軍配や如何に! 刺し身の薬味をいろいろ試食して正規軍に勝てる伏兵を探せ!
刺し身の薬味と聞いて、何を思い浮かべますか?
誰もがまず挙げるのが「わさび」、そしてアジやイワシといった青魚には「しょうが」でしょうか。他にもシソの実や、夏はミョウガなんてのもアリですが、シソの実と醤油だけ、ミョウガと醤油だけで刺し身をいただくことは珍しすぎるので、わさびとしょうが、これをまず正規軍とします。
今回はそんな正規軍に立ち向かう、伏兵的な薬味を探してみました。
というわけで、ひと通り刺し身を買ってきました。
これから魚介ごとにさまざまな薬味を試していきますが、ケチャップやマヨネーズといった意外すぎるものは最初から外しています。大勢力(わさび、しょうが)にガチで立ち向かえる、戦国時代でいえば真田家のような薬味を見つけ出したいのです。つまり、勝ちに行きます。
白身と貝にレモン塩で挑む
初戦の戦場となる刺し身は白身と貝類。白身はエンガワ、貝はホタテを選びました。そして戦う薬味ですが、正規軍は「わさび」、挑む伏兵は「レモン塩」です。
塩をレモン汁で溶かします。醤油を使わないという不安が残りますが、はたして…。
まずエンガワ。…うむ、これはなかなか美味いのではないでしょうか。
※撮っていませんが同時にわさび醤油でも食べて比べています。
そしてホタテ。これもかなり美味です。スッキリさっぱり!
……ですが正規軍のわさび醤油も普通に美味しくて、勝つまでには至っていない印象でした。贔屓目に見ても引き分けでしょう。
【途中経過】
わさび△-△レモン塩(エンガワ&ホタテ戦)
イカ刺しにニンニクで挑む
次のフィールドはイカ刺し。
正規軍はまたしても「わさび」、挑む伏兵は「ニンニク」です。
おお、これは! いやいやいや、わさび醤油より美味いんじゃないですかね。まあ旨味自体においてニンニクは最強クラスなので、ニンニクに合う刺し身なら、わさびに勝ってしまうのではないでしょうか。
【途中経過】
わさび△-△レモン塩(エンガワ&ホタテ戦)
わさび●-○ニンニク(イカ戦)
アジ刺しに一味唐辛子で挑む
次は青魚(アジ)でやってみましょう。
アジ刺しという戦場に向かうのは、正規軍はやっと出番がきた「しょうが」、挑む伏兵は「一味唐辛子」です。北海道ではサンマの刺身を一味唐辛子で食べるらしいので、これはいい戦いになるのではないでしょうか。
…結果は惨敗でした。夏の青魚にはしょうがが鉄板のようです。勝負の世界に「たられば」はありませんが、秋のサンマのように脂が乗っている魚なら、話はまた変わってくるものと思われます。
【途中経過】
わさび△-△レモン塩(エンガワ&ホタテ戦)
わさび●-○ニンニク(イカ戦)
しょうが○-●一味唐辛子(アジ戦)
マグロに挑むのはすだち醤油
次の戦場は関が原と言ってもいいでしょう。ついにキング・オブ・刺し身「マグロ」の登場です。マグロを制する者は刺し身を制すると言っても過言ではありません。
そんなマグロ刺しに対して、正規軍はもちろん王道の「わさび」、挑む伏兵は「すだち醤油」です。徳島県ではわりとポピュラーな食べ方だそうで、ついでに「すだち+マグロ」の組み合わせは抜け毛を防ぐのだとか。これは聞き捨てなりません。
すだちをたっぷり絞って、醤油を加えます。
……確かに合うような気もするんですが、慣れ親しんだ「わさび醤油+マグロ」の安定感を崩すには至りませんでした。ヅケにする場合の隠し味やカルパッチョに振りかける分には、素晴らしい風味だとは思うのですが。
【途中経過】
わさび△-△レモン塩(エンガワ&ホタテ戦)
わさび●-○ニンニク(イカ戦)
しょうが○-●一味唐辛子(アジ戦)
わさび○-●すだち(マグロ戦)
カツオにからし、実は歴史あり
次はカツオです。タタキではなく刺し身。これがタタキだとニンニクが正規軍に寝返ってしまうのですが、刺し身にはまあ「しょうが」が一般的でしょう。「いや、おれは刺し身でもニンニク」って人もいますし、「しょうがよりわさびで食うのが好きなんだよね」って人もまれに見かけますので、カツオは単純な戦場ではありません。
キリがないのでともかく正規軍は「しょうが」、伏兵側は「からし」をぶつけます。じつはからしを薬味にするのは、江戸時代は一般的で「初鰹 銭と辛子で 二度涙」なんて川柳もあります(当時の初鰹はメチャメチャ高価だった)。
……むむ、いけます。いいですね、からし。個人的にしょうがよりも美味しいと感じました。田舎者なので江戸的なものに憧れているのかもしれませんが、カツオの風味の濃さをガチッと迎え撃つように感じられました。
しかし、明らかにしょうがよりもオススメできるのかと言われると、どっこいです。からし派がいてもおかしくない、というレベル。引き分けですかね。
【途中経過】
わさび△-△レモン塩(エンガワ&ホタテ戦)
わさび●-○ニンニク(イカ戦)
しょうが○-●一味唐辛子(アジ戦)
わさび○-●すだち(マグロ戦)
しょうが△-△からし(カツオ戦)
イナダ? ワラサ? にまさかの砂糖醤油で挑む
出世魚ブリの途中形態です。切り身ではちょっと判別できませんでした。おそらくイナダからワラサにかけてぐらいの大きさではないかと。このへん地方によっても呼び方が変わりますし、難しいですね。
さて薬味は正規軍が「わさび」、伏兵は「砂糖醤油」で行きます。砂糖醤油で食べるのが漁師料理として定着している地方もあるそうですし、ブリの照り焼きに砂糖は欠かせませんから、きっと相性がいいのでは…?
何となくお餅を思い出しました。
…なるほど、これはちょっと筆者の舌には合いません。ふと「焼いたら美味いだろうな」と思ってしまいました。
【結果】
わさび△-△レモン塩(エンガワ&ホタテ戦)
わさび●-○ニンニク(イカ戦)
しょうが○-●一味唐辛子(アジ戦)
わさび○-●すだち(マグロ戦)
しょうが△-△からし(カツオ戦)
わさび○-●砂糖(ブリ戦)
結論:イカ刺しにニンニクはイケる!
というわけで今回の試食でわさび、しょうがの正規軍に勝利できた伏兵は、イカ刺しにおけるニンニクだけでした。
どっぷりと漬けて、美味い!
といっても、筆者は海無し県・埼玉在住です。北海道や福岡で食べるような、透明でコリコリとした新鮮なイカ刺しの場合は、また話が違ってくると思われます。
というわけで海無し県の皆さま、イカ刺しにはニンニクですよ!
書いた人:秋葉実働
山形県出身、さいたま市在住。もつ焼き屋で呑むのが心の底から楽しい意識低い系で、好きな酒類は日本酒。昭和48年生まれなので2000年頃のケータイメアドは「akb48@キャリア」でした。撮影集団「team GAM」に所属しています。料理はできません。
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