てないんですよ。コッポラがシナリオハンティングに現れただけで。

俺らが行った時は小さなカフェで迎えてくれたけど、観光地でも何でもなくて、村人が窓からソッと覗いてたりね。そこにホントか嘘か知らんけどアル・パチーノの親戚だって名乗る男まで現れたけどね。。

だから観光客はそんなに来ないし、よほどの『ゴッドファーザー』ファンでもなかなか来ない。でも「ゴッドファーザー・ワイン」っていうの作ってるんだよね(笑)。しかもボトルのラベルが、映画ポスターのビト・コルレオーネ=マーロン・ブランドの顔まんま使って、お前らこれ版権どうなっとんねん!って(笑)。

https://youtu.be/qbF_wpsNxQw

■参照リンク
ゴッドファーザー・シネマコンサート 公式サイト
http://www.promax.co.jp/godfatherlive/

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