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「この人は本物だ、と感じた」映画『ルンタ』池谷薫監督インタビュー

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筆者撮影

こんにちは。TRiPORTライターの赤崎えいかです。
非暴力の闘いを続けるチベット人の心を描いたドキュメンタリー映画『ルンタ』が、7/18(土)に公開されました。前半のインタビューでは池谷薫監督が実際にチベットへ行き、チベット人が大切にしているものを撮影されたお話について伺いました。後半では映画の水先案内人を務める中原一博さんについてお伺いします。

ー池谷監督から見て中原一博さんはどんな人ですか?
一言でいえば、愛が大きい人ですね。ダラムサラを拠点に長年、故郷を失ったチベット人を支援するNGO「ルンタプロジェクト」の代表として精力的に活動されてきました。2008年からは「チベットNOW@ルンタ」というサイトを立ち上げ、ブロガーとしてもチベット人の非暴力の闘いを発信し続けています。建築家、NGO代表、ブロガーと多彩な顔を持つ中原さんですが、実は仏教を熱心に勉強された方でもあるんですよ。その熱が高じて一時は僧侶になろうとしたこともあったとか。ダライ・ラマに相談したところ「家族もいるのだからやめろ」と言われたそうです。そのかわり俗人でも学べる僧院を紹介されて、そこで6年間も学びました。
撮影中、中原さんが急に涙ぐむことが何度かあったのですが、それも仏教を学んだことに関係しているようなんです。チベット仏教の中には、“トンレン”といって他人の苦しみを一瞬のうちに自分の体に取り込む行(ぎょう)があるんだそうですが、焼身者などの苦しみを自分の苦しみとして受けとめようとするのでしょうね。そんなとき中原さんは胸を詰まらせてるんです。『ルンタ』の撮影で1年半彼と付き合いましたが、何度かそういう場面に遭遇する度に、「ああ、この人は本物だ」と思いました。

そうそう、寂しがり屋の一面もあるんですよ。いかつい顔をしていますが、人を喜ばせることが大好きで、とてもチャーミングな人なんです。話し出したら止まらないところもあるし。なんと言っても、チベットのために30年も自分の人生を捧げた人ですからね。こんな日本人がいることを一人でも多くの人に知ってほしいと思います。僕がそうだったように、きっと誇らしい気分になると思いますよ。

映画『ルンタ』より

ー日本人にチベット問題を身近な問題と捉えてもらうにはどうしたらいいと思いますか?
ルンタ』は焼身抗議をテーマの入り口に置いていますが、それだけを描いた映画ではありません。僕が本当に描きたかったのは、自分をひどい目にあわせた中国でさえも許そうとする、チベット人の「利他」や「慈悲」といった他者を思いやる心なんです。
いま世界は暴力と報復の連鎖に苦しみ、その解決の糸口さえ見出せていません。日本でもそうですね。10代の殺人事件が多発したり、いじめの問題など、身近なところに暴力が溢れています。そういうときだからこそ、徹底した非暴力の姿勢を貫くチベット人の気高い生き方に触れてほしいんです。自分の利益のために他者を排除しようという風潮がはびこるいま、チベット人の思想に何か問題を解決する重要なヒントが隠されているように僕には思えてなりません。日本の若者たちには、チベット問題を他人事として捉えるのではなく、同じ地球上に住む同世代の人たちに起きていることとして受けとめてほしいですね。そのためには、まずチベットで今何が起きているか知るところから始めてほしいと願っています。

映画『ルンタ』より

中原さんは言います。焼身者一人ひとりの人生に思いを馳せなければ、焼身という行為を理解することはできないと。どういうところで生まれ育ち、何を考え、何を守ろうとして火に包まれて行ったのか。中原さんと僕はそんな思いでチベットを旅しました。チベット問題に全く関心のない人たちや知らない人たちには『ルンタ』を人間の物語として観てほしいです。そんな中から「チベットのために何かしよう」「アクションを起こそう」という人が出てきてくれたら嬉しいですね。映画に政治や社会を変える力があるかどうかわかりませんが、世の中をもっとよくしようと思っている人を勇気づけることはできると信じていますから。

7月18日(土)渋谷シアター・イメージフォーラムにて公開 他全国順次公開
池谷薫監督『ルンタ』公式サイトはこちら

「チベット人の心をもっと知ってほしい。」映画『ルンタ』池谷薫監督インタビュー

(インタビュー・構成:赤崎えいか

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