Album Review:アダム・ランバート『オリジナル・ハイ』 失恋の痛みが全編から滲む普遍的なラヴ・ソング集

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Album Review:アダム・ランバート『オリジナル・ハイ』 失恋の痛みが全編から滲む普遍的なラヴ・ソング集

 前作『トレスパッシング』で全米1位を獲得したアダム・ランバートは、ワーナーに移籍して心機一転、3年ぶりのニュー・アルバム『オリジナル・ハイ』をリリースした。The Billboard 200では最高3位。失恋の痛みが全編から滲み出る、その重いテーマゆえにアダムの歌声の味わい深さが引き出された作品だ。

 前作ツアーに引き続いて、クイーン+アダム・ランバートとしての大掛かりなワールド・ツアーも成功させた(【SUMMER SONIC 2014】でのヘッドライナー出演も、サーヴィス精神旺盛なパフォーマンスで見事だった)アダム。華やかなディスコ・ポップやバラードを中心とした彼自身の表現スタイルと、唯一無二のロック・バンドであるクイーンとの活動を両立させたことは、冷静に考えてみると凄いことだ。フレディ・マーキュリー(クイーンのオリジナル・ヴォーカリスト)という不世出のシンガーの代役は並々ならぬ重圧と影響を及ぼしたはずだが、それでもアダムは、ソロ・アーティストとしてのアイデンティティとモチベーションを保ち続けて来た。

 新作『オリジナル・ハイ』は、フォーキーなギターのイントロに導かれて心の空隙を切々と歌い上げる先行シングル曲「Ghost Town」で幕を開ける。ガラージ/ダブステップのビートを用いて急展開する楽曲デザインは、歌のエモーションを増幅させるようだ。ダンス・ポップとしての以前からのスタイルを踏まえながら、新作の最重要ポイントはあくまでも、アダムの歌の感情表現にある。

 《僕の心はベルクロみたいに君に引っ掛かっているのに、触れることさえ出来ず一人ぼっちなんだ》と力強い押韻を絡めて歌い上げる「Underground」や、静謐なタッチで触れる者を引き込む美しいバラード「There I Said It」は、アルバム前半から重厚な手応えをもたらしている。また、「Things I Didn’t Say」から「Heavy Fire」へと至る怒濤の本編クライマックスは、心の平穏に手を伸ばすことなく、まさに身を焦がすような恋心に悶え苦しんでいて凄まじい。ゲイであることをカミングアウトして久しいアダムだが、徹底的に恋の痛みを歌う『オリジナル・ハイ』=あの頃の高揚感は、極めて普遍的なラヴ・ソング集と言えるだろう。なお「Lucy」には、クイーンのブライアン・メイが参加している。

 そう言えば、かつて「Shady」でナイル・ロジャースとタッグを組んだアダムは、その名コンビでアヴィーチーの「Lay Me Down」にも参加していた。アコースティックとエレクトロニックを高度なレヴェルで融合させた『オリジナル・ハイ』は、アヴィーチー作品と同じように、あらゆる手段を使って強い感情表現をもたらす最新型のポップ・ソング集でもある。日本盤は「Ghost Town」のリミックスが3曲追加された、全17曲収録。ぜひ触れてみて欲しい。

[Text:小池宏和]

◎リリース情報
『オリジナル・ハイ』
2015/07/01 RELEASE
WPCR-16617 2,457円(tax out.)

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