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犯罪者にセカンドチャンスを!再犯率と就労支援の関係性

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法務省が保護観察中の少年を非常勤で採用

最近、法務省が保護観察中の少年を少年鑑別所で非常勤採用することを正式開始した、というニュースがありました。この趣旨は再犯防止であり、そのために国の機関が率先して「範を示す」という施策といえます。この再犯者の問題について、私自身法務省の心理技官として少年鑑別所や刑務所などで25年間勤務した経験を踏まえて考察したいと思います。

再犯者の問題の増大と就労支援の重要性

最新の犯罪白書(平成26年版)によると、実は再犯者の総数自体はここ数年漸減しています(一般刑法犯の検挙人員による)。しかし、対する初犯者総数の減少の方が更に大きいため、相対的な指標となる検挙された者のうちで再犯者が占める割合(再犯者率)は増加の一途をたどっており、平成25年には検挙者の約半数となっています。つまり、再犯者の問題性はますます高まっています。

また、法務省の保護統計年報によると、保護観察終了者のうち無職者の再犯率(28.1%)は、有職者の再犯率(7.6%)の約4倍(平成21年~25年)となっています。そのため、犯罪の減少を図るための重要な決め手は、再犯をいかに防ぐか、具体的にはいかに就労者を増やすかだといえます。

なかなか進まない就労支援の現状

今回の施策は国の施設で雇うと意味では画期的ですが、実は一部の地方自治体(大阪市、奈良県、東京都大田区など)では既に導入しています。また、民間企業では、法務省主導による「協力雇用主」制度として以前から導入済みです。

ただ問題は、この「協力雇用主」制度が必ずしも機能していないことです。というのは、法務省によると、保護観察中の少年や刑務所を出所した元受刑者などへの「協力雇用主」として登録している企業は約12,600あるものの、実際の雇用企業数は約500にとどまり、また事業主の8割は従業員100人未満の中小企業で、大企業の参画が少ないことです。

犯罪者をレッテル貼りしない見方が、真の再犯予防につながる

犯罪者への就労支援を進めるため、国は雇用主に奨励金を支給するなどの支援制度を打ち出していますが、根本の解決策は「罪を犯した人をどう見るか」という、個々人ひいては社会全体の認識の問題と考えます。特に「犯罪者というのは異質な人間で、自分は違う」という認識の問題です。

しかしながら、私が心理技官として延べ数千人の犯罪者に面接して得た結論は、誰でもある一定の状況に置かれれば犯罪を起こし得る、ということです。確かに一部にはいわゆる「反社会的人格」に該当する場合がありましたが、それはごく少数で、圧倒的多数は不遇な生い立ちや教育の欠如などに起因するいわゆる「社会的訓練(social skills)」の不備が犯罪に至った原因というのが私の結論です。

社会としてどのようにセカンドチャンスを与えられるか

それでも、「一旦罪を犯してしまうと、死ぬまで犯罪者と見なす」との考え方では、「犯罪者=回復不可能者(怖い人)」となります。このような見方は、犯罪心理学では「ラベリング(レッテル貼り)」という機制で説明されます。つまり、罪を一度でも犯した人を「犯罪者」とラベル(レッテル)を貼ってしまうことが、自他ともにその人の立ち直りを阻害している、ということです。

確かに「犯罪者」は就労しても再犯の可能性がゼロではなく、その意味で雇用主にリスクはあります。しかしながら、一旦失敗した人に社会としてどのようにセカンドチャンスを与えられるかが、長い目で見れば真の犯罪の減少につながるといえることから、社会全体でどこまでリスクを許容できるかを考えていくのが重要ではないかと考えます。

(村田 晃/心理学博士・臨床心理士)

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