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江守徹 ナレーションは理解してないと届けることができない

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 俳優の江守徹は、ナレーションの名手としても知られている。ナレーションについて江守が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

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 江守徹といえば、ドキュメント番組やテレビCMなどナレーションの名手としても知られている。個人的にはテレビ時代劇シリーズ『斬り抜ける』のものが絶品だと思っているが、その透明感のある声となんともいえない優しい情感が、特有の説得力を映像にもたらしている。

「その番組を深く知ってもらうために説明する役どころだから、ナレーションは非常に重要だと思います。特にドキュメンタリーではそうですね。

 こちらとしては、ちょうどいい具合にやりたい。そのためには、自分のナレーションがどういう風に聞こえているかということが自分の耳にも聞こえてこないとまずい。自分で言いながら、その時に視聴者の感覚として聞こえてきたら上手くいっていると思う。

 そのためには、よくフィルムの内容を理解していないとダメですよね。ドラマでもそう。そのドラマの内容をよく知っているということが大事じゃないのかな。ナレーションというのは視聴者のためについているわけだけど、理解しないと届けることはできないですよね。

 声に関しては、この声しか持ち合わせてないから。それを変に変えたりすると不自然になるから、変えるとしても、あくまで言い方だけですね。その時に、どういう気分になって読むか。でも、悲しいドラマだからって悲しいナレーションしたら、おかしいから」

 1981年の文学座公演『ハムレット』では主演に加えて自ら演出もしている。

「その作品をどう表現するかは最終的には演出家の裁量にかかっているから、出演者は自分の役以外には何もできない。だから、いつか演出もしてみたいという欲望はありました。

『ハムレット』の時は美術も音楽も全て自分の裁量になるから大変でしたが、その分やりがいはありましたよ。演技指導に関しては、その場面そのシーンの感情を相手の俳優が理解しているかを知りたくて、理解してないと思ったら説明をします。

 全体を見るということは俳優としても役に立つと思いました。自分の役だけじゃなくて、その芝居自体がどういう芝居かを理解するようになりましたから」

 入団から50年以上、江守は文学座に所属し続け、脳梗塞を患った後も演劇の最前線に立ち続けている。

「文学座のいいところは、いろいろな演目ができることです。アングラ劇団になるとテーマは狭まっちゃうからね。

 こういう劇団はずっと続いてほしい。俳優には場がないと生きていけなくなる。五十年以上やってきてるから、やっぱり愛着はありますよ。

 若い頃は役者を続けていく不安はありました。でも、何とかやってやろうという野心があったから続けられたと思います。

 病気に関しては、それで何かが変わったということは全くない。今は具合は悪くないからね。再発したらもう終わりだと思います。でも、こっちは変わりませんよ。それが起こるかもしれないという不安な状態で、どうやって演技するんです」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

※週刊ポスト2015年7月31日号


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