【インタビュー】地方議会の在り方とは?-佐々木信夫(中央大学教授)に聞いてみた<第二弾>

佐々木信夫(中央大学教授)へのインタビュー第二弾になります。今回は、「地方議会の在り方」をテーマにお話頂きました。
※第一弾はこちら。
【インタビュー】大阪都構想の否決は日本全国のマイナス―佐々木信夫(中央大学教授)に聞いてみた。<第一弾>
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――春の統一地方選、住民投票なども踏まえて、地方議会の在り方、地方創生の在り方、参画されていらっしゃる地方制度調査会でも議論されるかと思いますが、どんな課題があり、どう進めていったらよいでしょうか?
■ 今春の統一地方選挙の特徴は、「議員の成り手の無さ」の顕在化
今春の第19回統一地方選挙の結果を見ますと、地方議会は非常に重要だと言われていることと、逆の動きが表面化しています。例えば、21,2%無投票の当選者が出ています。5人に1人が選挙の洗礼を事実上受けないまま議員になっています。私はこれを「仮面を被った代表者」と読んでいます。無競争当選が2割を占めた、あるいは町村長選挙ですと4割を越える無競争当選者がいます。無競争当選者が増え、議員のなり手が無い、こういう状況が顕在化したのが今回の統一地方選挙の一つの特徴でありました。
もう一つ、住民に責任が無いかと言えば、投票率が極端に下がりました。45%くらいですね。戦後民主主義が始まった昭和20年代ですと、女性の政治参加が始まった影響もあるでしょうが、投票率が85%、90%くらいです。それが、現在は殆どの人が投票に行かなくなってしまいました。奇しくも戦後70年、今度は有権者も18歳まで拡大するという法律改正が行われましたけれど、果たしてこれによって地方選挙、地方議会が活性化していくかというと、今の状況ですと期待できるものではありません。
■ 地方議会は意思決定機関となったにも関わらず・・・
ただ、2000年の地方分権改革が始まって以降という意味で申し上げると、それ以前と違いまして、地方議会は単なるチェック機関と違い、知事市町村長が担っている業務をチェックするという機関ではなくなりましたので、まさにそれぞれの地域の公共の意志決定を議会がやるという、それには国からの法定受託事務が2割くらい入りますが、それも含めて意思決定をするようになりました。条例を制定することも予算の減額修正ももちろん審議を否定・可決することも出来るようになりました。
そういう意味では、10万人都市なら10万人都市ならではの意思決定者が30人なら30人の議員の双肩にかかるようになりました。
こういう状況の中で、議会の在り方をどうするか。まず、議長に議会の招集権が無いからそれを与えるべきでしょう。あるいは、議会の会期制度がなくなっていますけれど、また整備出来ますので、年4回やっておけば良いのだという感覚はちょっとリセットして頂いてほしい。
また、通年議会にする必要は無いとは思いますが、例えば、毎月第一週は議会の週だということにして、その他色々業務ありますでしょうが、年間に12×5日間、本会議や委員会は開催したら良い。
60年近く法律で、「議員の定数」、「会期」について決めてきたところを全てフリーにしましょうとしたので、「そもそも議会はどれくらい開かれるのが望ましいのか?」あるいは、「人口規模にあった議員数というわけではなく、議員の数はどれくらいにすべきか?」また、「報酬はどれくらいにすべきか?」を議会で決めなければいけない時に来ています。
ですが、その前提として議員になれる人たちが、この戦後70年、非常に固定化されていまして、自営業者か退職者、概ね普通にサラリーマンとして働いている人たちは日本の地方議会では議員になれない仕組みになっています。もちろんそれは、辞職をして立候補すればよいという話なのですが、余りにもリスクが大きい。今の安定した守りの社会の中でそういう職を投げ打って立候補してくる勇気のある方々は余りいません。