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シマウマはなぜ縞模様なのか?

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シマウマの縞は、進化論的問題として、科学者たちを悩ませてきた。

しかし、パターン形成の原理へと視点を移すと、悩みは一挙に消える……はずだ。

縞の怪

ゼブラウツボ、というウツボがいる。シマウマと瓜二つの黒白の縞模様が全身にあり、とても目を引くので、飼っている水族館も多い。このゼブラウツボ、どうしてこんな模様を持っているのだろう。考え出すと夜も眠れなくなりそうだ。

シマウマの縞には、何の意味があるのか、という話はよくある。「サバンナでは、あの縞はカモフラージュになる」という説明が一般的だが、実際は、サバンナでもシマシマはめちゃめちゃに目立つのだ。そうなると別の説明がひねり出される。いわく、「シマウマが群れでいると、あのシマシマが目くらましになり、それぞれの個体の輪郭が隠され、襲われない」。

しかし、どうだろう。ライオンはそんなに間抜けではない。少なくとも、野生の王国的なTV番組を見る限り、シマウマだろうが、インパラだろうが、模様に関係なく襲いまくっている。仕方がないので、さらに別の説明が出てくる。いわく、「シマウマの白黒に日が当たると、皮膚に熱いところと冷たいところができ、空気の対流が起きて、体が冷やされる」。

複雑になる「?」な説明

説明がだんだん複雑に、しかも、インチキ臭くなっていくのがおかしい。子供でも反論できる。そんなに冷やしたいなら、黒い部分も白くしたらよいのだ。という訳で、縞が進化的に有利な理由を見つけるのは難しいのである。ゼブラウツボになると、もう説明を考える気が起こらないくらい、何の意味もなさそうだ。ウツボは強すぎて襲われることはほとんどないし、海底の岩の隙間に潜んでいるので、姿を見られることも少ない。水に対流を起こして、体を冷やす必要もないし……。

何かのちょっとしたはずみで

縞が存在する意味にこだわるのは、進化との関係を知りたいからである。「縞を作る仕組みが進化により獲得されたからには、生存に有利でなくてはならない」という考えだ。

しかし、最近解かったところによると、動物の模様は思ったよりもはるかに簡単にできてしまうらしい。皮膚の模様は、色素細胞という色素を作る細胞の分布によって作られるが、その色素細胞が2種類以上あると、同じ種類が集まったり、反発したりして、波のようなパターンが勝手に出来上がり、それが模様なのである。その原理は、イギリスの数学者チューリングが予言したもので、反応拡散原理と呼ばれる。雲のパターンができる原理ともちょっと似ている。

だから、細胞の性質がちょっと変わるだけで、模様ができたりできなかったり、あるいは斑点になったり縞になったりする。要するに、特に複雑な仕組みは必要なく、縞は、何かのはずみでできてしまうようなものなのだ。

だから、特に生存に有利である必要はない。不利でさえなければ、縞模様ができて、それが保たれても不思議ではない。

というわけで、ゼブラウツボに頭を悩ます必要はないのである。今夜は、縞のパジャマでぐっすりお休みください。

文:近藤 滋

絵:大坪紀久子
 

上記は、Nextcom No.23の「情報伝達・解体新書 彼らの流儀はどうなっている?」からの抜粋です。

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Shigeru Kondo

大阪大学 大学院 生命機能研究科 教授

1959年生まれ。京都大学医学研究科で学位取得。専門は発生学、趣味は理論生物学。

好きなことは魚を飼うこと、釣ること、食べること。

詳しくは「近藤滋 生命科学」でパターン形成研究室ホームページを検索のこと。

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