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被疑者勾留

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 警察が被疑者を逮捕した場合、48時間以内に検察官送致をし、検察官は24時間以内に勾留するか、釈放するかをしなければならない。勾留を決定するのは、検察官からの請求を受けた裁判官である。

 当番弁護士の要請があり接見にいくと、40代のサラリーマン風の男性が逮捕されていた。逮捕2日目である。被疑事実は、出社途中で寄ったコンビニでサンドイッチと歯ブラシを盗んだというもの。店を出たところで店員に取り押さえられ、実害はなかったものの、通報を受けた警察官に逮捕された。
 事情を聞くと、特に抵抗した様子などはないようである。ちゃんとした会社に勤めており、家庭もあるという典型的なサラリーマンである。自分でも何でそんなことをしたのか分からないと言う。朝食は摂ってきたので特にお腹がすいていたということもないし、ましてや歯ブラシについてはまったく必要性のないものであった。

 これまでの取調べには黙秘をしているという。なぜかというと、被疑者の権利など諸々のことが皆目分からず、調書を取られてしまったらマズイと考えていた。とにかく弁護士が来るまでということで話をしていないのだという。

 警察から送致を受ける検察官は勾留満期で不起訴処分とするのではないかと思われた。しかし、勾留は最低でも10日間もあるし、不起訴処分自体単なる見込みにすぎない。その間会社を欠勤するにしても、病欠で10日間もというわけにはいかない。それだけに勾留というのは、本人にとってかなりの負担となる。されないのですむのであれば勾留されない方がいい。

 勾留は、被疑事実が存在すること、住居不定であること、罪証隠滅のおそれのあること、逃亡のおそれがあることを理由として認められる。その他具体的事案に即して勾留の必要性があることも要件となる。通常は勾留の理由があれば勾留の必要性もある。
 彼の場合、住居はあるし、罪証といっても盗んだ物が手元にあるわけではないし、コンビニの店員にことさら接触するとも思えない。家族がいて会社勤務であることと事件の内容を考えると逃亡することも考えられない。逮捕二日目ということもあって、検察官送致となるから、奥さんに身元引受書を書いてもらい、これを持参して検察官に勾留請求をしないように頼みにいった。
 ところが、けんもほろろに断られた。「最初は否認していたんですよ。釈放なんかしません」と言う。女性の副検事だった。否認していたのではなく黙秘していたにすぎないこと、だから現に今はすべてを話していること、会社勤務であり場合によっては解雇のおそれもあることなどを説明したが、まったく聞き入れてもらえなかった。

 急ぎ、事務所に戻って、裁判官宛に検察官からの勾留請求を却下してもらいたい旨の上申書を提出した。あまり期待はしていなかったが。しかし、勾留請求は却下された。直ちに奥さんと共に警察に行き、釈放を求めた。
 ところが、警察官は、「おかしい○○は必ず余罪があるはずだ」「奥さんに身元引受書を書いてもらう」など、ぐだぐだと言う。余罪の有無は関係ないし、身元引受書は提出済だと言っても、まだいろいろ言う。勾留請求は却下されているのだから早く出してくれと言うと、今手続中だと言う。ここで喧嘩をしても仕方がないので、1時間ほど待ち、やっと身柄が解放された。警察の態度にはかなりの不満があったが、解放を喜んだ。彼は病欠ということで会社関係も無事だった。

 形骸化した勾留裁判が多い中で、この事件での勾留裁判官の態度は見事であった。修習生時代に刑事裁判教官が、逮捕や勾留については勇気をもって却下すべきだと教えてくれたが、まさにそのとおりである。勇気ある裁判官はほとんどいない。

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