ビジネスマナーが最優先される日本企業には「ねたみ」「ひがみ」の感情が満ち溢れている

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ビジネスマナーが最優先される日本企業には「ねたみ」「ひがみ」の感情が満ち溢れている

「有給休暇の取得にはマナーが必要」という識者の指摘に、ネットで反発が殺到している。人事コンサルタントの深大寺翔氏は、この背景にはビジネスマナーを最優先する日本企業の根深い体質があると指摘する。

その一方で深大寺氏は、悪いのはマナー講師だけではなく、他人と違う行動に対して「ねたみ」や「ひがみ」「嫉妬」の感情を抑えることができない多くの日本人の心の問題であるとする。
「同質性」を外れることへの反発心が強い日本人

――日本社会には「同質性」が高いという特徴があります。肌や髪の色も、話す言語もほぼ一緒で、少しでもネイティブから外れる人は排除される傾向にあります。

そして他の人と違う言動を取ることは、「自分勝手」であるという評価を受けます。みんながガマンしているのに、一人だけズルイという「ねたみ」や「ひがみ」「嫉妬」といった否定的な感情に結びついているのです。

日本企業で「マナー」とか「ビジネスマナー」と呼ばれるものの多くは、この「ひがみ」の感情にいかにきめ細かく対応するか、という処世術にほかなりません。

たとえば若手社員が、会議の席で社長から「君の指摘は素晴らしい」と褒められたら、必ず「いいえ、とんでもございません」と即座に強く否定しなければなりません。そしてこう続けるのがマナーとして歓迎されるのです。

「これも所属長のAさんや先輩のBさん、Cさん、それに関係部署のD部長やE課長の温かいご指導の賜物です」

逆にこのようなフォローなしに「ありがとうございます」で終わってしまうと、「なんだあいつは調子に乗りやがって」「手柄を独り占めしようとしている」と陰口の対象となり、「絶対にあいつの勝手にはさせない」と足を引っ張られることになります。
マナーの本質は「ねたみの感情に敏感になること」

また、評価されたからといって調子に乗って、温めていた持論をさらに展開するようなことも決してやってはいけません。「ねたみ」や「ひがみ」「嫉妬」の対象としてロックオンされたら、その会社での出世は望めなくなってしまいます。

このような視点から、今回批判を浴びたマナー講師の指摘内容を見てみると、あながち全く間違っているとは言えないのです。そればかりか、この方は普段から「心のマナー」という言葉を使っていたようですが、意識をしていたかどうかはともかく、

「徹底して同僚の『ねたみ』『ひがみ』『嫉妬』の感情に敏感になること」

が日本企業におけるマナーの本質であると見抜いていたと捉えれば、その主張は一貫して正しかったといえるでしょう。

例えばこの方は、「身内や友人の結婚式」で休むときであっても、直前まで「この状況下でお休みしても問題ないでしょうか?」「忙しいときに申し訳ありません」と確認すべきだとアドバイスされています。

その理由とは、まさに華やかな場への出席を心待ちにしていることが顔に出てしまえば、そのような場に招かれる機会もない人たちから、たちまち「ねたみ」の対象にされてしまうからに違いありません。
自分の中にも同質性にこだわる「ケチな心」はないのか

休みを取った翌日にお菓子を配るべきとアドバイスしている点についても、一見するとバカバカしいと思われるかもしれませんが、休めなかった人の「ねたみ」を鎮める儀礼の必要性を、マナー講師が強く感じているからと思われます。

今回の件については休みを取りたい人が、それを妨げる動きに対して反発したわけですが、私たちに共通する心の問題がある限り、別の件では立場が逆転しないとも限りません。

私たちはマナーのあり方を批判するだけでなく、自分の心の中に同質性へのこだわりから来るケチな心が本当にないのか、あるとすれば寛容で思いやりのある心をどうやって取り戻すのか、問いかけてみることが大切ではないでしょうか。(文:深大寺翔)

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