タワーマンション火災時にエレベーター避難できる防災計画とは?

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タワーマンション火災時にエレベーター避難できる防災計画とは?

タワーマンションはその高さ故に、独自の防災対策を準備しておく必要がある。非常用エレベーターを活用する、新しい防災計画を認定された物件が大阪に登場すると聞き、早速取材をしてきた。
分譲マンションで日本初採用! 非常用エレベーター利用の避難計画

火災や地震の際には高層建築物のエレベーターは自動的に避難階や最寄り階に停止し、避難には利用することができない。タワーマンションの高層階であっても避難には階段を利用することが大原則なのだ。しかし住民にはシニア層も増えており、階段を使って何十階も降りて避難することに不安を覚える人もいるだろう。そこで登場したのが今回の計画なのだ。

日本初、分譲マンションで非常用エレベーターを利用する防災対策を策定したタワーマンションは、大阪市の中心部・中之島地区に誕生する三菱地所レジデンスなどが手がける「ザ・パークハウス 中之島タワー」。55階建て・総戸数894戸の大型プロジェクトで、2017年秋の竣工を予定している。マンションの事業主である三菱地所レジデンス大阪支店 大阪・北摂事業部と設計・施工を担当する竹中工務店大阪本店設計部にお話をお聞きした。

「今回採用されたのは、火災時に高齢者や障がい者を始めとする歩行困難者等が安全に避難するための最新防災計画です。各階に設けた一時避難エリアへの『水平避難』と、非常用エレベーター利用を含めた『垂直避難』の構成となります。一定の基準を満たす場合に限り、消防隊到着までの間に管理スタッフなど自衛消防隊による非常用エレベーターを利用した避難誘導が可能となるのです。東京消防庁が2013年に発表した『高層建築物等における歩行困難者等に係る避難安全対策』に準じるもので、建築防災計画評定で防災評定委員会の承認を得て設計に盛り込むことができました。ハード面に加えて、避難誘導などのソフト面の計画も評価をいただいています」とのこと。

【画像1】水平避難経路のイメージ(出典:竹中工務店)

【画像1】水平避難経路のイメージ(出典:竹中工務店)

【画像2】垂直避難経路のイメージ(出典:竹中工務店)

【画像2】垂直避難経路のイメージ(出典:竹中工務店)そもそも、非常用エレベーターに課せられた役割とは?

筆者は地震時も含めた避難計画なのかと早合点していたのだが、どうやらそうではない。今回認定された避難計画のポイントを整理すると
 ・火災時を想定している
 ・歩行困難者を対象とする
 ・非常用エレベーターを活用する
 ・消防隊が到着するまでの避難計画である

ということになるだろう。このなかでも重要なカギを握るのが非常用エレベーターの存在だ。

タワーマンションやオフィスビルなど地上31m以上の高層建築物には、建築基準法によって非常用エレベーターの設置が義務づけられている。常用エレベーターとして平常時にも利用されているケースも多いが、探してみると定員などを記載したプレートに「非常用エレベーター」と赤い文字が書かれているはずだ。

ただし、火災時に利用できるのは消火・救出活動にあたる消防隊員のみで、住民の避難などは想定されていない。はしご車も届かないような高層階へ消防隊が迅速に展開するための防災設備であり、非常用電源の確保や難燃性設計など厳しい基準をクリアしたものが非常用エレベーターなのだ。

今回の計画は、一定の基準をクリアすることで歩行困難者等の避難に非常用エレベーターの活用を可能とし、歩行困難者等の早期避難を実現させることを目指す、“避難のバリアフリー化”とも呼べそうな計画だ。住居内や公共スペースのバリアフリー対策はかなり進んできたが、緊急時の避難計画においてはまだまだ十分ではない。その隙間をカバーするための方策のひとつだといえるだろう。もしも、高層階で火災が起きたらどうなるのか…シミュレーション

避難のバリアフリー化が進むとどう変わるのか、シミュレーションをしてみよう。
例えば、足の悪いおばあちゃんが暮らす50階で火災報知器が鳴ったとしたら…

「うつらうつらとお昼寝していたら、けたたましい非常ベルの音と避難を促すアナウンス、火事なの!? 逃げたいけど家族は外出中。ああ、どうしよう、早く外に出ないと…。
 
杖を使ってなんとかエレベーターまではたどり着いたけど、エレベーターは停止中。誰かが『階段から避難するのよ』って叫んでいる。でも膝が痛くて階段を降りるのは無理、どうしたらいいの!?

そこへ非常用エレベーターが到着して、マンション管理人さんが救助に駆けつけてくれた。自衛消防隊の一員とのこと、助かったわ、ありがとう! 非常用エレベーターで1階まで降りるとちょうど消防車も到着、消防隊員の人たちが入れ替わるように非常用エレベーターで50階まで向かっていった…」

というシーンが想定される。

もし、避難のバリアフリー化がなければ、歩行困難者等は消防隊が非常用エレベーターを利用して到着するまでは、家族や同じフロアの住人が背負って階段を避難するなどの行動が必要になるだろう。

高層建築物は何重もの防火対策がほどこされているが、シニア層や障がい者の方の安全を確保するための「避難のバリアフリー化」は、今後大切な視点になっていくだろう。

タワーマンションに住んでいる方、これから購入を考える方は「防災避難計画」についてもしっかり学んでおくことをおすすめする。また、火災報知機やスプリンクラー設備を確認し、消火設備の点検、避難訓練への参加も怠らないようにしたいものだ。●取材協力
ザ・パークハウス 中之島タワー
プレスリリース
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/07/27/94448/

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