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“リアル書店”に行って書棚を眺めている瞬間は至福のとき ——アノヒトの読書遍歴:今柊二さん(後編)

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 定食評論家として活動する、エッセイストの今柊二さん。定食に関する本を何冊も出版する傍ら、「WEB本の雑誌」では餃子について連載をしています。そんな今さんに、前回に引き続いて日頃の読書の生活についてお話を伺いました。

——普段から数多くの本を読むそうですが、読みたい本はどこで見つけるのでしょうか?
「ネットで見つけて買ったりもしますが、やはり”リアル書店”はとても大事ですね。書店に行って書棚をぼうっと眺めている瞬間はまさに至福のときですね。それは古本屋でもあり、大型書店でもあり、町の本屋でもありです。中でも危険なのは、新宿や池袋などの都心にある大きな書店。古本屋みたいな感覚で買えちゃうんですよね。ドンドコドンドコ入れて、あー買いすぎた! みたいな感じになります。大変な金額になってしまい、危ない流れになるので、大きい本屋に行くときは自制して行かないと大変なことになりますよ(笑)」

——本屋さんに行く頻度は、どれくらいなんですか?
「当然、毎日です。そのせいで自宅には書庫が3つあります。家の中に1つと庭に1つ、そして借りているのが1つ。全部パンパンになっていて困ってるんですよね。だから年に2回くらい「大処分市」をやらないともう扉が閉まらないんです。でもそうやって毎日本屋に行って本を探しているとてもおもしろい本に出会いますよね。高井としをさんの著書『わたしの「女工哀史」』なんかもそうです。実はこの方、日本史の教科書に必ず出てくるような有名な労働運動の本『女工哀史』の著者、細井和喜蔵さんの奥さんなんです。この本、古いのかなと思ったんだけども、発売されたのは今年の5月。まだ出たばっかりなので、本好きな人の間でひたひたと広がっているような感じになっています」

——どんな内容の本なんでしょうか?
「1902年に彼女が産まれてから、どのような人生を過ごしていったかを描いている一冊です。1925年に『女工哀史』が出てからもずっと苦難な生活は続くんですが、非常にタフに生きていくんですね。戦争の後もタフに生きるし、その後もずっと労働運動に関わり続けていったりして。今非常にブラック企業が問題になっていますが、常に闘い続けるってことが人間にとっていつの時代も大事だってことがわかる、そんな温かい一冊です」

——印象的だったシーンがあれば教えてください。
「夫である細井和喜蔵さんは28で若くして亡くなっちゃうので、結婚してすぐ独りになってしまうんですが、その短い結婚生活がすごい温かいんですよね。まず彼女は結婚のことを『友情結婚』っていう風に呼んでいて。女性差別が残っている時代にも関わらず、『男女は世界中に半分半分生まれている、男女は同権である』といって、平等を主張し続けた。3年間しか一緒に過ごすことはできなかったんだけど、その間に1回も喧嘩をしたことはなく、彼女が女工として働いている間に細井さんは洗濯や夕食の支度などをした。それもとっても上手に。彼女は生涯の中で、細井和喜蔵と過ごした3年間を宝物のように思っていたんです。読んでいてとても温かい気持ちになります」

——最後にもう一冊おすすめの本があればご紹介ください。
「はい、昨年12月に発売された、魚谷祐介さんの著書『日本懐かし自販機大全』です。この本はですね、前半部分がオールカラーでできているんですけど、全国にある食べ物の自動販売機を紹介した一冊なんです。食べ物の自動販売機って昔は結構あったんですね。お金を入れると普通のおうどんが出てきたりハンバーガーが出てきたり。今は絶滅危惧種になっているんですが、それを著者の魚谷さんは全国を歩いて写真集にしちゃったっていう」

——どんな自動販売機が紹介されているんでしょうか。
「個人的に印象深かったのは、レトルトパックのお弁当じゃなくて普通のお弁当がヒュッと出てくる自動販売機。どこにあるかっていうと、今のところ千葉県と茨城県でしか稼働していない。千葉県と茨城県なら東京から比較的行きやすいですからね、ここは修行に行ってみようかなと思います。ほかにもたくさん紹介されているんですが、ほとんどがかなり行きにくい場所にあるんですよね。山の中とか。だからよく取材したなと思うところはあります。取材経費とかは相当大変だったんじゃないかなとも思います。これは魚谷さんが自販機をすごく好きじゃないと作れないです、たぶん。そんな愛が非常に感じられる一冊だったなと感じましたね」

<プロフィール>
今柊二 こんとうじ/1967年生まれ。エッセイスト。
横浜国立大学卒業後、定食評論家として活動し、2005年に『定食バンザイ!』を手掛けて以降、定食に関する本を続けて出版。2012年には、『定食と古本』、『丼大好き』の2冊を上梓。一方で、模型やガンダムのプラモデルに関する本も出版しており、『プラモデル進化論 ゼロ戦からPGガンダムまで』(2000年)や『ガンダム・モデル進化論』(2005年)を上梓している。

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