文科省の新目標「チーム学校」でカウンセラーが果たす役割

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文科省の新目標「チーム学校」でカウンセラーが果たす役割

大切なのは「職務の明確化」

文部科学省が目指す新たな目標「チーム学校」。スクールカウンセラー・ソーシャルワーカーの増員と職務の明確化により、全公立校で 親・子・教師の相談を受けられる状態を目指す取り組みです。現代の学校現場は、不登校やいじめ、子どもの貧困にネット依存など、多岐で複雑な問題をはらんでいます。民間の立場ではありますが、同じく不登校やいじめ問題の子どもと関わる私として、この目標自体は大賛成です。

しかし、偉そうなことは言えないものの、懸念点は残ります。この計画では「カウンセラーの数を増加する」に注目が集まりますが、大切なのは「職務の明確化」が最大のポイントで、学校現場で問題が起こった際、カウンセラー任せの体制にならないかということです。

問題を解決していくのはカウンセラーではなく、悩みを持つ本人

これまで、多くの不登校児童生徒、いじめに悩む子どもたちのカウンセリングを行ってきましたが、私がカウンセリングの際に肝に命じているのは「カウンセラーは、あなたの悩みは解決できない」ということです。子どもたちにも、それをはっきりと伝えています。カウンセリングの基本は、相談者の話を「傾聴」し、「受容」「共感」しながら心のケアを行いつつ、本人自ら解決策を発見するサポートを行うものです。

カウンセラーは「心の専門家」だとし、何か特別な力を持っていて任せれば安心と思われますが、問題を解決していくのはカウンセラーではなく、悩みを持つ本人です。あくまでもカウンセラーは、その悩みに一緒に寄り添い、解決の糸口を自力で探せるよう導くことしかできません。

見守る親や関わる大人ら周囲が一体となって支えていくことも必要

もちろん、子ども本人だけではなく、見守る親や関わる大人ら周囲が一体となって支えていくことも必要です。特に、不登校やいじめなどの問題は漠然な本人だけの悩みや問題ではなく、いじめは「いじめられる側+いじめる側+学校(教師)+両方の親」が関わっています。不登校も同じく、「本人+家庭+学校(教師)+友達」が関係します。

そんな多くのものが絡み合う子どもの悩みに対し、単にカウンセラーの数を増やしても、解決は難しいと思われます。現に、私のカウンセリングでも学校と可能な限り連携して行う方が問題解決のスピードは加速します。

「教師や親に悩みを聞いてほしい」が子どもの本心

大切なのは、常日頃から学校と保護者がそれぞれ、「学校で起きた問題は、学校が解決すべきもの」「我が子のことは、親が責任を持って守る」との基本的な意識を忘れず、何か問題が起きたときには、カウンセラーやソーシャルワーカーが加わって解決に向けて歩みを共にすることです。

そして、子どもの本心は我々カウンセラーという存在よりも、これまでずっと側にいた教師、両親にこそ悩みを聞いてほしいと思っています。それに行き詰まった時、カウンセラーという存在が効果を表します。「チーム学校」は大賛成ですが、それぞれ発揮できる力を出し合い、未来の子どもたちの笑顔を一緒に守っていける体制構築が最優先ではないでしょうか。

(つだ つよし。/心理カウンセラー)

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