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日本人の食文化「口中調味」は複雑な味わいを生む高等技術だ

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 日本の「味」が海外で広がるなか、日本の「食べ方」も広がるのだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が語る。

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 寿司やラーメンなど「日本食」が海外進出するなか、完全に世界的な認知を得た神戸ビーフやフレンチで大ブームとなった柚子の味わいなど、さまざまな形で日本の”味”は世界に進出している。箸を使う外国人の姿も珍しくなくなった。もっとも「食べ方」の海外進出はまだ道半ばだ。

 日本人の特徴的な食べ方に、「口中調味」がある。味つけのない白いごはんを、口のなかで咀しゃくしながら他のおかずで味つけをする。ごはんとおかずを交互に食べる、いわゆる「三角食べ」のようなスタイルだ。いっぽう、欧米ではフレンチのコース料理に象徴されるように、ひとつひとつの皿を平らげながら食事は進んでいく。食に造詣の深いエッセイスト、玉村豊男氏は著書でこう書いている。

「口のなかに入れた食物の咀嚼を途中で止めたまま、口を半開きにしておいてそのまま次の食物や液体を放り込むのは、けっこう微妙な運動神経を必要とする作業です。(中略)そもそも彼らにはそんな高等な技術を要する芸当はやれと言われてもできないのです。欧米人は、ほぼ例外なく、できないと断言してよいでしょう」(集英社新書『食卓は学校である』より)

 口中調味は味への受容を広くすると言われる。完成された品を一皿ずつ食べるより、さまざまな複雑な味わいを生むとされているからだ。もっとも近年、日本人でも何かひとつのものを食べ続ける「ばっかり食べ」が増え、口中調味力が落ちているとも言われている。

 2007年、福井大学の研究チームによって「食事時における白飯、おかずの食べ方と偏食の関連性」という地域の小中学生、782人を対象とした調査が行われた。その結果、全体の73.7%が口中調味を「よくある」(39.6%)、「ときどきある」(34.1%)と回答した。

 つまり「日本人に特徴的な食べ方」ができない子供が4人に1人いることになる。実際、5年ごとに行われる「児童生徒の食事状況等調査報告書」にも、2005年から「児童生徒が食事中に気をつけていること」の項目として「ごはんとおかずをかわるがわる食べる」が新たに加えられた。つまり調査側も「かわるがわる食べない」という子供がいることを念頭に置いているのだ。

 では海外はどうか。これまで海外で人気を博していたのは、ラーメンや寿司、牛丼といった外国人にとっても食べやすい日本食が中心だった。しかし「ごはん+おかず」のようなスタンダードな日本食を提供する「やよい軒」「さぼてん」「大戸屋」といった和食チェーンが海外進出。いずれも100店前後の出店を果たし、日本食文化の海外展開に一役買っている。

 冒頭に例としてあげた、神戸ビーフに象徴されるように「日本食」は、素材や食習慣、名称などさまざまな形で海外展開されるステージに入ってきた。すそ野が広がれば理解も進む。「食」が持つ力は大きい。「日本食」の海外進出は経済活動というだけでなく、日本食や日本という国自体への好感を惹起し得るプロモーション活動になり得るのだ。

 ちなみに完全な余談ではあるが、「神戸ビーフ」が命名の由来となったアスリートがいる。

Kobe Bean Bryant    

 言わずと知れたNBAのスーパースター、コービー・ブライアントその人である。


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