社員がアルツハイマー病を発症したら、会社はどう対応すべきなのか?

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社員がアルツハイマー病を発症したら、会社はどう対応すべきなのか?

日本でも今年6月から公開されている映画「アリスのままで」。ジュリアン・ムーア演じる主人公アリスは大学で教鞭をとる言語学者でしたが、50歳のときに若年性アルツハイマー病を発症し、仕事を辞めざるをえなくなります。

働き盛りのアリスを襲ったアルツハイマー病などの認知症は、罹った本人や家族が大変なのはもちろんですが、勤務先に無関係といえるでしょうか。英BBCは「今後、世界の経営者は認知症の課題に直面することが増えるのではないか」として、発症した社員のケアが必要だと指摘しています。(文:遠藤由香里)
「60代でも働き続ける人の増加」が背景に

認知症にはアリスのように50代や40代で発症する若年性アルツハイマー病もありますが、多くは60代以降に発症します。

BBCが前述のように指摘するのは、これまでは60代になるとリタイアする人が多かったのに対し、今は働き続ける人が増えていることから。働き続けている社員に認知症の徴候が現れるというのは、企業にとってはリアルな話です。

WHOの統計では、現在4750万人が認知症と診断されています。働いている人も多いと思われる65歳以下の患者数は全体の5~10%と見られているそうで、大まかに見積もって475万人に上ります。

米国、英国、豪州その他の国々では、認知症を理由とした労働者差別の禁止が法律化されています。それにもかかわらず、発症した社員をケアして勤務を続けられるようにする企業は少数派なのが現実です。

「診断を受けたというだけでやめさせられることが、あまりにも多すぎます」

とは、オーストラリアの当事者団体で代表を務めるキャロル・ベネット氏の言葉。「職場で増加する認知症に対応できるよう準備を重ねることは、経営者にとって重要なこと」と言います。
カナダの企業は「長期記憶を活かす仕事」に異動

それでは、どのように対応すればよいのでしょうか。例えばカナダの電力会社サスクパワーでは、50代半ばの社員にアルツハイマー病の兆候があると発覚。これまでのようにタービンや発電機、ボイラー等を扱えないことは上司にも伝わりましたが、辞めさせられることはありませんでした。

会社側はその男性の30年に渡る経験と発電プラントに関する豊富な知識を活かしたいと考え、企画チームへの異動を命じます。その職場は男性が失いつつある短期記憶ではなく長期記憶を活かすことができる職場でした。

結果として、男性は診断後5年間働き続けることができました。サスクパワーの職場復帰専任担当者であるキャシー・ポッツ氏は、次のように述べています。

「当社では適切な調整をすることによって、認知症を患った従業員ができるだけ長く働けるようにすることを目指しています」

記事では企業ができることをいくつか挙げています。まずは忙しくない業務への変更。その際、従来と近い内容の仕事にすることや部署を変えないことがポイントです。

To Doリストや録音機器、静かで整頓されたオフィススペースを用意することも良いようです。業務に必要なものを、分かりやすく色分けすることも有効です。
日本の職場で同じことが起こったらどうなるか

症状が悪化した場合は、社員ボランティアがサポートをするのも良いとのことです。社員の中には簡単な仕事をするのを嫌がる人もいるかもしれませんが、「認知症発症=辞める」ではなく、働き続けられるという選択肢を作ることが大事なのです。

映画「アリスのままで」で、主人公アリスは病気を上司に打ち明けます。上司は彼女に仕事を諦めさせ、アリスの病気を職場に知らせることを告げます。この対応は悪い例と言えるでしょう。

ロイズ銀行グループのグレイム・ウィッピー氏は、「上司はサポートできる内容をアリスに話し、同僚に知らせるかどうか彼女自身に決めさせるべきでした」と述べています。ただ、日本で同じような思いやりのある対応ができる職場が、どのくらいあるのか気になるところです。

(参照)A silent struggle in the workplace(BBC)

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