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小説では味わえない村上春樹の”素顔”が垣間見れる一冊

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 2015年1月15日〜5月13日まで村上春樹さんへの質問・相談を受け付けていた期間限定サイト「村上さんのところ」。期間中、世界中から寄せられたメールは、3万7465通にも及び、そのうち3716通に村上さんは返答しました。

 本書『村上さんのところ』は、そこから選ばれた473通のやりとりを収録。予想を遥かに超えたメールの数に、村上さん自身、楽しい反面、「正直言って疲れました。肩は凝るし、目は痛くなるし、三ヶ月、他にまったく仕事はできないし、これは参ったなあと思ったけど、まあいったん始めたことなのでしっかりやり通しました。まるで降っても降っても降り止まぬ大雪を、一人でシャベルを持って雪かきしているみたい」だったと振り返ります。

 メールは世界中、老若男女から寄せられ、その内容も、文学はもちろん映画や食べ物、ヤクルトスワローズや猫についての質問といったものから、人生や進路、恋愛や夫婦関係に関する悩みまで実にさまざま。

 なかでも村上さんは音楽にも造詣が深いとあり、音楽関連の質問は多々寄せられたようです。たとえば、音楽を聴く際、シチュエーションに応じて聴く媒体は変えているのか、という40歳の女性からの質問。これに対し、村上さんは次のように答えています。

「アナログとCDは使い分けています。仕事をするときは、どちらかといえばアナログを聴くことが多いですね。CDよりもLPの方が、なんとなく気持ちが穏やかになるので。前の夜に『明日はこれを聴こう』と五、六枚のレコードを用意しておいて、朝起きるとそれを順番に聴いていきます。朝はだいたいクラシック音楽を中心に聴きます」

 またiPodを利用する際も、ジョギング用、ドライブ用と、それぞれ用途応じてiPodを分けているという村上さん。ジョギング時には何を聴いていることが多いのかという質問には、次のように答えています。

「ジョギング用にはアメリカン・ロックが多いです。やはりシンプルでノリの良いものが向いていますから。
僕はトリビュート・アルバムから抜粋してiPodに入れることが多いです。(中略)あとはサントラもの。サントラものって、よく観るとレアなトラックがあって、けっこう面白いですよ。アメリカの場合、一枚1ドルか2ドルで中古屋で買ってきて、そこから抜粋します。中古のサントラCDってとにかく安いですから。だから僕のiPodってけっこう変なものがいっぱい入ってます」

 そして、こうした音楽は、文章を書く際においても何か影響を与えているのではないかという35歳男性からの質問には、「僕の文章にとって、音楽の影響はとても大きい」と応じます。

「文章を読み返しながら、リズムや響きや流れみたいなものをいつも頭の中で点検しています。声に出して読んでみることもたまにあります。文章の書き方について、僕は多くのことを音楽から学んだかもしれません」

 ひとつひとつの質問に、真摯に、ときにユーモアを交えながら答える村上さん。小説とはまた異なった魅力を感じることができるはずです。

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