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後方カメラとセンサーでバイクの死角を一掃! 標識もナビも表示できるスマートヘルメット

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写真提供:SKULLY

今、シリコンバレーのウエアラブル機器業界の開発者の間で、「SKULLY(スカリー)を知らなければ、モグリだ」といわれるほど、熱狂的に完成品の発送が待たれている”お化け商品”が、オートバイ用のスマートヘルメット「SKULLY AR-1」だ。

SKULLY社が、このハイテクヘルメットを商品化するため、クラウドファンディングのIndiegogoで資金を募ったところ、昨年、クラウドファンディング史上最高額に近い250万ドルの資金集めをわずか数分で達成してしまった。

試着ができない、しかも、プレオーダーの価格ですら1,500ドルもする高価なヘルメットが、ネット上で飛ぶように売れるのを目の当たりにして、初めてハイテクヘルメットの需要の圧倒的な大きさに驚いた投資家たち。その後、半導体大手のインテルと、アクションカメラのGoProに出資していたベンチャーキャピタルがSKULLY開発に資金を次々投入。1,100万ドルという巨額の資金を新たに得て、世界67カ国で試着デモを開始した。果たして、今年中に商品を消費者に供給できるかどうかが、今サンフランシスコでいちばんのホットな話題だ。

このハイテクヘルメット、一体、どんな商品なのだろうか?

ちょっと見ただけでは、メタリックでスタイリッシュなごく普通の高級ヘルメットという感じだ。だが、いちばんの売りは、後方を超ワイドアングルで捉えるカメラが装着されていること。そして運転中、道路標識やナビゲーションが、スマートディスプレイによって視線前方に表示されること。フロントガラスに情報を表示するヘッドアップディスプレイの技術はクルマでも採用されているが、ヘルメットの右下にあるディスプレイ上という、ごく限られた面積で、運転に邪魔にならないように必要な情報を表示するのは難しい挑戦だ。

向かって左、脚を組んでいる男性がSKULLYのファウンダー兼CEOのマーカス・ウェラー氏

開発の発端は、SKULLYのファウンダー兼CEOのマーカス・ウェラー氏が、自らオートバイの運転中に事故に遭った経験だった。

「オートバイに乗っていて、道路標識を見ようとしたが、たまたま見えにくい位置にあった。ちょっと横を見て標識を探した瞬間に、前にいたクルマが急停止したんだ。気付いてブレーキをかけたが、もうそのときは、前のクルマに追突してしまっていた」

長年オートバイの運転をしてきて、運転技術には自信があったという彼にとって、この経験はショックであると同時に、安全性をあらためて考える転機となった。

ヘルメットを被ると、前方は見えたとしても、左右や後方は見えにくい。道路標識が見つかりにくい位置にあればなおさらだ。クルマのドライバーにとっては運転中に問題なく見える標識でも、ヘルメットを着用しなければならないオートバイのドライバーには見えにくいことも多い。さらに問題なのは、ブラインドスポットの存在だ。斜め後方などの死角にクルマなどがいた場合、すぐ近くを走っていても存在にまったく気付かないこともあり、非常に危険だ。このふたつの安全上の問題を何とか解消できないかと考え、ウェラー氏はSKULLYの開発に着手した。

先に説明した、後方を超ワイドアングルで捉えるカメラの装着に加えて、GPSと連動して、道順を示すナビゲーション情報をヘッドアップディスプレイに表示する機能も開発した。ボイスコントロール機能もついており、道順は音声でもドライバーに伝えられる。スマホのアプリとはBluetoothで連動し、運転中に誰から電話がかかってきたのかも把握できる。

「私たちが作っているのはガジェットではなく、安全性を追及したハードウエア商品。多くのウエアラブルガジェットのように、人間にマルチタスクを強いるのが目的ではなく、むしろその正反対を目指している。オートバイに乗っているライダーにとっては安全性がすべてだし、運転中にマルチタスクなんて到底無理。だから、すべての操作がシンプルなシングルタスクで済むように設計している」

ファウンダーのウェラー氏は、産業心理学の博士号を持ち、人間が機械を操作する場合の心理面を分析する専門家として、運転中の睡眠不足やストレスがドライバーの判断にどんな影響を及ぼすのかを研究してきた。その後、自動車業界や半導体業界でコンサルタントを務め、NASAのリサーチセンターで、3Dプリンティングの技術開発に携わったこともある。2013年にSKULLY AR-1のベータ版を開発し、最初にまず約2万3,000人に実験的に使ってもらった。完成商品は、米運輸省の認可を取っての発売になる。

「いちばん難しいのは、”インターフェイス”という考え方を排除すること。人はただ運転することに集中したいから、どんな機能でも、運転中に1秒より短い時間ですぐ実現できないとドライバーが安心して使えない。そこにいちばん力を入れている」とウェラー氏。

写真提供:SKULLY

後方の視界を知らせるためのカメラの開発では、180度の視覚を確保しながら、魚眼レンズで対象物を写した時のように位置関係が歪んでしまわないようにする点に最も苦労したという。スマホのアプリと連動するナビゲーションシステムも、スマホの通信範囲から外れるとナビもそこで終了してしまうのが問題だ。これを避けるため、通信範囲外にはずれてしまっても、道順を知らせ続ける機能を現在開発中だ。さらに、音楽ストリーミングサービスのSpotifyと連動して、音楽プレイリストから、ヘルメットを装着した瞬間に、好みの音楽を自動で流すこともできるようにした。ヘルメットの左についているボタンを触ると、ディスプレイの色の濃さも調節でき、太陽光の眩しさにも対応できる。

かつてアーリーアダプターたちがあれほど熱狂したグーグルグラスが、今はシリコンバレーでまるで話題にならないほど、栄枯盛衰のサイクルの速いウエアラブル機器の世界。だが、GoogleやAppleが自動運転車の開発に積極的に資金を投入する今、公共交通の分野が、ウエアラブル機器の次のドル箱になると多くの開発者は見ている。SKULLYはその分野のテストケースの最先端という意味からも、世界中の開発者から注目されているわけだ。

このヘルメットを使うことで、事故に遭うライダーたちが少しでも減って、多くの命が救われれば、と願うウェラー氏。果たして、それが実現されるのかどうか。また、自然や風を体感したいオートバイ乗りたちが、運転中にどの程度、ディスプレイ上に映し出された世界との共存を許容していけるのか、そのあたりも多くの議論がなされているだけに、注目を集めている商品だ。

動画クレジット:SKULLY

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