ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

「戦争」について深く考えさせられたヴコヴァルの旅

DATE:
  • ガジェット通信を≫

筆者撮影

こんにちは、TRiPORTライターの新田浩之です。

今回は私の旅行歴の中で「戦争」について深く考えさせられた町を紹介します。紹介する町はクロアチアにあるヴコヴァルです。ヴコヴァルは人口約3万人。ドナウ川に接し、対岸はセルビアになります。この町では今から24年前に起きたクロアチア紛争により、多くの人々が亡くなりました。私は学生時代に旧ユーゴスラヴィアについて調べていました。そしてその当時、今から4年前の夏にヴコヴァルへ行くことを決断したわけです。

クロアチア紛争について

話を進める前に、簡単にクロアチア紛争について説明します。クロアチアは「ユーゴスラヴィア」という連邦国家を構成する一共和国でした。ヴコヴァルではクロアチア人とセルビア人が仲睦まじく暮らしていました。しかし、ユーゴ国内では1980年代から経済の悪化と同時に民族主義が高揚。過激なプロパガンダが流されるようになりました。1991年、冷戦の終結と共にクロアチアがユーゴスラヴィアからの独立を宣言。それを阻止するために、セルビア人を中心とする連邦軍がヴコヴァルを包囲し攻撃したのです。このときに多くの人々が亡くなり、「隣人」が「敵」となったのです。今でこそ戦争は終わりましたが、クロアチア人とセルビア人の「和解」は進んでいません。

筆者撮影

ヴコヴァルを訪れて

宿泊先のクロアチア東部の町、オシェクからバスで1時間。バスターミナルを降り、ヴコヴァルの目抜き通りを歩くと、銃撃で蜂の巣のようになったボロボロの建物が目につきました。「ここで、本当に戦争があったのかぁ」という想いが心を一層重くさせます。しばらくすると、町で犠牲になったクロアチア人を追悼する碑が見えてきました。ドナウ川沿いに十字架を模ったモニュメントがドーンと建っています。ヴコヴァルに住むセルビア人にとっては近づけないゾーンであり、川の向こうはセルビアの領土なのです。もちろん、犠牲となったクロアチア人の気持ちも分かりますが、歴史を考えると何とも言えない複雑な気分になりました。「戦争とは何だろうか」。もしかすると、あのモニュメントを見た「瞬間」が人生で始めて「戦争」を真剣に考えたときだったかもしれません。

Photo credit: Sougaku「【SF巨大コンクリート記念碑】スポメニック Spomenik その3

次に、クロアチア紛争のときにも使われた病院を訪れました。現在も病院として機能しているので、見学の際には観光センターで予約が必要です。手間取りましたが、何とか病院を訪れることができました。建物自体は近代的な病院です。そして、その病院の一角が博物館となっていました。

最初にクロアチア紛争に関するビデオが上映されます。正直、ビデオの内容にはあまり「ピン」ときませんでした。そして、当時の病室を再現された場所を見学。屋根は低く照明は暗い。粗末なベッドがところ狭しと並んでいます。そして、壁には名前が書かれたプレートが張ってあります。このプレートの意味を尋ねると、ガイドの女性は静かにゆっくりとこう言いました。「軍隊がこの病院に来て人々を連れ去りました。そして、多くの人が殺されました。これは殺された方々の名前を記したプレートです」

あまりのショックに涙も出ませんでした。たった20年前にそのような悲惨な出来事がこの場で起きたことが受け入れられませんでした。しかし、時間が経つにつれ、その事実を受け入れる自分がいました。そして、アウシュビッツ強制収容所を訪れた時と同じく、こう思いました。「このようなことを平気でやるのも人間だ」と。

4年たって改めて考える

日本にいると「戦争」は遠い話で、国同士の対決だと錯覚してしまいます。けれども「戦争」は本当に身近にも存在し、究極的には「隣人殺し」だと思います。仮に、武器が全てなくなっても「戦争」が起きる可能性は完全には無くならない気がするのです。それだけ、身近な存在ですから。身近な場所から、隣人を思いやり理解すること。そして、様々な情報を鵜呑みにせずに「自分で考える」こと。これこそが、「戦争」をなくす手段ではないか。ヴコヴァルでの旅を通じて、日本にいる私はそのように考えています。

徒歩3時間かけても行くべきクロアチアにある幻のモニュメント
(ライター:新田浩之)
Photo by: 新田浩之

関連旅行記

*新田浩之「美しい風景と歴史に感動したはじめてのポーランド
*Shohei Watanabe「クロアチア 第二次大戦以来ヨーロッパ最悪の戦闘地へ
*Sougaku「【SF巨大コンクリート記念碑】スポメニック Spomenik その3

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
Compathyマガジンの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP