ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第7回)

DATE:
  • ガジェット通信を≫

16.静かなPOSデータ

 

スティーブンとブライアンはコンピュータの前で顔面蒼白になっていました。

 

「どういうことですか、ブライアンさん!」

 

「今言ったとおりだ。お前の1stアルバム『聖域 〜マイ・サンクチュアリ〜』は1枚も売れていない」

 

「1枚も!?」

 

「ああ。このコンピュータにはリアルタイムのPOSデータが表示されている。それによるとお前のアルバムは、全米で1枚も売れていない」

 

 

「ということは・・・?」

 

「失敗したんだ。俺たちは負けたんだ、市場に・・・」

 

そう言うとブライアンは膝を落とし、さめざめと泣きました。

 

 

17.母からの手紙

 

頭が真っ白になりながら家に帰ってきたスティーブンがポストを開けると、1枚の手紙が入っていました。

 

母親のリンダからの手紙です。

 

「スティーブン、アルバム送ってくれてありがとう。さっそく聞いたわ」

 

リンダには事前にサンプル盤を送っていたのでした。

 

スティーブンは「聞いてくれたら良さがわかってくれるはずだ」と思い手紙を読み進めました。

 

手紙にはこう書かれていました。

 

「本当に最悪ね。音楽史に残る汚点だわ」

 

スティーブンの視界がぐにゃっと歪みました。

 

「あなたの歌はへろへろで、音楽はぺらぺら。モーツァルトが聞いたらその場でレコードを叩き割るはずよ。あなたがやりたいことはこんなことだったの? だったら、もう家の門はくぐらないで」

 

 

頭を鈍器で殴られた思いでした。

 

 

18.BARで出会った男

 

茫然自失となったスティーブンは、数ヶ月寝込んでいました。

 

たまにバーに行っては泣きながらレッド・アイを飲んで、うなだれていました。

 

口からこぼれ出たレッド・アイは、まるで血を流しているようです。

 

ある日、スティーブンが泣きながら飲んでいると、誰かがバーのピアノをかきならしました。

 

「うるせえな!」

 

グラスを投げつけると、ピアノを弾いている男に命中して割れました。

 

「あ・・・」

 

その顔にスティーブンは見覚えがありました。

 

 

「マイケル・ジャクソン!」

 

街ではちょうどクインシー・ジョーンズがプロデュースしたマイケルの「スリラー」がヒットを飛ばしているところでした。

 

 

「クインシーから、きみのことを聞いてね」

 

そう言うとマイケルはスティーブンの横に座りました。

 

「きみは車磨きから逃げたんだって?」

 

「けっ・・・」

 

スティーブンは無愛想に返事をします。

 

するとマイケルは黙って自分の右手を差し出してきました。

 

「こ、これは・・・!?」

 

その手はゴツゴツとしたタコが大量にできていました。

 

「車磨きでできたタコだ。今の俺がいるのはこいつのおかげだよ」

 

「マ、マイケルさんはどれぐらい車磨きしてたんですか?」

 

「3年だな」

 

「3年!?」

 

スティーブンは驚きました。

 

「ああ、その3年間は車磨きしかしていなかったよ。でも、そのおかげで地力がついたんだ」

 

マイケルはそう言うとウイスキーを飲み干しました。

 

「そうだ、クインシーに頼まれたんだ。きみに会ったらこいつを渡せってね」

 

 

「何の鍵なんだろうな? 僕にはわからない。じゃあね」

 

マイケルはバーを去りました。

 

その鍵の正体をスティーブンは知っていました。

 

クインシーの自宅の鍵です。

 

(つづく)

 

【シリーズ一覧】

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第1回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第2回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第3回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第4回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第5回)

何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第6回)

※ 何も調べずに書いたエアロスミスの生涯(第7回) ←イマココ

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
LIGの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP