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今週の永田町(2015.8.5~11)

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【安倍総理、下村大臣の責任を否定】

先週7日と今週10日、衆参両院それぞれの予算委員会で、安倍総理・関係閣僚出席のもと、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場の建設計画見直しなどをテーマにした集中審議が開催された。

 

 *衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継

 

安倍総理は、新国立競技場の建設計画を白紙撤回したことに伴い、デザイン監修業務や設計会社4社の共同企業体との設計業務など約62億円が無駄な支出となることについて、「白紙撤回の前に締結した契約による支出は、その当時は適正な支出だったが、結果として白紙撤回したものに貴重な公的資金を使用したことは、国民の皆様に対して申し訳ない思いだ」と陳謝した。そして、「できる限りコストを抑制し、現実的にベストな計画を作ることが重要だ。責任を果たすため新国立競技場を2020年の開催までに間違いなく完成させるように内閣全体で責任を持って取り組んでいく決意」と改めて表明した。

安倍総理が新国立競技場の建設計画について白紙撤回を表明したのが、衆議院で平和安全法制整備法案と国際平和支援法案の安全保障関連2法案の採決を与党単独で行った翌日だったとして、民主党は「批判をかわすための政治利用」(小川淳也・衆議院議員)と批判した。これに対し、安倍総理は「この問題は、安全保障関連法案は全く別だ」と反論した。

 

また、民主党による「計画の見通しが甘い」「新国立競技場の問題は集団的無責任体制だ。既存の競技場の改修も含めた真剣な検討をしていない」との追及に、安倍総理は、キールアーチ構造などの旧デザインを選んだのは民主党政権下であり、日本オリンピック委員会(JOC)が国際オリンピック委員会(IOC)に提出した立候補ファイルに「必要であれば日本政府が財政支援をする」などと記載された野田総理名入りの保証書が添付されていたことを踏まえ、「国立競技場を壊して新しいものを造ると決めたのは民主党」であり、「デザインそのものに予算を膨らませる大きな原因があった」「我々はそれを受け継いだが、IOCとの関係もあり、いきなり白紙撤回するような無責任なことはしなかった」と、民主党にも責任があると反論した。

こうした反論に、民主党は、総工費をめぐる迷走は自民党政権下で起きたことで「責任転嫁も甚だしい」などと反発している。2013年10月に建設費が1300億円から約3000億円に膨らむ見通しが表面化していたものの、事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)が2014年5月に基本設計の概算工事費を1625億円と過少に見積もったことで、2015年6月末に政府が発表した総工費は2520億円に膨らむ結果となったからだ。JSCが正確な額を公表していれば計画見直しが早まった可能性もあるだけに、「デザインを決めたことで我々の責任がないとは言わないが、きちんと早く対応していればこういう混乱はなかった」(民主党の岡田代表)と批判した。

 

民主党など野党は、JSCを管轄する下村文部科学大臣に政治責任があるとして、下村大臣が引責辞任するか、安倍総理が更迭すべきと主張している。これに対し、安倍総理は「世界の人々を感動させる大会にする責任は政府にあり、最終的な責任は総理大臣である私にある」として下村大臣の辞任は不要との認識を示しつつ、文部科学省に設置された第三者による検証委員会で「客観的な立場で検証が行われると期待している。経緯と併せて責任の所在についても議論してもらうと考えている」と述べた。

下村大臣も、様々な批判を謙虚に受け止めるとともに、第三者委員会での検証結果を踏まえて対応していく意向を示したうえで、「大会開催に確実に間に合わせ、できるだけコストを抑制し、現実的にベストなものにすることで、国民に歓迎してもらえる対応をすることが最も責任を果たすことになる」と強調して、続投に意欲を示した。

 

 

【核兵器運搬は政策的にありえないと説明】

中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣が、安全保障関連2法案の法文上、核兵器はあえてあてはめれば弾薬と整理することができ、他国軍への後方支援で自衛隊による運搬も法理論的には排除されないと答弁したことについて、民主党など野党が問題視して集中審議でも追及した。中谷大臣は、5日に開かれた参議院わが国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会で、非核三原則の存在を理由に「(米国から)要請があってもありえない」と強調したが、野党側は、法的な歯止めがない以上、時の政権の判断で核兵器運搬が可能になる余地が残るとして猛反発していた。

こうした野党側の追及に、安倍総理は、核兵器運搬を排除する規定がないのは現行の周辺事態法でも同じことであり、非核三原則や、核兵器を運ぶ能力が自衛隊にないことなどを理由に、「核弾頭の運搬は政策的に全くありえない。純粋法理論上の机上の空論に対して答えたにすぎない」「国是として非核三原則を表明している。国是のうえに法律を運用するのは当然」などと強調した。そして、「そもそも選択肢としてないものを議論すること自体、意味がない。ありえるかのごとく議論するのは間違っている」と、批判を強める野党側を牽制した。

 

 民主党の岡田代表は「非核三原則と、核の国外での運搬は直接関係ない。非核三原則を分かっているのか」と批判したうえで、「論理的にはありえるのだから、机上の空論と片付けるのは間違い。法理上明確にするべき」と、関連法案に核兵器運搬の排除を明記する修正が必要であり、政府はこうした訂正を行ったうえで関連法案を出し直すべきと訴えた。

7日の集中審議で質問に立った山井・衆議院議員は、6日の広島市での原爆死没者慰霊式・平和祈念式の挨拶で安倍総理が非核三原則の堅持に触れなかったとして「その国是をいわなかったのはあなたではないか」と非難した。こうした批判に、安倍総理は「非核三原則は当然のことで、その考え方に全く揺るぎはない。当然の前提として核兵器のない世界の実現に向けて国際社会の取り組みを主導していく決意を表明」と述べた。長崎の平和記念式典で非核三原則の堅持に言及したことについては、「さまざまな指摘があったので、誤解を招くことがないように言及した」(10日の集中審議)と説明した。

 

安全保障関連2法案の審議をめぐっては、与野党が10日の特別委員会理事懇談会で協議した。与党側が審議に向けた日程協議を提案したものの、野党側は「我が国を守るために必要な措置かどうかを問題にすべきで、法的安定性は関係ない」と発言した礒崎総理補佐官を再び参考人として招致するよう求めた。与党側は、礒崎総理補佐官の再招致に消極的姿勢を示して「別途、何らかのかたちで解決策を提示させていただきたい」(自民党の佐藤正久与党筆頭理事)と回答するに留めた。このことから、11日に中谷大臣出席のもとで野党が質問する一般質疑のみが決まり、礒崎総理補佐官の再招致をめぐる結論は持ち越しとなった。

自民党は、関連2法案の審議の行方に不透明感を増し、採決への道筋を描きにくくなりつつあるなか、着実に審議を積み重ねていきたい考えだ。順調にいけば、9月上旬にも採決の目安とする100時間程度の審議時間に到達するとみている。一方、成立を急ぐ与党を牽制したい野党側は、礒崎総理補佐官の再招致を引き続き求めていくとともに、関連2法案の違憲性や矛盾点などを浮き彫りにして、対決姿勢を強めたい考えだ。

 

 

【野党、対案などの提出へ】

 野党側は、安全保障関連2法案の対案または修正案を参議院に提出する方向で準備を進めている。

維新の党は、衆議院で否決された関連2法案の対案を一部修正のうえ、早ければ18日にも党内手続きを終えて参議院に提出する方針でいる。これまで党執行部内では、衆議院での採決直前に修正協議の継続を与党と合意していることもあり、対案を参議院に提出して修正協議を再開すべきとの声がある一方、与党に再び利用されかねないと対案提出に慎重な意見もあり、対応が定まらない状態が続いてきた。

しかし、与党幹部らが修正協議入りを念頭に野党側に対案の早期提出を呼びかけ、安倍総理も「政党間の協議が進んでいけば謙虚に耳を傾けたい」と柔軟姿勢を示しているほか、礒崎総理補佐官の発言などにより「我々の案との差がはっきり出る環境ができた」(松野代表)とみて、対案の提出方針を固めた。

 

 維新の党が修正のうえ提出する予定の対案は、自衛隊の活動範囲を非戦闘地域の公海とその上空に限定して国連決議なしには自衛隊派遣できないことなどを盛り込んだ「国際平和協力支援法案」や、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処するために領域警備区域を指定して自衛隊が警備行動できるとした「領域警備法案」など計8本としている。

政府が改正案10本を束ねた一括法案にして国会提出したことに批判・苦言などがでていることや、他の野党から法案ごとに提出した方が審議しやすく賛成もしやすいとの声が出ていることも踏まえ、これまで政府案に合わせて改正案を束ねていた「平和安全整備法案」を、存立危機事態の概念ではなく「武力攻撃危機事態」にのみ個別的自衛権を拡大して自衛隊の武力行使ができることを盛り込んだ改正案や、駆け付け警護を可能とする国連平和維持活動(PKO)協力法改正案など6本に分割することにした。維新の党は、他の野党との共同提出も視野にいれ、法案の分割を決めたようだ。

逆風に苦慮する与党は維新の党との修正協議の再開に前向きな姿勢を示しており、維新の党の片山参議院議員会長も「法案は修正した方がいい。違憲だと集中攻撃を受けるような法案を強行したらダメだ」と与党側に柔軟に対応するよう求めている。ただ、政府案と維新案の隔たりが大きく、維新の党内には「維新案の丸のみが(採決で賛成する)条件」(小野・安全保障調査会長)といった声も出ているだけに、協議の行方は見通せないままだ。

 

 また、日本を元気にする会は、自衛隊を海外派遣する場合に、例外なく国会の事前承認することや、海外派遣の事後検証を義務化することなどを求める修正案の提出を検討している。新党改革も同様の主張をしており、お盆休み明けにも共同提案をめざしている。

 一方、周辺事態法改正案などの要綱案を関連2法案の対案として作成することを決定した民主党は、参議院への提出をめぐって意見が分かれている。党内の保守派らが対案提出すべきと主張しているのに対し、「違憲法案に対案は出せない」(蓮舫・代表代行)と、岡田代表ら党執行部らは、違憲性などにこだわって安保関連2法案の廃案を求めていくべきだとしており、対案提出に慎重姿勢を示している。

 

 

【戦後70年談話の内容とその反応に注目を】

11日に参議院で開催された安全保障関連2法案を審議する特別委員会と、労働者派遣法改正案などを審議している厚生労働委員会を除き、今週の審議は行われない見通しだ。国会審議が再開するのは来週以降となる。

 

派遣労働者の柔軟な働き方を認めることを目的に、企業の派遣受け入れ期間の最長3年という上限規制を撤廃(一部の専門業務を除く)する一方、派遣労働者一人ひとりの派遣期間の上限は原則3年に制限して、派遣会社に3年経過した後に派遣先での直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供などの雇用安定措置を義務づける「労働者派遣法改正案」は、同じ職務を行う労働者は正規・非正規にかかわらず同じ賃金を支払う「同一労働・同一賃金推進法案」とともに、通常国会中の成立は確実だ。ただ、日本年金機構の個人情報流出問題の影響などにより、参議院厚生労働委員会での採決見通しが立たない状況のままとなっている。

審議の遅れから、政府・与党は、関連政省令の整備などに一定の期間がかかることから、労働者派遣法改正案に明記した施行日の9月1日では間にあわないと判断して、9月末に修正する方針を固めている。通常、周知期間として法律公布から施行までに半年程度を空けるが、労働者派遣法改正案では1カ月程度と極めて短くなる見通しだ。当初、政府・与党は周知徹底するために十分な期間を空ける考えだったが、成立の遅れから異例のスピード施行となる。民主党政権下で成立した2012年労働者派遣法改正に伴う労働者保護策「労働契約申し込みみなし制度」が10月1日からスタートすることで、派遣期間の制限がない専門26業務で本来の業務と関係ない業務などをさせている派遣先の企業は、派遣労働者が希望すれば直接雇用しなければならなくなり、直接雇用を回避すべく派遣社員の契約を9月で打ち切るといった事態も想定されるからだ。

政府・与党は、こうした雇用現場の混乱を回避するべく、10月1日前の施行にこだわっている。ただ、施行日を修正すれば衆議院での再可決が必要となるため、成立阻止を掲げている民主党など野党が衆議院での再審議を求めれば、成立が大幅にずれ込む可能性もあるようだ。

 

 与党は、9月27日までの通常国会中に審議する法案の絞り込み作業を加速化させており、柔軟な働き方を広げて労働生産性を高めるねらいから高度プロフェッショナル制度創設や企画業務型裁量労働制の対象を新商品開発・立案や課題解決型営業などへの拡大、年5日の有給休暇の取得ができるよう企業に義務づける過労対策などを柱とする「労働基準法等の一部を改正する法律案」などの会期内成立を断念した。

民主党や共産党など野党が「残業代ゼロ法案」と位置付けて成立阻止を掲げているだけに、強引に審議を進めれば、安全保障関連2法案や労働者派遣法改正案の審議にも影響を与えかねないと判断したようだ。与党は、成立しやすい法案の審議を優先し、労働基準法改正案などは、衆議院で審議入りのうえ継続審議とする方針だ。これにより、秋の臨時国会以降に持ち越される公算が高まっている。

 

 今週14日に政府は、戦後70年談話を臨時閣議で決定のうえ発表する予定だ。現在、政府・与党内では、総理大臣の私的諮問機関「21世紀構想懇談会」(座長:西室泰三・日本郵政社長)が6日に提出された報告書を参考に、談話に盛り込む内容をめぐって調整が続けられている。公明党は、「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのおわび」について言及した戦後50年の村山談話や戦後60年の小泉談話で受け継がれている歴史認識、少なくともその趣旨を全面的に継承するよう求めている。

安倍総理は、戦後70年談話にあたって「過去に対する痛切な反省」「戦後の歩み」「未来志向」の3本柱を打ち出す一方、7日の集中審議では「歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ。戦後70年談話はそれを前提として作成する」と述べている。談話では、先の大戦に対する痛切な反省や戦後日本の国際貢献の実績、積極的平和主義の推進などを強調するとともに、戦後日本の歩みに多くの国が理解を示していることにも感謝の意を表すようだ。また、今後も政府開発援助(ODA)による経済支援や、国連平和維持活動(PKO)などで、国際社会の安定に貢献していく方針も盛り込む。焦点となっているアジア諸国へのおわびについては、直接的表現を避けつつも、近隣諸国にお詫びと受け止めてもらえるような表現にする方向で検討されているという。

 

14日に安倍総理がどのような談話で発表し、閣議決定後に開かれる記者会見でどのような説明をおこなうのだろうか。そして、与野党各党やアジア諸国などがどのような反応をみせるのか。戦後70年談話の内容によっては、お盆明けの国会審議にも影響を与えかねないだけに、一連の動きを注意深くみておいたほうがいいだろう。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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