直径20mのガスタンクがまっぷたつ!恐るべき水の力

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直径20mのガスタンクがまっぷたつ!恐るべき水の力

 水には時に硬い石の形を変えてしまうほどの力があります。
 信じられない話ですが、水を高圧力で噴射することで厚さ4cmの鉄板も切ることができるのだとか。この圧力は、ピンヒールの靴を履いた4トンのゾウに勢いをつけて踏まれるのと同じくらいだといいますから恐ろしいですよね。

 「水の力」を利用して物を切ったり、加工したりするのが「ウォータージェット工法」と呼ばれる技術。この分野で日本屈指の技術を持つ日進機工株式会社の代表取締役社長、林伸一さんによると、こんなことまで「水」によって行われているそうです。

■震災被災地で活躍した「切る」技術
 まだまだ記憶も鮮明な東日本大震災。この震災では津波によって甚大な被害がもたらされましたが、その陰で石油コンビナートの大火災があったことを覚えていますか?
 特に大きく報じられたのが、千葉県にある石油コンビナート火災で、球形のガスタンクが炎に包まれている映像はかなりショッキングでした。完全に鎮火するまで10日を要したこの火災ですが、事後調査にあたってガスタンクの切断が必要となり、その作業に日進機工のウォータージェットの技術が使われたといいます。
 というのも、石油コンビナートのガスタンクですから火気厳禁です。摩擦で火花が散るノコギリでの切断も、鉄を切る時に広く使われているガスでの切断も、引火の危険があり不向きです。だからこそ「水」が選ばれたわけですが、直径20mの金属製の巨大ガスタンクを水の力で上下半分に切り分けたというのは驚きです。

■洗浄力と繊細さが両立する「洗う」技術
 もちろん、水ですから「洗う」のも得意とするところです。
 例えば工場の配管には、業務内容によってさまざまな付着物がこびりつきます。これをそのままにしてしまうと、運転効率が悪くなったり、設備の異常につながったりするため、定期的に内部を磨きあげないといけません。
 高温で溶けた鉄の成分であったり、霧のように飛散した塗料であったりと、工場の配管汚れは一筋縄ではいかないばかりか、力加減を間違えると配管自体を損傷してしまいます。
 しっかり汚れを落としつつ、配管を壊さないためには、水の圧力や噴射方式の調整力に加えて、作業員の高い技術も必要なのです。

■「砕く」「削る」も水で
 これだけの力があれば、コンクリートを砕いたり削ったり、穴を空けたりといったことも可能です。
 そのような進化により、ウォータージェットは建築分野で注目を集めるようになっています。水を使えば、コンクリートの建造物の問題のある一部分だけを削り取ることができるため、工事が小規模で済むのです。この技術は塩害対策の工事や橋梁の修復工事などで非常に重宝され、欠かせない技術になっています。

 林さんの著書、『鋼の水―――ウォータージェット工法のパイオニア、50年の歩み』(ダイヤモンド社/刊)を読むと、ウォータージェットがただ高圧の水によって切ったり削ったりするだけでなく、長年の研究に裏打ちされた非常に繊細な技術の上に成り立っていることがわかります。
 「こんな技術があったんだ!」という驚きのほか、その技術を可能にした日進機工の企業としての取り組みと姿勢にも大いに共感できるはずです。
(新刊JP編集部)


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