女性に多いベロの不快症状、いまだ原因不明の「舌痛症」とは

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女性に多いベロの不快症状、いまだ原因不明の「舌痛症」とは

女性に多い舌痛症とは

「舌の先や、横側の縁の部分がヒリヒリ、ピリピリと痛む」。そんな症状に見舞われる「舌痛症(ぜっつうしょう)」という病名を聞いたことがあるでしょうか。舌痛症とは、舌の表面に痛みの原因となり得る器質的な異常や病変(例えば口内炎などの炎症や粘膜の荒れ、ただれ、腫瘍など)がないのにもかかわらず、舌が痛んで気になってしまう…そんな不快症状です。圧倒的に女性に多く、症状が何カ月も続くことがあります。医療機関を受診しても「異常なし」とされ、単なる「不定愁訴」と診断されてしまうこともあるようです。

不思議なことに、男性にはほとんど見られません。90年代から増加傾向で、学会などの臨床統計を見ると、歯の治療が契機になって症状が出現することが多いとされています。私の患者でも「治療に使用された薬剤や金属のアレルギーなどでは」「銀歯が舌に当たっているからでは…」など、ほかの歯科医院で受けた治療に原因があると考える患者が多いようです。

舌痛症の原因や、発症のメカニズムはいまだ解明されていない

舌痛症の人は歯科だけではなく、口腔外科、耳鼻咽喉科、内科など、さまざまな診療科を受診しています。しかし、「口内炎」だと診断されるなど、気休めの軟膏やうがい薬などを処方されて追い返されてしまうケースも多く、外見上、舌に明らかな異常がなければ「更年期障害」や「うつ病」、単なる「ストレス」でかたづけられてしまうケースもあるようです。

舌痛症の原因や、発症のメカニズムについては不明な点も多く、いまだ解明されてはいません。ただし、診察すると下記のような特徴があります。

1)実際に話すと生真面目な人が多い。(経験的には几帳面で、執着心が強い人が多いです)
2)痛みの度合い、痛む範囲が一日の中で変わる(日内変動)、日によって変化する。(食事中や入浴中など、何かに集中している時はほとんど痛まない)
3)歯科治療や身内の不幸、ペットの死などがきっかけで始まることが多い。
4)舌の痛み以外の多彩な症状を同時に訴える患者が多い。(舌の異常だけでは起こりえない、口の中の乾き、喉の奥の違和感などを同時に訴えることが多い)

以上の臨床的な特徴があることから、メンタルと何らかの関連性があるようです。また、舌がんなどの「がんへの恐怖感」や、何か深刻な病状を想像して一人で思い悩んでいたり、ストレスや心身疲労が加わると症状が増悪するとされることからも、心理的要素との関連性がうかがえます。

専門医療機関を紹介受診するのがもっともスムーズ

逆にガンの心配はないこと、炎症がないこと、(以前に受けた)歯科治療箇所は客観的に見て異常がないことなどを、理論的かつ丁寧に話すと気持ちが楽になったり、症状が緩解される患者が多いように思います。私は治療に漢方薬などを使っていますが、すぐに改善しない場合もあります。原因やメカニズムが分からない以上、舌痛症には特効薬や確立された治療法は現在のところありません。多くの医師にも舌の痛みを理解してもらえないことから、ドクターショッピング(色んな病院を転々とすること)を繰り返す患者も珍しくはありません。

もし、あなたが舌痛症を疑って受診するならば、大学病院などの口腔外科やオーラルメディシン(口腔内科)、メンタルクリニックなどが専門診療科となります。かかりつけの医師、歯科医師がいる人はかかりつけ医に紹介状を発行してもらい、専門医療機関を紹介受診するのがもっともスムーズな受診方法でしょう。

(飯田 裕/医学博士・歯科医)

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