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大ヒットドラマの主役の人生を壊す「キャラクター」の呪縛

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 ドラマや映画である役で人気が出すぎてしまうと、視聴者にそのイメージが強く記憶に残ってしまい、それ以降のドラマの役に馴染めなくなってしまう。役にハマり、人気が出ることは役者冥利に尽きることかもしれないが、その後の役者人生を狂わせてしまうことにもなりかねない。

 そんな1人の俳優を基に描かれたのが、『仮面と生きた男』(瀬崎智文、沢村光彦/著、扶桑社/刊)だ。本書は、昭和40年代の特撮番組ブームで大人気となった「仮面」の特撮時代劇の主人公を演じたために、生涯「仮面」の呪縛から逃れることができなかったある俳優の生涯を基にした創作小説である。

 4歳のとき実母に捨てられ、養父母に育てられた坂口光四郎は、福岡の高校ではファンクラブができるほどの有名な美少年だった。あるときファンクラブの1人の女性が雑誌の読者モデルに勝手に応募してしまったことをきっかけに、上京し、俳優デビューを果たす。そして、仮面の特撮時代劇ヒーロー「天空仮面」の主役に抜擢され、1年間も続く超人気番組となる。
 しかし、あまりにも大ヒットしたため、「天空仮面」のイメージが払拭できず、俳優の仕事が次第になくなってしまう。自分を見つめる者たちの目に映っているのは、常に「天空仮面」であり、決して「坂口光四郎」ではないことに苛立ちを覚えるようになっていた。

 ある日、広告代理店に勤める江崎謙次は、クライアントだったデパートを訪ねた際、ある催事案内のポスターを目にする。それは、特撮アクション時代劇「天空仮面」で主演を務めた俳優・坂口光四郎のトークショーだった。江崎が子どもの頃、夢中になり、憧れ続けたヒーローが「天空仮面」だった。そのトークショーに足を運んだことがきっかけに、江崎と坂口は出会う。
 天空仮面のイメージを払拭できず、俳優の仕事も減っていたため、マネージャーとも揉め、事務所も辞めそうになっていた坂口に、江崎は「事務所を辞めるのなら、僕が代わりをつくります。坂口さんをマネージメントさせてください!」と訴える。そして、坂口と出会ったその次の日には広告代理店を退職し、坂口のための芸能事務所を設立することになるのだった。

 かつてのヒーローとその熱心なファン。俳優とマネージャーという関係になった2人は衝突もしながら、関わりを深めていく。そして、江崎は「新しい『天空仮面』を企画しよう」と坂口に持ちかける。ずっと坂口を縛りつけていた天空仮面。苦しめてきた「仮面」から逃げずに、もう一度向き合うために。因縁の仮面をもう一度あえて被り、そしてそれを脱ぎ去ったときに、いまの坂口光四郎の本当の顔がそこにあるはずだと、江崎は信じていたのだった。

 坂口光四郎のモデルとなったのは、2003年に亡くなった俳優・坂口祐三郎氏。夢を追い、自分自身と戦い、全力で生きた一人の俳優の生涯を読むことができる1冊だ。
(新刊JP編集部)


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