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TPPで著作権はどう変わる?(その2)~著作権侵害による非親告罪化、法定損害賠償の導入

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TPPで著作権はどう変わる?(その2)~著作権侵害による非親告罪化、法定損害賠償の導入

 前回に引き続きTPPの知的財産に関する交渉の内容をみていきましょう。

2 著作権侵害による非親告罪化

 わが国の現在の著作権法においては、著作権を侵害した場合の刑事罰について、その多くが、告訴がなければ公訴が提起できない、いわゆる親告罪となっています(著作権法119条等、123条1項)。

 なぜ現在の著作権法では親告罪となっているのでしょうか?
 著作権法上親告罪となっているのは、著作権・出版権又は著作隣接権に対する侵害、著作者人格権・実演家人格権に対する侵害などが挙げられます。著作隣接権とはあまりなじみのない言葉ですが、実演家(歌手など)や放送事業者など著作物を伝達する人に与えられる権利のことを指します。これらの権利はあくまでも個人の権利であって、侵害をされたときに刑事責任を追及するかどうかは、被害者である権利者の判断に委ねることが適当である、というのが親告罪になっている理由です。
 なお、現行法でも非親告罪となっているものもあり、著作者の死後の人格的利益の保護の侵害(法60条120条)、著作者名を偽る罪(法121条)などがそれにあたります。

 今回TPPの交渉において、非親告罪化が強く主張されていますが、非親告罪化されるということは、権利者の意思にかかわらず起訴をすることが可能になるということです。
 非親告罪化することのメリットとしては、非常に悪質な海賊版等に対して、迅速に対処することができるということが挙げられます。
 他方、非親告罪化することのデメリットとしては、パロディのような創作活動が制限される可能性が極めて高くなるということが挙げられます。現行法においては、パロディ化された作品の作者が黙認していれば罪にはなりません。しかし、非親告罪化すると権利者の意思にかかわらず罪として摘発することが可能性になってしまいますので、パロディ表現等をする人は怖がって活動を控えてしまうということになりかねません。これは創作活動に対する極めて重大な制限と言えるのではないでしょうか。

 なお、アメリカでは著作権侵害については非親告罪となっていますが、刑事罰の範囲を限定している上に、要件を満たした場合は著作権侵害にならないというフェアユース規定を設けています。日本が非親告罪化を受け入れるにしても、非親告罪化だけをそのまま受け入れるのではなく、刑事罰の範囲の限定や、フェアユース制度のようなものの導入を併せて検討し、創作活動を不必要に制限しないようにしなければならないと思われます。

 非親告罪化に対しては、漫画家や弁護士など多くの人が懸念を有しており、反対の意見を表明し、インターネット等を通じて非親告罪化について考える場所を提供するなど、積極的な活動が行われています。

3 法定損害賠償の導入

 もう一つ、今回のTPPの交渉では法定損害賠償の導入についても検討されています。
 法定損害賠償とは、法律で賠償金の額の算定方法を予め規定してしまうことをいいます。侵害の量を確定することが困難で侵害の量の証明ができない場合でも、法定損害賠償制度があれば、裁判所が損害賠償金を決定してくれるようになります。
 この制度の導入により、権利者が損害額を立証する必要がなくなり、訴訟を起こしやすくなる半面、損害賠償金が実損害額を超えて高額になる可能性があり、また知的財産を巡る訴訟が多くなることが考えられます。

 このように、今回のTPPの交渉においては、知的財産に関する極めて大きな問題について検討されています。今後の交渉の行方が非常に気になるところです。

元記事

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