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退職金一時払いのワナ 妻に離婚切り出され折半されることも

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 企業側が運用した退職金の受け取り方には大きく分けて、退職時に「一時払い」として一括で受け取る方法と、「年金」方式で分割して受け取る方法(いわゆる企業年金)の2つがある。多くの企業では退職者がどちらの受け取り方がいいかを選べるようになっている。

 では目の前に「一時払い」「年金」の選択肢がある時、どちらを選ぶのが得なのか。

 一時払いのメリットとして、年金方式に比べて手取り総額が大きいことが挙げられるが、それ以外にも、住宅ローンの前倒し返済など、定年退職直後のまとまった出費に対応できる点がある。

 しかし、それが時として落とし穴にもなる。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が語る。

「手取り総額が大きくなると知って一括でもらう人が増えているが、それを浪費してしまう人が多い。

 ある製薬会社の部長クラスの人は60歳で定年退職した時に企業年金の半分にあたる1250万円を一時払いで受け取りましたが、豪華海外旅行に費やして数年で使い切ってしまったそうです。

 すべて一時金で受け取っていたら間違いなく、それも使っていたでしょう。自分で計画的に取り崩していけない人には年金方式が望ましい。定期的に振り込んでもらい、“限られたお金を大切に使う”というかたちになりますから」

 また、ファイナンシャルプランナーの益山真一氏は「夫婦仲が悪い」場合も注意が必要だと語る。

「退職金を一括でもらったと同時に離婚を切り出され、妻に一時金の半分を持っていかれてしまうケースもあります」

 一度に多額の現金が手に入ると、それが離婚のきっかけになりやすいのだ。

 2007年には、離婚した際に妻が夫の年金の原則半分を受け取れる「離婚時の年金分割」が導入され、熟年離婚の引き金になるのではないかと話題になったが、この制度で対象になるのはあくまで結婚期間中に夫が支払った保険料に応じて受け取る年金(厚生年金の報酬比例部分)に限られる。企業年金は含まれないので離婚後の企業年金は基本的には「夫のもの」となる。

 さらに「制度が変わるリスク」にも注意を払う必要がある。前述のシミュレーションはあくまで現行制度に基づくもの。前出・山崎氏が指摘する。

「昨年、厚労省の社会保障審議会(企業年金部会)では、退職所得控除の縮小が議論されました。たとえば、現状は勤続43年なら2410万円、38年なら2060万円の控除枠を引き下げ、1500万円くらいから課税する可能性もある。年金方式に関係する公的年金等控除縮小の議論もあるが、一時払いのほうに先に網を張られるのではないか」

 社会保障分野において現役世代の負担増が取り沙汰される中、「高齢者が優遇されている」という批判を避けるために、サラリーマンの退職金が狙い撃ちされるというのだ。

 控除の縮小が実施されれば「一時払いで受け取っても、自分で投資して殖やさないと、年金方式に比べて損」(山崎氏)という状況が生まれる。投資が面倒、自信がないという人には年金方式の利点が大きくなる。

「第3の企業年金」制度創設も含め、最新の情報に注意しながら、慎重な判断が必要となる。

※週刊ポスト2015年8月7日号


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