ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

過払い金訴訟で思うこと

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 いわゆるグレーゾーン金利を違法とした最高裁判決から、まもなく10年が経過する。
 8月1日付産経新聞は、「ただ、最高裁判決は負の側面も生み出した。一部の弁護士や司法書士の『能力低下を引き起こした』との指摘だ。あるベテラン民事裁判官は『(過払い金訴訟について)・・・個々の能力は必要とされない。一部の弁護士や司法書士の能力が低下している実感がある』という。」との記事を掲載している。

 揚げ足を取るようであるが、私は、それは正確に言えば間違っていると思う。司法研修所を出て実務家になった者のスタートライン上の法的能力を仮に30という数値で表した場合、その後の研鑽、種々の事件に接して経験を増やすこと、先輩実務家からの薫陶等々によって、その30という数値が50になり、80になりというように、自己の能力が高まっていくものだと思っている。
 だから、「能力が低下している」のではなく、低い能力のままに留まっているというのが正しいのではないかと思うのである。

 しかも、最高裁判決が出された平成18年は、奇しくも新司法試験が開始された年である。このことも、従前と比較して能力の劣っている弁護士が数多く登場した根本的原因であると思っている。新司法試験制度の下、それまでは合格が覚束なかった多くの人が(単純にいえば、500人合格時代と3000人合格時代の差である2500人)、実務家となるのである。先にスタートラインで30の法的能力と書いたが、それらの人はいくら研修所で勉強したとしても、やはり10といった程度の法的能力しかないのではないか。

 そのような人々を弁護士として雇用しようという弁護士事務所はなく、就職難時代となっていることは周知のことである。そのような人でもできるのが、過払い金返還訴訟なのである。
 産経新聞で紹介されているが、「過払い金があると確認でき、裁判に必要な書面をそろえた段階で確実に勝訴できる。個々の能力は必要とされない。」というように、やや慣れた事務員さえいれば、弁護士が直接内容に関与しなくても、できる訴訟なのである。またそれで報酬を稼げるのである。その結果、スタートラインの10の法的能力は一向に向上しないのだろうと思う。

 以下さらに個人的見解を交えながら話をすすめる。
 新司法試験構想が持ち上がったのは、優秀な司法修習生を高額な年収を約束する渉外事務所にとられ、人材確保に頭を悩ますようになった裁判所と検察庁の主導であると思っている。つまり、2000人から3000人の修習生を採用することで、弁護士の需要と供給のバランスを、それまでの売り手市場から買い手市場に転換させることによって、弁護士年収が下降し、裁判所や検察庁に人材が戻ってくると考えたのではないかと思っている。

 また、弁護士を必要としていた企業も、弁護士報酬の負担を検討するようになり、社内弁護士確保のために、修習生増員に賛成をした。

 このころのマスコミ報道は、ほとんど弁護士会の考えを批判するものばかりであった。その内容は、「国民に対する司法サービスの充実を図るべく増員が議論されているのに、弁護士会は自己の権益を守るために増員に反対している」というものである。私は、日弁連あたりが、きちんと「粗製乱造」は国民に対する司法サービスのむしろ低下となるということを主張すべきであったと考えている。(次回に続く)

元記事

過払い金訴訟で思うこと

関連情報

消せるボールペン(想うままに ー弁護士日誌から)
就職活動をめぐる法律問題(今週の話題 ~法律はこう斬る!)
偽名を使った場合の法律問題(今週の話題 ~法律はこう斬る!)

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP