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人民元切り下げ 爆買い減少で日本の小売業や旅行業に打撃も

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 中国のバブル崩壊は、対岸の火事では済まない。ビジネス面でも貿易面でもつながりを持つ日本に、火の粉が降りかかる。経済評論家の三橋貴明氏が解説する。

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 中国の習近平政権は「人民元の国際化」を国家戦略に掲げ、国際通貨基金(IMF)に特別引き出し権(SDR=加盟国が外貨不足に陥った場合、救済のため外貨を受け取れる権利)の構成通貨として人民元を採用するよう求めてきた。

 経済減速が進むと、景気刺激策として人民元を切り下げるというのが中国の今までのパターンではあった。だが、今回は人民元国際化の国家戦略を優先して、さすがに切り下げは断行しないと見ていた。

 ところが、中国政府は8月11日から大幅な人民元の切り下げを繰り返したのである。これは人民元の国際化よりも、目の前の景気対策を優先したということに他ならない。それほど共産党政権が輸出減少や内需低迷による成長鈍化に強い切迫感を感じており、輸出競争力を高めようと目論んだのだ。

 この問題は日本へも影を落とす。まず訪日中国人の「爆買い」が止まる可能性が高い。 日本政府観光局によると、今年1~7月の訪日中国人は前年同期比114%増の約276万人に達した。中国人の日本での旅行消費額も同約2倍に伸び、1人あたり25万円近くになっている。

 爆買いの恩恵を受け、家電量販店のラオックスは大幅な増収増益となり、純利益に至っては前年同期比79倍増を達成した(2015年6月期中間)。また、三越伊勢丹ホールディングスも大幅増益。他の大手百貨店も軒並み好調だ。中国人の爆買いに歯止めがかかれば、これまでそれに依存して業績を拡大していた日本の小売業、旅行業に関連する多くの企業はダメージを受けることになる。

 日本人の日常生活にも影響することが考えられる。人民元切り下げで輸出促進を図ろうとしている中国政府の号令を受けて、繰り返し問題になったように、安全・安心よりコストの安さを優先した「安かろう、悪かろう」の製品で、日本に輸出攻勢をかけようとする中国企業が出てくる可能性が高い。その結果、再び有害物の入った中国食品などによって日本人の「安全」が脅かされる恐れがある。

 最悪のケースでいえば、バブル崩壊やデフレ不況の深刻化で疲弊した中国国民が、打開策を打てない共産党政権に怒って、政権打倒を掲げた中国全土に及ぶ大規模な暴動を起こすことも全くないとはいえない。そうなれば、中国経済も大混乱となるのは必至で、多くの工場の操業も止まる可能性がある。

 その結果、中国企業の製品はもちろん、中国で製造する日本企業の製品までが日本から消え去ることも否定できないだろう。日本国内の企業にとっては、ある意味でビジネスチャンスだ。何しろ、日本国内の需要(市場)は消えないが、中国からの供給が止まるのである。もっとも、その場合は中国から「難民」という最悪の商品がなだれ込んでくる可能性が高い。

 嫌でも日本と中国とは経済活動でつながっている。中国経済が「風邪」ならぬインフルエンザにかかろうとしているときに、日本だけが無傷ではいられない。

※SAPIO2015年10月号


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