テーム・インパラ『カレンツ』 旧来のバンド幻想とは掛け離れた自由なスタンスが生んだ新たな傑作

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テーム・インパラ『カレンツ』 旧来のバンド幻想とは掛け離れた自由なスタンスが生んだ新たな傑作

 まるで、世界に七色の幻想的な視界と、新しい秩序をもたらしてしまうような作品だ。オーストラリアのドリーム・ポップ・バンドであるテーム・インパラは、前作にあたるセカンド・アルバム『ローナイズム』(2012)で既にグラミーのベスト・オルタナティヴ・アルバムにノミネートされるほど高い評価を獲得してきたが、その後2年以上をかけて練り上げられて来た新作『カレンツ』は、大胆にサウンドの表情を変えながらも、紛れもないテーム・インパラの新たな傑作として鳴り響いている。本国チャートでの1位奪取はもちろんのこと、Billboard 200でも初登場4位をマーク。オルタナティヴ・チャートでは堂々の1位スタートと、目覚ましい活躍を見せている。

 テーム・インパラは、バンドの首謀者にしてマルチ・ミュージシャンでもあるケヴィン・パーカーの宅録プロジェクトとしてスタートした。現在も基本的な性格はそのままであり、そのためテーム・インパラの音楽性はケヴィンのその時折のモードに大きく左右されることになる。レコーディング・メンバーやライヴ・メンバーの役割もその都度フレキシブルであり、同郷のポンドというバンドとメンバーを共有していたり(ケヴィンはかつてポンドのドラマーであった)もする。旧来的なバンド幻想とは掛け離れた自由なスタンスで活動することが、いつでもバンドに新鮮な風を吹き込んでいる、という見方も出来るだろう。

 新作のオープニングを飾る「Let It Happen」は、今春フリー・ダウンロード公開された7分越えの大作であり、シンセ・サウンドのレイヤーが織り成すドラマチックな響きも手伝って、SNS上で大きな反響を呼んだナンバーだ。宅録プロジェクトとはいえアナログな音の手応えが強く、デイヴ・フリッドマンというロック/ポップ音響の才人をミキサーに迎えていた『ローナイズム』と比較しても、テーム・インパラが新しい領域に踏み込んでいることは「Let it Happen」1曲で明らかであった。

 エレクトロなサイケデリック・ループの中へと誘い込む「Nangs」、気怠いアーバン・ソウル風の「The Moment」といったナンバーに加え、中にはテーム・インパラ流の感傷的なディスコ/エレクトリック・ブギーと言える「The Less I Know The Better」といった驚くべきスタイルの楽曲までが含まれた『カレンツ』。こう書くとメインストリーム路線で無節操なように思えるかも知れないが、しなやかで確かな手応えを残すソング・ライティングといい、突拍子もなくベンドされるピッチの遊び心といい、テーム・インパラの根幹は揺るぎない。それは例えば、ポップの魔術師=トッド・ラングレンが、現代的なダンス・ミュージックの作法を取り入れてもやはりトッド・ラングレンでしかありえないのと、同じような話だ。

[text:小池宏和]

◎リリース情報
『カレンツ』
2015/07/22 RELEASE
Fiction/ Hostess
HSU-10034 2,400円(tax out.)
iTunes:http://apple.co/1d2892f

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