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「やりたいことを見つけた方が結局ハッピーエンド」 大手家電メーカーを飛び出した技術者たちの奮闘

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リーマンショックや新興国の発展などで事業縮小が相次いだ、日本の大手家電メーカー。「ものづくり」の技術者たちが行き場を失う事態も生まれている。しかし彼らの優れた技術には、別の製品を生み出す力が残されているようだ。

7月28日放送の「ガイアの夜明け」(テレビ東京)は、逆境にも負けず異分野へ活路を見出し、自らの技術力を生かして活躍する人たちの奮闘を追った。
富士通の半導体製造部長に「明日からレタス作って」

福島・会津若松市にある富士通の半導体大規模工場。入社28年目の宮部治泰さん(51歳)は、ある日突然工場長に呼ばれて、こう言い渡された。

「君は、半導体はもういい。明日からレタスを作りなさい」

富士通はリーマンショック後、半導体の大規模工場を縮小し、閉鎖した工場の一部を2013年4月から水耕栽培の野菜農場にした。半導体の製造部長だった宮部さんがリーダーとなり、元半導体技術者を中心に30人で畑違いの奮闘がはじまった。

クリーンルームを利用し、限りなく無菌の状態で栽培。洗う必要がなく、2週間もおいしさと鮮度を保つレタス「キレイヤサイ」の開発に成功した。ふつうより割高だが、「味が全然違う」と売れ行きは好調だ。

育成管理はコンピュータ制御で、液体肥料の与え方は半導体製造の技術が生かされていた。カリウム含有量を約80%も低下させ、腎臓を患う人でも生で食べられる特長もある。

大阪市に本社を構える1921年創業のサクラクレパスは、クーピーペンシルなどの人気商品はあるものの、少子化で市場が縮小傾向。新規事業を起こす必要があり、2年前から元大手の技術者を中心に中途採用を始めた。
妻も理解「これからが勝負なんですよね」

10人ほど採用した技術者の中には、三洋電機やシャープなど大手企業の出身者もいる。2年前にシャープから転職した技術者の采山(うねやま)和弘さん(49歳)は、京都大学で金属加工を専攻。シャープで半導体レーザーや太陽電池などの生産技術に携わってきた。

希望退職を決めたのはシャープの経営が悪化し、自分の望む研究が続けられない不安からだった。中学生と高校生の子ども、妻がいる采山さんは、転職当時の気持ちをこう明かした。

「定年まで、この状態で働き続けていられるか。やりたいことを見つけた方が結局ハッピーエンドになる」

妻の直子さんは、「年齢的にも厳しいなとは思ったが、引き止めてももっと悪い方に進むかもしれない。本人の意思に任せた方がいい。これからが勝負なんですよね」と語る。

温度で色が変わる絵の具などサクラクレパスの特殊インク技術をもとに、新商品を開発するのが采山さんの仕事だ。製品は一般ユーザー向けではなく、スマホやテレビ製造に使われるプラズマの加工技術に関わるものだ。

采山さんは「製造業を底上げするようなツールにしたい」と意欲を語った。現場でのテストのため他社工場に自ら赴くなど、シャープ時代にはなかったこともやる。「規模はシャープに比べたら小さいので、何から何まで自分たちでやらなきゃいけないのが逆に面白い」と明かす。
畑違いの会社で開発成功「今までになかったものを創る」

開発の進捗を本社幹部に報告するときにはプレッシャーだったようだが、采山さんはプラズマで色が変わる検査シールの開発に成功。名だたる製造業が集まり最新技術を披露する有明ビックサイトのイベントで製品を紹介すると、さっそく多くの企業が集まっていた。

ある工作機械のメーカーの社員は「(プラズマ検査は)今まで簡単にできるものがなかった。画期的」と感嘆していた。すでに数社に納入が決まっている。

「コストの面では今、国内でモノづくりは厳しいかもしれないが、そこは技術者が知恵を絞って付加価値をつけていく。今までになかったものを創る」

そう話す采山さんの言葉には、技術者のプライドと気概が溢れていた。彼らの仕事ぶりからは、高い技術力と研究者としての熱い思いが伝わってきた。

元大手家電メーカーの技術者を積極的に採用し、自社製品の開発に力を入れる会社は増えている。子ども用品専門店の西松屋では、元東芝の社員が自社ブランドのベビーカーを開発。アイリスオーヤマのノンフライ熱風オーブンの開発者は、パナソニック出身の技術者だ。

転職や新規事業にあたり、畑違いであっても技術と探究心にはブレがなく、やはりそれらを持っている人は強い。世の中の役に立つ仕事を自ら作り出せる技術者を、改めて尊いと感じた。(ライター:okei)

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