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高速移動中でも携帯がつながるのはなぜ!? そのしくみを電波対策技術者に聞いてみた

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人口カバー率 99%を超えたauの4G LTE(800MHzプラチナバンド)。現在もエリア拡大を続けていると同時に、通信品質を維持・向上するために定期的な確認調査も行っている。

日本全国に広がる電波の品質をどのように調査しているのか、そもそも電波はどのようにつながっているのか。KDDIのエリア品質強化室に所属する玉川隆士(写真左)と河島健一(写真右)に、鉄道ジオラマに囲まれたバーで話を聞いてみた。

「エリア品質強化室」のミッション

KDDIエリア品質強化室の玉川隆士(左)と河島健一(右)

――おふたりの所属する「エリア品質強化室」がどのようなことを行っている部署か、教えていただけますか?

河島「全国のエリア品質を改善するための企画や、改善活動の進捗全てを一元管理し、改善活動を加速化させる部署です。具体的には、エリア・通信品質向上施策の立案とその導入推進、生活動線や高速移動における品質改善、ビックデータを活用した品質改善システムの構築などを行っています。」

――そのなかでおふたりはどういったお仕事をされているんですか?

玉川「私の業務は、新幹線や高速道路といった”各エリアをまたがる場所や乗りもの”において、通信品質の改善手法の企画や現場への改善活動推進を行っていくということです」

河島「私はビッグデータを活用した、品質改善の企画やその導入推進を担当しています」

高速移動中の電波のしくみ

――新幹線などの高速移動中に電波をキャッチする仕組みって、どのようになっているのでしょうか?

河島「せっかくなのでジオラマを使って説明しましょうか。新幹線に乗っている場合、携帯電話は、沿線や少し離れたところにある基地局(写真の鉄塔)から電波を受けてデータや音声のやりとりをしています。

例えば右にある基地局と携帯電話が電波のやりとりをしていたとすると、電波の届く範囲は右側のオレンジ色の円の中ぐらい。新幹線は最高時速約280キロで進みますから、すぐにこの円を飛び越えて電波が弱くなっていきます。すると今度は、より強い電波を受信できる基地局へバトンを渡すようにつなぎかえて、通信を維持します。これを『ハンドオーバー』と呼んでいるのですが、このようにどんどん基地局を切り替えて、通信が継続されるようになっています」

沿線近くの基地局(右:鉄塔)から電波を受けるが、
新幹線(最高時速約280km)はすぐにこの電波範囲を飛び越えて……

より電波を強く受信できる基地局(左:鉄塔)に切り替える。移動中の通信は、この「ハンドオーバー」を繰り返しており、高速移動中はより多くの「ハンドオーバー」を行っている

――電波を改善するときは、一つひとつの基地局を見て周るのでしょうか?

河島「いえ、携帯電話と基地局などとのやりとりをデータとして保存しています。それらの種別の異なるデータを一つひとつ突き合わせて、どこでなぜ電波が途切れたかを見ているんです。そして途切れたポイントごとにどういう調整をすればよいか考えるという作業をしています」

――それでも大変そうですね……。しらみつぶしに直していくことになると思うのですが、そこがいちばん大変な作業なのでしょうか?

玉川「そうですね、実際に新幹線に携帯電話を10台、20台持ち込んで、電波状況を確認したりすることもあります。どのエリアでどの携帯電話の通信が途切れたかをチェックしているんです」

東京から新大阪までは1,500回の通信切り替え!

――ビッグデータがあると、調整にも予測が立つと思うのですが、それができる前はひたすらトライ&エラーを繰り返していたのでしょうか?

河島「そうです。何度も新幹線に乗っています(笑)。多いときは月に2回とか3回ですかね。そのたびに携帯電話を10台近く抱えていました」

玉川「都市部では数百メートルに一つは基地局がありますし、郊外でも数キロに一つはあるんです。例えば東京から新大阪までですと、だいたい1,500回以上のハンドオーバーが発生していまして。その中でも、基地局ごとに最適な調整方法を検討して実施して、再調査を行う、といった調整が延々と続きました。もちろん、私一人でやっているわけではなく、全国の新幹線エリア担当者の協力を得ながら実施してきました。」

――途方に暮れそうな仕事ですね……。なかには山に覆われたトンネルとかで、基地局も離れてしまっている場所で、どうしても電波が弱くなってしまうエリアもあると思うのですが、そういうところの対策とかもされているんですか?

玉川「そういったところでは基地局を増やすか、アンテナの方向を変えるか、ですね。また、弱いエリアをスポット的に狙えるアンテナを使用することもあります。」

――新幹線はほぼ全国を走っていると思うんですけど、みなさんだけで周られたんですか?

河島「はい、乗車人数が多い路線を優先しながら、新幹線路線の品質調査、改善活動を行っています。」

ネックは、電波の入りが偶発的に悪くなること

――「この新幹線だったらあのエリアで電波が弱い!」みたいなことはありますか?

玉川「当初はこのエリアが弱いっていうのはあったんですが、現時点では、常に弱いといったエリアに対する対策はほぼ終わっています。今では、常に問題が起きるというエリアはほぼなく、電波の変動やタイミングによってランダムに問題が生じるものがほとんどです。もぐら叩きのような感覚ですね(笑)。

問題の発生確率が少ないもの、例えば100回やって1回しか起こらないような問題とかもあるんですけど、ただ確率が低いからといって、『改善しなくていい』というわけにはいきません。実際、新幹線はお客さまが1,000人以上乗って毎日何回も走っているので、どなたかには必ず電波の影響が出ているはずなんです。

そう考えると『月に2~3回新幹線に乗って調査しています』と言うのも本当は少ないくらいなんですよ。発生確率100分の1とか、少ないものであっても潰し込む。そこが大変なところです。」

――なにか品質調査時に苦労されたエピソードってありますか?

河島「一度調査した結果、申告と同じような状況が起きなかったとしても、本当にその症状が出るまで何度でも現場に行って、発生した要因を掴んで対策するっていう形にしているので。すぐに症状が再現するものもあれば、しないものもあるので、そういうときは大変ですね……」

Twitterの投稿から即座に対応

――ひとつずつ電波対策をしていった結果、電波環境は改善されていったのでしょうか?

河島「はい、実施前と比べると改善していることが確認できています。しかし、十分な品質を提供できていない場合には、Twitterとかで『電波が悪い』というお叱りの声をいただくこともあります」

――Twitterの検索窓から『au 電波弱い』などと検索をかけているんですか?

河島「はい、チェックしており、そういったツイートを見たら、即時に分析や現地調査に動けるよう心がけてます

――フットワークが本当に軽いですね!

玉川「エリア品質強化室のメンバーは、誰がどこに住んでいるかを名簿でまとめていて、『じゃあ○○線でTwitterのつぶやきがあったから、○○さん帰りに見てきて』とか言っています(笑)」

――ユーザーとしては本当に些細な気持ちで呟いたものが、そんなことになっているんですね。

玉川「我々からしたら、貴重な情報だと思うんですよね。たとえばレストランに行っても、『料理がまずいな』って思っていても、実際にそれを申告する人ってそんなにいないじゃないですか。でも申告があると我々も味に早く気づくことができるので。Twitterとかで気軽に声を上げてくださるのは、品質改善っていう面では、ありがたい情報ですね」

――超ポジティブですね。

玉川「そう考えないと、『また、ご迷惑をかけてしまった』と落ち込んでしまうので(笑)」

河島「私たちは、日本の隅から隅まで通信品質を把握するべく活動を行っていますが、お客さまの声も生かしながら品質の底上げをしているような形ですね」

電車や交通のことに詳しくなった

――少し話が変わるのですが、実際にこのお仕事をされていると、鉄道や新幹線のことを好きになったり、詳しくなったりすることはあるんですか?

河島「詳しくはなりますね。新幹線だけでなく、在来線も乗ったり見たりしているのですが、どこの地域にどういった路線があって、どの駅がどの辺りにあるかといった情報は自然と身に付きました。あとは、ここにトンネルがあるとか、このトンネルの名前は○○だ、とか(笑)」

――結構マニアックな知識が身に付きますね。

河島「そうですね。あとは新幹線から基地局が見えたりしたときに、『あれはうちの基地局かな』とか」

玉川「私も同じような感じです。新幹線に乗っているとすごく開けている所がありますよね。ああいった場所に行くと、『遠くから邪魔な電波が飛んで来ていないかな……』って心配になったり(笑)」

――山やビル群などのごみごみしてる場所の方が電波は拾いにくいかと思っていたのですが、逆に平地の方がそういうことが起こり得るんですね。

玉川「そういう場合もありますね。あとは高い所でもそういった現象は起きやすいですね。たとえば高層階って、本当はすぐ近くの電波を掴みたいんですけど、いろんな電波が集まり、ぶつかりあったりしてるんです」

河島「海上とかも大変ですよ。レインボーブリッジとか、いろんな場所の電波拾っちゃうんで」

新幹線同士ですれ違っても電波は途切れないのか

――新幹線で調査に行かれるときは、基本的にとんぼ帰りなのでしょうか?

河島「はい、向こうに行ったら、帰りの調査の準備をして、そのまま帰って来るだけですね」

玉川「私は先日、仙台に行ったのですが、朝9時半に東京を出発して、向こうに着いて、牛タン定食を食べて、すぐに帰りの新幹線に乗り、3時半ぐらいから都内の本社での打ち合わせに参加したことがあります(笑)」

――まるでお昼ご飯を食べに行ったかのようですね(笑)。「新幹線同士が高速ですれ違ったときでも、電波は通じるのか」という調査をされたと伺ったのですが……。

玉川「あ、そのすれ違い調査が、まさに私が仙台に牛タンを食べに行ったときです。普段は新幹線の中から本社に置いてある携帯電話に電話した状態で、通話が切れないか調査しているのですが、そのときは両者が新幹線に乗っている、両方とも高速移動しているっていう環境も調査してみようということになって

――飽くなき品質向上魂ですね!

玉川「ええ。今回は東北新幹線でやったんですが、私だけでなく帰ってくる人がいなきゃいけないですよね。そうしたらちょうど、うちのリーダーが出張で仙台に行く予定があったので、その帰りを狙って、『何時何分に宇都宮周辺で時速何キロですれ違うはずだろう』っていうのを事前に計算しまして……(笑)。

あとは私とリーダーで『今出ました』『今ここらへんです』『そろそろすれ違うね』ってやりとりしながらすれ違いました」

――緻密な計画を立てられたんですね。

玉川「お互いの顔が見えたら面白いなって思ってたんですけど、もう1秒ないくらいでスッと終わって、『あ、切ないな』って……(笑)」

普段何気なく使用している携帯電話も、こうした人たちの妥協を許さない努力があったからこそ、快適な電波環境で通話やインターネットを楽しめていることが分かった。

今度新幹線に乗る機会があったら、窓から基地局を探してみてもらいたい。綿密に計算されたうえで設置された基地局やアンテナが、あなたの電波環境をできるだけ快適に保とうと見守っているはずだ。

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