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テレビ局に多い「コネ入社」 批判されながらも採用続ける理由

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 テレビ局社員にはなぜか、タレントや政治家、財界人などの子供や親戚が多い。最近では2014年に、安倍晋三首相(60)の甥がフジテレビに入社していることが話題になった。また、歌手の藤井フミヤ(52)の長男が、来年フジテレビのアナウンサー職に内定したと報じられ、就活生らの間で「コネではないか」との声が出ている。

 なぜ、テレビ局は「コネ入社」が多いと言われるのか。元テレビプロデューサーの碓井広義さん(上智大学文学部新聞学科教授)はこう解説する。

「何かと注目されるテレビ局は内部情報が表に出やすいので、他業種より目立つという事情もあると思います。例えば、有名人の子供がメガバンクや大手商社など、テレビ局以外の人気就職先にコネで入っているケースだってあるかもしれません。

 実際、広告代理店なんかには、有名人の二世がたくさんいます。でも彼らがそこで働いているということは、ほとんど表には出てきません。だから他の業界との比較はできませんが、それでも多くの人が”テレビ局にはコネ社員が多い”という印象を持っているのは確かだと思いますですよね」

 もちろん、各テレビ局や本人たちがコネ入社を認めることはない。どの局も「公平・公正に入社試験を行った結果」と説明するのが普通だ。しかし2013年、当時日本テレビの社員だったみのもんた(71)の次男が窃盗容疑で逮捕されて諭旨解雇された際に、みのはインタビューや手記などでコネ入社があったと発言した(当時、みのが語ったコネ入社ついて日本テレビの社長が否定)。この時、「やっぱりコネ入社はあるのか」と思った人は少なくないだろう。

 特に有名人の子息、親戚が多いのがフジテレビだ。安倍首相の甥だけではない。高橋英樹(71)の娘・高橋真麻(33歳、2013年退社・フリー)、生田斗真(30)の弟・生田竜聖(28)、アナウンサー以外では、陣内孝則(52)の息子もいる。有名人の関係者が毎年のように入社しているのだ。フジテレビに有名人の血縁関係者が多いのはなぜか。

「フジテレビの場合は専務取締役の遠藤龍之介さんも、小説家の遠藤周作の長男ということで、昔から有名人の子息を採用することへの抵抗が少ない会社なのかもしれません。民間企業であるテレビ局が誰を採用しようが自由なのですが、マスコミはジャーナリズムという使命も背負っています。世間一般ではコネ入社が”ズル”と考えられているわけで、”世の不正を正すべき報道機関がズルをしていいの?”というふうに見る人は多いでしょうね」(碓井さん)

 例年、テレビ局の採用枠は、民放のキー局でも10~20人程度だ。採用枠が狭いうえに人気業種のため、倍率は数百倍にもなる。有名人の関係者に内定が出たことが知れわたれば、数万人の就活生からブーイングを受けることはわかりきっている。それでも有名人の関係者を採用し続けるメリットはどこにあるのか。

「例えば藤井フミヤさんの息子さんが実際に入社したとします。それで藤井フミヤさんに番組作りのサポートをしてもらうとか、そういったメリットを考えているわけではないと思います。それよりも、”音楽業界を大事にしているフジテレビ”ということを対外的に見せて、音楽業界との親和性を高めたいという思惑のほうが強いでしょう」(碓井さん)

 政治家の血縁関係者がいることのメリットはどうだろうか。フジテレビには前述の安部首相の甥がいるが、小渕恵三元首相の娘・小渕優子衆院議員(41)がTBS、石原慎太郎元東京都知事(82)の息子・石原伸晃衆院議員(58)が日本テレビの元社員だったように、政治家とテレビ局は採用において昔から蜜月関係にある。

「政治家の子供を採用しておいて、恩を売っておくのも悪くない、という考えもあるかもしれません。彼らはいずれ、局を辞めて政治家になる可能性もありますので。政治家の子供だからといって永田町の情報をダイレクトに入手できるわけではありませんが、普通の記者なら門前払いの取材先も、『〇〇の娘です』なんていえば、簡単に取材オーケーとなることもあります。そのように親の看板を使って、バラエティー番組やグルメ番組などの取材でも、普通なら撮れない映像を撮ってくるということは考えられます」(碓井さん)

 確かに、そう考えれば実務上のメリットは計り知れない。コネも何もない“使えない社員”よりは局にとっての利点は大きいだろう。しかし一方で、政治家の血縁関係者を採用することが、報道機関として自己矛盾を抱えることにもつながると碓井さんは指摘する。

「マスコミには権力を監視するという重要な役割があります。”政治家の身内が内部にいて、まともに政権批判ができるのか”といったことは言われるでしょう」

 制作力に影響がないとも言えない。視聴率低迷にあえぐフジテレビに対して、「コネ入社が多いせいで、クリエイティブ力が下がっているのではないか」と指摘する声は少なくない。

「有名人の子供だからといって優遇されるのは入社時だけです。入った後は実力勝負の世界ですから、コネ入社と制作力の直接の因果関係があるとは言い切れません。ただ、少ない採用枠への“落下傘入社”が長年にわたって続けば、もしかしたら本当は実力でその席に座るべき人が現場にいないということも考えられます。フジでいえば、月9ドラマの危機を救うような人が入社試験で落とされていた、なんてことがあったかもしれませんね」(碓井さん)

 コネ入社が良いか悪いか、簡単には決めつけられない。高橋真麻のように入社以来、「コネに違いない」と言われながら、人気、実力ともに備えたアナウンサーは少なくない。ただそれは、「テレビ局側の価値観、倫理観も問われる」(碓井さん)ことであり、単純な損得勘定で済ませられるものではないことだけは確かだろう。


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