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「週5日、8時間勤務」にこだわる会社は先細り?

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 いま日本社会は、世界に類を見ないほどの早さで少子高齢化が進んでいます。またその一方、帝国データバンクが2015年に実施した調査で、約4割にものぼる企業が人手不足と回答しているように、すでに少子高齢化による労働人口の減少が企業の採用現場に影響を与えはじめています。
 『潜在ワーカーが日本を豊かにする』『時代を勝ち抜く人材採用』(ともにダイヤモンド社/刊)の著者である武井繁さんは、日本がこれから人手不足を乗りきるためのキーワードとして、「潜在ワーカー」と「フレックス雇用」という言葉をあげています。
 今回、新刊JP編集部は武井さんにインタビューをおこない、これらの言葉が具体的にどのようなものを指すのか、また企業の採用現場でどのような変化が起きているのかをうかがいました。(インタビュー・構成:神知典)

――まず、タイトルにある「潜在ワーカー」とは、どのような人々を指すのでしょうか?

武井:シニア、主婦(夫)、外国人などで、未就労の状態にある方々を指します。日本の生産年齢人口は2008年ごろをピークに減りつづけており、2050年までには約2000万人減少するといわれています。この減少傾向を救う存在としての潜在ワーカーに着目しました。

――武井さんが潜在ワーカーに注目するようになった経緯を教えて下さい。

武井:採用の現場において需給ギャップが生じています。従来の雇用制度、雇用対象を見直さない企業は「顕在ワーカーの取り合い」をする形になります。しかし、顕在ワーカーの数は年々減っているわけです。そこで、企業に負担をかけない形で働き手を確保する方法を模索していったところ、潜在ワーカーの可能性に気づきました。3、4年前を境に、従来の形にとらわれずに労働力を確保しようとする企業が増えています。
最近では、弊社から潜在ワーカーの活用案を提案させていただく機会が増えました。

――潜在ワーカーの採用に取り組まれる企業は増えてきている、という実感はありますか?

武井:はい。近年顕著な傾向の一つだと思います。特に、全国展開をされている流通・サービス関連の企業様の場合、店舗スタッフの採用ボリュームが非常に多いですので、幅広い方々に雇用機会をつくることで、採用難という課題を解決されています。
例えば、潜在ワーカーへの注目に関して私たちが提案するのは「アルバイトスタッフ5人ではなく10人でまわす体制へ移行しませんか」ということです。一人で多くの業務をこなす体制ではなく、業務を小分けにし、複数メンバーで分業する体制に変えませんか、というもので、多能工環境から単能工へのシフトを提案します。週1日でも2日でも、1日3時間でも働ける条件を明示することで、1日8時間、週5日勤務はむずかしいという人にも働いてもらえるための仕組みをつくっていただくよう働きかけています。

――そういった多様な働き方を認めることこそが、本書にあった「フレックス雇用」の実現につながるのでしょうか。

武井:本のなかで様々な事例を取り上げましたが、短時間正社員制度や業務委託・フリーランス、短時間アルバイト制度、副業など、これから企業が生き残っていくためにも、柔軟な雇用形態の考え方を拡げていただきたいという思いで、この本を書きました。
雇用対象を広げる、という考え方も拡げたいと考えています。

「天丼てんや」を運営するテン コーポレーションさんは、外国人スタッフの活用に成功しています。同社の店舗で働く外国人は全国で270人以上にものぼるのですが、さらにピンポイントでいえば、上野店は全スタッフ24人のうち、16人が外国人です(2015年6月時点)。多くは留学生として日本に学びに来ている人たちです。

――上野店の採用活動で特徴的なことはありますか?

武井:口コミを効果的に使っている点です。お店として新しいスタッフが必要になると、まず店長がすでに働いている外国人スタッフに知り合いの紹介を頼むそうです。すると結果的に、「この人なら大丈夫」と厳選した友だちを連れてきてくれることが多いとうかがいます。

――応募する側としても、気心の知れた友人が働いているお店あれば応募しやすく、ますます外国人スタッフが集まりやすくなるという好循環もありそうですね。ところで先ほど「3、4年前を境に、企業が潜在ワーカーの活用に前向きになり始めた」というお話がありましたが、なぜその時期に変化が起きたのでしょうか?

武井:リーマンショックの直後である2009年ごろ、求人倍率が0.4倍まで落ち込んだことがありました。ここで多くの企業が「働き手はいくらでもいる」と錯覚してしまったんだと思います。しかし、1995年頃から生産年齢人口の減少が始まっていたわけですから、この時期、実態としてはどんどん人を採りづらくなっていたはずなんです。
ちなみに当時の人口減少ペースは2011年からは一気に加速し、3年連続で毎年20万人以上減少しています。
こういった状況を受けて、2011年ごろから企業側に「人を採りづらい」という実感が急速に強まっていったのではないでしょうか。特に第3次産業は、求人ニーズが伸びる一方でしたので「顕在ワーカーの獲得には限界がある」と思わざるをえなくなったのかもしれません。

――企業側はスタッフの勤務形態について抜本的に考えざるをえなくなった。

武井:そうですね。「週5日、8時間勤務」に固執してしまうと、これからはますます働き手を獲得しづらくなると思います。短時間しか勤務できないけれどキチッと成果をあげるスタッフは、企業にとってはありがたい存在でしょう。

――時間あたりのパフォーマンスということでいえば、「日本人は労働時間が長すぎる」ということは、昔からいわれていますね。

武井:日本の労働生産性は、ここ20年間ずっと、OECDに加盟している先進7カ国中で最下位を記録しつづけています。また労働時間にかぎらず、いま企業が採用している制度の多くは高度経済成長期の時代背景に合わせてつくられたものが多いため、時代にそぐわなくなってきているようにも見えます。企業が個人のライフスタイルに合った働き方を提供したほうが、お互いが幸せになれるのではないでしょうか。

(後編へ続く)


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