やっぱり過酷? でも楽しい? 貧乏漫画家が体験した田舎暮らしのリアル

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やっぱり過酷? でも楽しい? 貧乏漫画家が体験した田舎暮らしのリアル

 日本テレビの人気番組「ザ!鉄腕!DASH」の人気企画といえば「DASH村」だ。もともとは地図上に「DASH」の文字を載せるという目的から始まったが、山村を開墾し、家畜を飼育し、汗を流すTOKIOの姿は大反響を呼び、今では「本業は農業なのでは?」という声が上がるほど、農に対する知識も豊富だ。
 筆者の田舎は兼業農家を営んでいるが、亡くなった祖母はこの「DASH村」が好きだった。「この子たち(TOKIO)はよく働くねえ」と言って、かつて自分たちがやっていた農業スタイルを実践していることに懐かしさを感じながら見ていたようだ。

 農業は面白いものだが、一方で大変なものでもある。
 雑誌『週刊SPA!』で連載されている「ぼっち村」は、農業経験のないアラフォー貧乏漫画家が田舎に引っ越して農業を始めるというノンフィクションのマンガであり、このほど『ぼっち村』(扶桑社/刊)として単行本化された。
 がけっぷちの状況に立たされた漫画家・市橋俊介さんは、担当編集者から「打ち切りを賭けてひとりぼっちの里山暮らし漫画」を提案され、すぐにそれを受け入れる。そして、さっそく0から一人だけの村「ぼっち村」を作り上げようとするのだが、立ちはだかるのは田舎暮らしのリアルな過酷さであった。

○田舎暮らしをはじめてから2年間で引っ越し2回
 単行本には2013年6月から2015年5月までの丸2年間が収録されているが、その間、市橋さんは引っ越しを2回している。原因は大家さんとのトラブルであったり、想像以上に厳しかった気候であったりするのだが、田舎暮らしを始めるにあたって、「理想的な家」を探すことがいかに大変なのかが伝わってくる。住んでみて何ヶ月か経たないと分からないこともあるものなのだ。

○台風が来たとき「畑の様子が心配だから外に様子を見てくる」は本当
 台風が上陸したとき、ネット上では「ちょっと田んぼの様子を見てくる」と書き込むユーザーも多いが、市橋さんは本当に畑の様子を見に、外に出ている。その理由は「だって心配だモン」。しかし、家の前にある畑とはいえ、雨風のあまりの強さに一旦避難。勢いが弱まってから再度確認にし行ったようだ。もちろん台風の中、外に出るのは危険なので、良い子は真似しないように。

○農業を志す人にとって過酷なのは夏よりも冬
 市橋さんが2回目の引っ越しを決意した季節は冬だった。理由は、長い冬は屋内でひたすら耐え忍ぶほかないため。豪雪地帯ではなかったものの、連日氷点下が続いて野菜の栽培どころではない。農作業ができなかったら、漫画のネタも枯渇する。地元の専業農家の人から「冬は競馬かカラオケしかやる事ねぇよ」といわれてしまい、引っ越しをして再出発を決めたのだ。

 市橋さんの紆余曲折から、よくいわれる理想的な「土いじりをしながら、豊かな田舎暮らし」を達成することがいかに難しいかが分かる。素人がいきなり「自給自足」ができるわけもなく、カップラーメンを買い込んで過ごす。また、住む家にはなぜかすでに使われていないスズメバチの巣があり、自分自身で取り除く様子も描かれている。
 しかし、そういった生活の中で市橋さんは少しずつ工夫を繰り返し、より良い生活にしていこうと必死に考え、行動をする。農作物とともに成長する彼の姿は少しずつ頼もしくなっていくように見えるはずだ。

 ちなみに、「ぼっち村」は市橋さんの漫画家人生を賭けてはじまったものだが、『週刊SPA!』9月8日号掲載の最新話では、単行本が売れなければ打ち切り、即廃村になることが編集者から明かされており、単行本内にも登場して帯のコメントも寄せている作家の伊坂幸太郎さんの顔に泥を塗る訳にいかないと市橋さんが苦しい胸の内を明かしている。
 ギャグ漫画家がその様子を連載をしながら暮らすという特殊な事情はあるにせよ、市橋さんが体験している苦難のひとつひとつは「田舎暮らし」のリアルに違いない。特に都会暮らしの読者からすれば、この本に描かれていることは新鮮に映るはずだ。
(割井洋太/新刊JP編集部)


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