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背表紙がボロボロになるまで絵本を読み続けた ——アノヒトの読書遍歴:のぶみさん(前編)

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背表紙がボロボロになるまで絵本を読み続けた ——アノヒトの読書遍歴:のぶみさん(前編)

 1999年にデビューした、絵本作家ののぶみさん。これまでに手がけた作品数は160作品にのぼり、今年7月には『ママがおばけになっちゃった!』を出版しました。のぶみさんは、作中の主人公の名前にご自身の子どもの名前を付けるなどして、読者に親近感を持ってもらおうとさまざまな工夫をこらしています。今回は、そんな絵本作家ののぶみさんに日頃の読書の生活についてお話を伺いました。

——本はいつ頃から読むようになりましたか?
「最初は幼稚園くらいで、よく絵本を読んでいました。中でも記憶に残っているのが、フランスの絵本作家アネット・チゾンさんとアメリカの絵本作家タラス・テイラーさんが書いた『おばけのバーバパパ』。背表紙がボロボロになるくらいまで読みましたね。というのは、僕のお父さんとお母さんはキリスト教の牧師で、家の1階が礼拝堂になっていて、僕の部屋はその上の2階にあったんです。お母さんとお父さんはあんまり2階に上がって来ない人だったので、いつも1人で部屋に閉じこもってその絵本を読んでいたんです。今僕は絵本作家として、そんなふうに背表紙がボロボロになるまで読んでもらえるような作品をつくりたいなって思ってます」

——背表紙がボロボロになるまで読んでいたんですね。
「そうなんです。実はその作者のタラス・テイラーさん、今はもうお亡くなりになっているんですが、生前僕にお手紙をくれたことがあるんです。というのは、今の講談社の僕の担当の方がタラス・テイラーさんの担当もしていて、ひょんなことから僕はそのことを知るんですね。知った時はとても感激しました。それで嬉しくなってペンを走らせ『僕の本を見てもらえませんか』って英語でお手紙を書いて送ったんです。そしたらすぐに返事がきて。でも、タラス・テイラーさん、すごく重い病気を抱えていたらしくて、その1週間後に亡くなってしまうんです。死ぬ間際に見知らぬ異国の人に手紙を書くんだ、すげえ人だなって思いました」

——ご本人からお手紙をもらえるなんてそれはとても嬉しいですね。その後はどんな本を読まれましたか?
「そうですね。その後は漫画ばっかりになってしまうんですけど、さくらももこさんの『ちびまるこちゃん』14巻は僕の中で思い出の一冊です。まだ僕がデビューしたての頃の話なんですが、実はさくらももこさんにものすごくお世話になっていて。ある日、ももこさんに『ちびまる子ちゃんを描いているところを見させてください』ってお願いしたらいいよって言ってくれて。その時ちょうど描いてたのが、この14巻。だから僕の持っているこの14巻には本人直筆サインと野口さんと永沢くんのイラストが描かれてあります」

——さくらももこさんがマンガを描いている時の様子ってどんな感じなんでしょうか。
「ももこさんは何気ない感じでいつもイラストやエッセイなどを書くんですが、驚いたのが、普通に話をしてて突然、『のぶみくんちょっと待って』って言って空を見上げはじめたんですよ。次に、1、2、3ぐらいの感じで『よし!』って言って、エッセイを書き始めるんですね。そんなので書けるんだととても驚かされました。後々になって、160冊絵本を出させてもらった今になってわかったんですけど、ずーっと絵本を描いていると、売れたいなと思うあざとさみたいなものが出てしまうんですね。そうするとおもしろい内容は描けない。自然に直感でパッと閃いたものを描いた方がうまく描けるような気がするんですね」

——絵本を描く上では「閃きが大事」だと。
「はい。みんな自分を良く見せようだとか、ちょっとでも良くしようだとか結果を求めたりするけど、そうじゃないんだよっていうことをももこさんから学びました。自然にしていたらそれはそれですごく素晴らしいということを。昔、ももこさんと一緒に福井県に旅行に行ったことがあるんですけど、旅行自体は至って普通でした。でも、あとからももこさんのその旅行についてのエッセイを見たら、『ももこさんの周りってなんておもしろいことばっかり起こるんだろう』って思えるくらいおもしろかったんです。そのときももこさんに、『のぶみくん、見せ方なんだよ』って言われたのが、とても印象的でしたね」

 後編では、のぶみさんが絵本作家になったきっかけについて紹介します。お楽しみに。

<プロフィール>
のぶみ/1978年生まれ。絵本作家。
1999年に絵本作家としてデビュー。これまで160冊以上の絵本を出版。ほかにも、NHK教育番組では作詞やアニメーションなども担当。代表作に『ぼく仮面ライダーになる!』シリーズや、『しんかんくん』シリーズなど。今年7月には、最新作『ママがおばけになっちゃった!』を出版。

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