ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

就活終了求める「おわハラ」に潜む法的問題は?

DATE:
  • ガジェット通信を≫

内定・内々定者を囲い込む「おわハラ」が問題に

最近の就職活動では、内定者や内々定者などに対する「おわハラ(オワハラ)」と呼ばれる企業の嫌がらせが問題になっているそうです。「おわハラ」とは、「就活終われハラスメント」の略。つまり、「内定や内々定を出す条件として他社の内定辞退を迫る」「すでに内定、内々定を出した就活生に対して、他社の就職活動を終了するよう求める」「内定者らを物理的に拘束して、他社への就職活動を難しくさせる」といったことに対する言葉として、用いられています。

こうした企業による囲い込み行動は、バブル時代などから脈々と続いていますが、最近では景気回復による就活戦線の売り手市場化や、就活時期が後ろ倒しになり短期決戦になっていることなどから、一段と活発化しているようです。「おわハラ」の問題を考えるためには、そもそも内定や内々定が法的にどのようなものなのかを知る必要があります。

内定は、条件付きながら法的には歴とした労働契約

以前にも少し解説しましたが、一般的に「内定」といわれるものの多くは、実際の就労開始は後日であるなど、条件付きながら法的には、歴とした労働契約です。難しい言葉では、「始期付解約権留保付労働契約」と言います。

労働契約が成立している以上、企業として他社への就職活動をしないようお願いすることはある意味自然ですし、脅迫的態様でない限り、違法とは言えないでしょう。
ただし、そのお願いを無視して内定者が就職活動を継続したからといって内定を取り消せるかといえば、それは難しいと思います。最高裁の判例では、内定取消ができるのは「内定当時知ることができなかったような事実で、また客観的に合理的で、社会通念上相当な場合に限られる」とされています。

内定者には未だ就労義務は生じていない以上、他社への就職活動をしたからといって内定取消をすることは認められないと考えられます。別の裁判例ですが「内定後に行う入社前研修は業務命令としては行えず、あくまで内定者の任意の同意に基づき実施されるべき」と判示したものもあります。

企業側の自主ルールにより出される内々定は労働契約ではない

では、「内々定」の場合はどうでしょうか。内々定とは、簡単にいえば、内定日とされている日よりも前に企業側の自主ルールにより「内定を出しますよ」と就活生に対して行う約束のことです。これも企業が欲しい人材を囲い込むための制度です。

内々定の場合は、お互いの合意による(労働)契約ではなく単なる企業の囲い込み戦略に過ぎない以上、内々定がなされても学生側には何ら義務は生じないのが原則です。そのため、内々定を出した企業が、学生らに対してその後の就職活動を禁止する行為は、就活生の就職活動を不当に侵害するものとして場合によっては違法とされる可能性があると思いますので、企業側には注意が必要です。

内定辞退で企業に損害が生じた場合、損害賠償請求の可能性も

企業が内定を出す条件として、他の企業への内定辞退や就職活動の終了を求めることはどうでしょうか。企業も、内定を出すことによって労働契約が成立し、その後の内定取消は難しくなる以上、そのようなお願いをすること自体に違法性はないでしょう。しかし、内定者がそれを守らずに就職活動を続けたとしても、それを理由に内定取消をすることは許されないのは前述のとおりです。

他方で、内定者側も、内定をもらい条件付の労働契約が成立した以上、他社に就職するなどのために内定辞退をすれば、内定辞退そのものは認められますが、万一、それにより企業に損害が生じた場合には損害賠償を請求される立場になり得ることは、心に留めておく必要があります(ただし、通常は内定辞退により企業に損害が生じることは稀でしょう)。

(永野 海/弁護士)

関連記事リンク(外部サイト)

内定・内々定の辞退阻止、法的な問題点
「全員参加型社会」に向けて企業に求められる意識改革
ブラック企業対策法案、効果は期待できる?

カテゴリー : 政治・経済・社会 タグ :
JIJICOの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP