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なぜ彼はクレーンに乗らなくてはならなかったのか

Thirのノート

今回はThirさんのブログ『Thirのノート』からご寄稿いただきました。

なぜ彼はクレーンに乗らなくてはならなかったのか
先日、栃木県にて、クレーン車が暴走し通学途中の小学生をはね死亡させてしまった事故があった。もちろん加害者を擁護することはできない。彼はてんかんを持っていた。そして以前にも“未遂”を起こし、かつ薬の服用を怠ったがためにこの事件は起きてしまった。報道の通り薬を飲み忘れたがゆえにこのような事故が起こってしまったのであれば、これは完全に彼の責任であると私は思う。

しかし、多くの人がそれでも思うことは、「では、何故彼はクレーンに乗ることを選択したのか?」ということであろう。この事故に関連し、id:goldhead氏は『○内○外日記』において、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を患っているという観点から記事を書いている。その中で、次のような文章が目にとまった。

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だから俺は、クレーン車で6人の子供を死なせてしまったやつのことを考えずにはいられない。彼が症状をおさえる薬を飲んでいなかった理由も、あるいは過去に事故を起こしていたり、その病気を隠してまたその職についた理由もわからない。わからないが、想像せずにはおれない。他人事ではないのだ。果たして俺がたまたま運転する仕事に就いていて、睡眠時無呼吸症候群に気づいたらどうしただろう。その持病があることを明かせば、仕事を失うかもしれないとき、どうするだろう。あるいは、新しい仕事に就けないのかもしれないということを。俺がそこで正しい選択をするかもしれないし、誤るかもしれない。正しい選択をした結果、ひどい不利益に陥ることもあるかもしれないし、誤った選択をしながら大きな失敗をしないですむかもしれない。それはわからない。
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「俺はたまたま子供を6人ひき殺していないだけ」 2011年4月23日 『○内○外日記』
http://d.hatena.ne.jp/goldhead/20110423/p1

誰かが語らなくてはならないと思った。彼がクレーンに乗るという選択を、一度未遂を起こしながらも選ばなくてはならなかった理由について。これからここに書くことはあくまでも推測と私の経験や伝聞によるものである。しかし、「こういう事情もあるのだ」ということを、頭の片隅に入れておいていただきたいと思ったからこそ、この文章を書くことにする。

てんかんという病気は、一般的に精神障害に分類され、精神障害者保健福祉手帳の対象疾患でもある(注:てんかんは脳疾患であり、精神疾患には含まないとする意見も存在し、それは決して少数派ではない。しかし制度上は“精神障害”に分類されるため、このように記載する)。精神疾患には、てんかんの他に鬱病・双極性障害・統合失調症などが存在するが、てんかんや双極性障害、統合失調症は薬の服用を持続することによって“寛解”させることはできるものの完全に治癒することはできない。

だから、基本的に(医療技術の発達がない限り)これらの病気を患った場合、生涯にわたって薬を飲み続けなくてはならない。また、寛解と言われる状態は、医師や病気によって異なるものの、多くの人は健常者と同じく生活ができ、普通に働いたり、休暇を楽しんだり、子どもをもうけたりすることができる。

しかし世間はそう思わない。一般的に、これらの病気があるという事実を明らかにして採用に臨んだ場合、かなりの高確率で落とされる。精神疾患というのは未だに根強い偏見や差別が残っており(まさにテレビにおいて“てんかん”という言葉がほとんど使用されないことが、それを端的に示している)、病気を明らかにして就職することはほとんど不可能なのである。

じゃあ“障害者枠”を利用すればいいじゃないか、と思うかもしれない。しかし一般的に存在する障害者枠というのは、ほとんどの場合身体障害者用であって、精神障害者の受け入れを表明している企業は非常に少ない。世の中にはいくつか“障害者用求人サイト”というのが存在するが、求人票をめくるとその多くは“身体”のみであり、“精神”にまで広げられている場合は少ない。

これには明確な理由が存在し、身体障害というのは多くの場合彼が死ぬまで永遠に“傷害”がまとわりつくのに対し、精神障害者の場合はそうではないことがあるのだ。いや、そういうと語弊がある。正確に言えば、身体障害者手帳には更新の義務が存在しないが、精神障害者手帳は更新義務があり、さらに“就労している場合は障害認定のハードルが上がる(所見において“日常的に生活ができる”というのは、障害認定に値しない)”という事実が存在するがために、精神障害者を雇うメリットというのは企業にとってほぼ皆無に等しく、受け入れをする理由が存在しないのである。よって、障害者雇用は精神障害者とは無縁の存在である。

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