ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

こんなものにも特許があるの?(切り餅特許事件)

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 今回は、こんなものにも特許があって争いになるの?という事案を紹介したいと思います。
 切り餅特許事件とは、せんべいやあられで有名で切り餅業界2位の越後製菓株式会社(以下「越後製菓」といいます。)が、「サトウの切り餅」でよく知られる佐藤食品工業株式会社(以下「サトウ食品」といいます。)を特許権侵害で訴えた事件です。

 一見何の変哲もない角切りのお餅のどこに特許があるのでしょうか。
 前回、特許が認められるために必要な要件についてお話しました。要件の1つである「進歩性」ですが、進歩性のポイントは、従来技術との構成の相違によって生じる、「効果」の有無であると言われています。
 そして、ここでの「効果」は、技術的な効果だけではなく、経済的な効果でもよいとされています。安くできる、早くできる、使いやすい、見た目がきれい、といった場合も「効果」があると判断される場合もあります。

 問題となった越後製菓の発明は、切り餅の側面表面にぐるりと一周切り込み線を入れておくことで、オーブンやレンジで焼いた際に切り込み線に沿って切り餅の上側が持ち上がり、膨らんだ中身がサンドされているような形になって、食べやすくかつ美観よく焼きあがるようにしてあります。これに「進歩性」が認められました。
 さらに、容易には思いつかないとして「新規性」も認められて、特許として保護の対象となっています。

 越後製菓が訴えたサトウ食品の切り餅は、側面の切り込みに加えて、上面と下面にも十字の切り込みが入っていました。このサトウ食品の切り餅は越後製菓の特許を本当に侵害しているのでしょうか?
 この裁判で争点となったのは、「特許請求の範囲」です。特許請求の範囲とは、発明の詳細な説明を記載した明細書というものがあるのですが、その明細書に記載された発明のうち、出願人が特許として権利化することを希望する部分を取り出した部分で、出願書類の中で最も重要な部分といわれています。
 一審である東京地裁は、越後製菓の特許請求の範囲を「側面のみに切り込みを入れて、上面下面には切り込みを入れない」というふうに解釈しました。そのように解釈すると側面及び上面下面に切り込みを入れているサトウ食品の製品は特許侵害に当たらないということになり、そのように判断がなされました。

 しかし、控訴審である知財高裁は、越後製菓の特許請求の範囲を「側面に切り込みが入っていること」と解釈しました。その解釈の場合、上面下面に切り込みが入っていたとしても、側面に切り込みが入っているだけで越後製菓の特許権を侵害することになります。サトウ食品の切り餅は側面上面下面に切り込みが入っていましたので、特許権侵害に当たるという判断がなされました。

 上告審である最高裁は、2012年9月19日に上告を棄却する決定をしましたので、知財高裁判決が確定し、サトウ食品は製造の差し止め及び越後製菓に対して約8億円の損害賠償を支払うこととなりました。現在、サトウ食品の切り餅は側面に切り込みが入っていないものが製造されています。今度スーパーに行って切り餅を見かけたときは、是非ご覧になってみてください。

 こんな些細なことで争うの?とびっくりされた方も多いのではないでしょうか?

元記事

こんなものにも特許があるの?(切り餅特許事件)

関連情報

著作権に関するQ&A特集(後編)(知らないではすまされない? 知的財産権入門)
ブランド品に手を加えたものを販売してもいい?(なっとく法律相談)
特許法の基礎知識(激しく変わる近時の知的財産法!ー知財女子がわかりやすく解説)

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP