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日本を代表するアイウェアデザイナー外山雄一が語る、100%喜ばれるメガネって?

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外山雄一/Yuichi Toyama
株式会社アトリエサンク代表取締役2015年、アイウェア・オブ・ザ・イヤーのグランプリを受賞。いまや日本を代表するアイウェアデザイナー。「SHADOW」をモチーフと新作したサングラスのラインを9月に発表予定。

矯正器具でありながら、ファッションアイテムとしても愛用されるメガネの魅力はどこにあるのか?自らも外山氏のデザインしたメガネを愛用するTABILABO代表、久志尚太郎が話を伺った。

001.
機能美に溢れるものはかっこいい

久志 今回お話したいテーマは、何故メガネはかっこいいのか? ということについてです。というのも、僕がいまのメガネを選ぶのに、なかなか気に入るものがなくて、それが何故だかわからなくて100本くらい見たんです。医療器具なのに美しさに溢れて、ファッションアイコンとしても捉えられている。そういうメガネの不思議を、幾つか伺っていけたらと思います。

外山 よろしくお願いします。今のお話を聞いていて思ったのは、メガネがもつ道具としてのかっこよさです。文房具もそうですが、機能美と言われるものと一緒で、デザインの着地点が見えている道具はかっこいいんですよ。

久志 なるほど、道具としてのかっこよさですか。何故これがカッコイイのか? というのが全然わからなかったんですけど、すごく腑に落ちますね。

外山 道具という時点で、機能美がもれなくついてくるというのが、デザインの楽しいところだと思っています。

久志 透明で形の見えないものに、命を吹き込むのがデザインですもんね。不思議なのは、メガネって洋服と違って誰もが似合うものではなくて、その人に合った格好良さが生まれるところです。あの差はなんでしょう?

外山 僕らデザイナーから言うと、似合わないメガネは無いと考えてもらいたいです。判断基準は本人次第なので「こういう自分になりたい!」というビジョンに近い仕上がりになれば、それが似合うということなんだと思います。

久志 それが似合う似合わないと感じるモノなんですね。メガネは医療器具ではあるけど、なりたい自分になるためのツールでもあると。

外山 日本人と西洋人では顔の形が違いますから、そこで規格としてのズレはあると思います。けど、デザインとして似合わないというのは基本的にない。 デザイナーの主張が強すぎて似合わない危険はありますが、そこは僕らが経験を積んで、似合うものとして提案するのが義務だと思っています。

久志 外山さんのメガネって、ヴィンテージの時計みたいな感じがするんですよ。メガネだけど、メガネっぽくない美しさを感じるというか。メガネというよりは、デザインされた美しい何か。

外山 デザインで普遍的な物をいかに生み出すかというのは、僕らにとっては永遠のテーマです。だけど、実際はその辺りにある植物の美しさにも敵わないんですけどね。

002.
メガネは、楽しいものである

久志 外山さんがメガネをデザインするとき、どんな想いやエッセンスを吹き込んでいるんですか?

外山 言語が理解できなくても伝わるデザインを作りたいです。言葉で言い表しづらい部分を吹き込んで、それに気づいてくれた人と共有できるような。

久志 言語化できない美意識とか、美しさみたいなモノを届けているということですか?

外山 形だけ作り上げたとしても、自分も見る人も納得できないと思うんです。その時代背景や状況とリンクした美しさが重要で、そこが一つの言語になると考えています。

久志 確かに。オシャレなだけのものって、無駄が多かったりしますよね。デザインは本来、ロジカルなものだと思うんです。それが結果的に美しさとして見えている。だから植物も一緒なのかなって、一切の無駄がないところは特に。

外山 僕が中学くらいの時に伊達眼鏡ブームがあったんですよ。しかし『本物のメガネに劣る』という感覚が拭えずに、収束してしまったんですけどね。それが自分の中では、フレームに選択肢がなかったのがのが理由な気がしています。当時、伊達でも掛けたいと思うフレームが沢山あったら、一時の流行で終わらなかったかもしれませんね。

久志 いまでは冒険する人というか、メガネの幅や選択肢が増えていますもんね。ファッションアイコンにまで成長したのは、何故だと思いますか?

外山 ファッションブランドがメガネやサングラスを発表したのがきっかけだと思います。本体は道具だから、ファッション的なデザインは必要ないんですけどね。その認識のなかで、自分たちのブランドからメガネを出すという発想がすごいですよ。

 

久志 アパレル業界やデザイナーが「これはファッションアイテムである」って気づいたのがターニングポイントだってことですか。

外山 そう思います。ここ最近で変化したと言えば、低価格なメガネの登場です。これが全体の間口を広げてくれました。でなければ、いまどきの雑誌でメガネをかけた芸能人が表紙を飾るなんて、ありえなかったんです。20年くらい前まではネガティブなものだったから。

久志 これまでになかったんですか。というか、ネガティブなものだったんですね。むしろファッションアイテムだと思っていました。プラスのアイテムという認識が圧倒的で。

外山 僕が業界に入ったときは、ほんとにネガティブでしたよ。イメージがマイナスからのスタートだから、提案することに関しては受け入れられやすい環境でした。その時にチャレンジさせてもらって、たくさんのを経験しました。それがいまに反映されているとは思います。

久志 伊達メガネっていうのは、そういう意味ではすごい大きな転換なのかもしれないですね。機能美を追求していたけど、それを差し置いてもメガネは美しいってみんなが認知し始めている。さらに変身願望を叶えるところまできたという。

外山 僕らはまず、メガネは楽しいということを伝えたいです。それで、たのしいことを共有するためになにがあるかっていうと、やっぱりデザイン。それは、楽しいっていう価値観を共有するために必要なことだと考えています。

003.
日本のメガネは「技術×デザイン」


久志 外山さんから見て、日本のメガネは世界でどう評価されているんですか?

外山 日本産メガネの良さは、もうわかってもらえていますよ。ものづくりの素晴らしさを理解してくれていて、繊細さも伝わっていると感じます。

久志 日本のものづくりの良さって、様々な分野で言われて
きましたよね。メガネに関してだけ言ったときには、その良さはなんですか?

外山 日本の工場の人たちは良くも悪くも頑固なので、デザイナーに自分の意見をしっかり言います。それが僕らデザイナーにとって、ブラッシュアップの機会になるわけです。

久志 それはでも、ある種の制約にもなっていますよね?

外山 その中でどれだけ遊べるかというのが、僕らのゲームなのかもしれません。『デザインはいいが、モノはダメだ』なんて言われるのは嫌なので、ポテンシャルを損なわず実物にするために、命をかけています。そこを一緒に歩んでいけるのが日本の工場の良さですね。
だけど、切磋琢磨できる一方で、彼らはいいメガネを作ることが最優先なんです。それが故にスケジュールが遅れてしまうこともしばしばあります。日本のメガネブランドはみんなスケジュール面で悩んでいます。良い点とも言えるし悪い点でもありますね。

久志 悩む一方で、サプライチェーンが対等であるのはいいことですよね。デザインを突き詰めるには、制約もプラス効果のように感じます。

外山 僕らより長くメガネを作っている方もいるので、デザインに対しても意見をいただくんです。そうすると、経験や意見がプラスされるじゃないですか。それを受けて、メガネは一人の知恵で作られるものじゃないってわかります。

久志 お互い切磋琢磨して、美しいものに昇華されているんですね。無駄を削ぎ落としていくことが実は、美しさにつながっている。制約された中でクリエイティブ×テクノロジーが切磋琢磨してミニマルデザインを徹底的に追求している。みたいな、そういう意味ではすごくiphoneっぽいなって思います。

外山 確かにアップルによって、デザインの価値観はすごく変わったと思います。そういった意味でも目の肥えたエンドユーザーも増えました。だからこそ僕も工場の人達と見栄えのいいデザインだけではなく、お互いにとって納得いくプロダクトとしてのポリシーを貫ける環境を大切に育んでいきたいと考えています。

久志 それが日本のメガネの強さであり、ものづくりの良さってことですね。他の国ではあまりやっていないんですか?

外山 そんなことはありませんが、日本人は分析する力が飛び抜けている面があるんですよ。それが、工場のおじさんたちの技術や知識です。だから日本人にしかわからない感覚で製造されますが、このテクニックを世界の人たちと共有できる言語として、メガネを作りたいと思っています。

久志 日本のメガネは「技術×デザイン」で対等に生み出しているから、世界で評価されているわけなんですね。職人さんが独走してもデザインが残念だろうし、デザイン先行だと機能美は損なう。この2つが対等であることが、僕らの業界で言えば「クリエイティブ×テクノロジー」。お互いがバランス良くあるっていうのが日本の良さなんでしょうね。

004.
メガネを通じて、たくさんの人と話したい

久志 体にフィットする機能美追求とかだと、究極はオーダーメイドじゃないですか。外山さんが、あくまでスタンダードを作ろうと、マスプロダクトを意識しているのが面白いなって思いました。

外山 大半のメガネは大量に作られたりする中で、10本作って10人が満足するのが良いと考えるメガネもあります。オートクチュール的な発想ですね。でも僕は、欲張りかもしれないけど人種を問わず1000本作って1000人に喜んでもらいたいんです。一人でも多くの人にそう思ってもらいたい。それを実感できる瞬間にはなかなか立ち会えないと思いますが遠く離れた海外で自分のフレームを掛けている人を偶然見るだけでもこの仕事をやっていて良かったと思える瞬間です。

久志 プロダクトデザイナーってオートクチュール的なかたちに行ってしまう人が多いじゃないですか。最終的にはアートっぽくなったりして。僕はアートっぽいデザインよりも、ミニマルデザインの方が美しいって感じられるので。外山さんのメガネは超上品でかっこよくて、なのに自然で馴染んでいるんですよ。

外山 昔のものをコピーするだけなら、ディレクターだけで十分ですよね。自分がデザイナーとして存在するのであれば、そこに自分らしさをどうプラスしていくか? っていうのが、自分のブランドづくりの根っこの部分にあるんです。

久志 今の話のなかに、僕らがなんでメガネをかっこいいと思うのかっていう答えが詰まっていた気がしてます。特に、技術×デザイン、テクノロジー×クリエイティブという対等な関係。そして、制約された中でこそクリエイティブが生まれているっていう話しは、すごくいいですね。

005.
情報量の増加が、
これまでの見え方を変えてくれた

久志 昔は詳しい人しか生産者サイドに関心がなかったじゃないですか。それが今の時代では、一般的にもこだわれるようになって、作っている人が見えるようになった。工業製品でマスプロダクトだけど、デザイナーや工場で生産している人の存在が見える感覚が気持ちいいです。

外山 僕がメガネのデザインを始めたときと明らかな違いを感じるのは、1つのものに対しての情報量です。そうすると、僕らもこだわる意味合いが出てくるんですよ。

久志 これまでの大量生産品って、人がたくさん関わりすぎてスペック以外ぼやけていたじゃないですか。だから愛着が持てなかったんです。今は製造者レベルでマスプロダクトの概念が更新されているから、量産品でも価値を感じてカッコイイと思いはじめているんですよね。

外山 情報が増えて、共有できる部分が増えたからでしょうね。例えば「ベータチタンを使うとより掛け心地がいい」って僕が言ったとして、それがわからない人でも、携帯で検索したら「そういうことなのか」ってすぐにつながる。メガネを通して、言語を超えて経験できるデザインのよさを、すごく実感できています。

久志 工業製品とマスプロダクトは、今回の話ではキーワードだと思いました。普通がかっこいいんじゃなくて、普通のものがカッコよくなってきている。これから多くの人に届くものは、益々そうなっていくんでしょうね。

外山 久志さんがさっき言ったように、アップルがそうなのかもしれません。プロダクトデザイナーの名前や考えなんか、知らないのが普通ですもんね。

久志 僕らは大手企業のデザイナーすら、ほぼ名前を知らないですよ。

外山 前にいた会社がまさにそうですけど、大手の会社は特に、外部に対して「これをデザインしています、しました。」って言えないんです。自分を出している仕事のはずなのに、企業のなかで歯車として消費されてしまっている。だから、企業の中のデザイナーはジレンマと常にたたかっています。

久志 少し前までは、極論だと自分の名前を社名にするのが「私のデザイン」っていう証明でしたよね。今は、USH(アッシュ)っていうブランドの中に外山さんが見えている。それは意識してそう変化しているのだとしても、すごく面白いですよ。

外山 僕は会社を立ち上げるときに、自分を100%表現できるステージ作りをしました。自分の名前を冠する人もいる中で、USH(アッシュ)っていうブランドを介していかに想いを届けられるか? 久志さんに言われて初めて意識しましたけど、僕がマスプロダクトを意識しているということなんだと思います。

久志 USH(アッシュ)っていうコンセプトがあって、魂込めてマスプロダクトにしているけれど、デザイナーの外山さんはちゃんと見えている。ブランドがあって、対等に作り手たちがいるっていうのは、すごくイマっぽいですよね。もしかしたら僕、これが外山さんの名前のメガネブランドだったら古いって思ったかもしれないです。

外山 会社に勤めていれば、自分の仕事で貢献したり否定することもありつつ、常に考えながらやっているものですよね。だけど、いまはそういう枠がありません。なのに、自分のなかにブランドやコンセプトという枠をつくっています。きっと、そういうのを僕自身が楽しんでいるんでしょうね。

久志 いまの状態は、これまで伝わらなかった反動ですよね。まだ欲しがらないと伝わらないけど、確実に変わってきていると感じます。

外山 たぶんそれが、共有することの助けになるというか。枠があるから伝わりやすいことにつながっているのだとも思います。

006.
作り手とユーザーを近づけていきたい

久志 最後にひとつ。新しいコンセプトだったり、次のビジョンはありますか? メガネの枠内でのやり方や、そうじゃないところでも何かあれば教えて下さい。

外山 メガネをきっかけに、もっとエンドユーザーと近づくための挑戦をしていきたいです。デザインやプロダクトとしてのポリシーを工場や作り手と一緒に情報を届けることかもしれない。自分自身模索中ですが情報量の変化に伴い、より良い方法でエンドユーザーとの距離を縮められないかと常に考えています。

久志 物のデザインだけじゃなくて、コミュニケーションやトータルのあり方のデザインなんですね。

外山 モノからコト消費に移っているという話しもありますけど、僕はそこに「人」というワードを必ず入れたいと考えています。僕が古い体質なのかもしれないですけど、そこに勝るものはないと思うんですよ。自分がメガネをやっていたことをきっかけに、モノ作りに反映させていきたいんです。

久志 どんな人がどういう想いやロジックでそれを作り上げているのか? っていうのはすごく興味のあるところだったので、聞かせていただけて嬉しいです。なんだかメガネを買いたくなってきました。

外山 それも極論を言えば、誰がデザインしたメガネを買っても良いわけですから。勿論、USHのファンを増やしたいですけど、先ずはメガネのファンを増やしたいですね。

久志 ありがとうございます。かなり面白かったです。

外山 ありがとうございました。

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