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冲方丁が自作小説で声優デビュー!?――オーディオブック版『天地明察』爆笑対談(後編)

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 江戸時代初期の囲碁棋士であり、天文暦学者・渋川春海の半生を描いた冲方丁さんの長編小説『天地明察』(角川書店/刊、2009年刊行)は、第31回吉川英治文学新人賞をはじめ、第7回本屋大賞、2011大学読書人大賞、第7回北東文芸賞、第4回舟橋聖一文学賞とさまざまな文学賞に選出され、その後映画化もなされるなど、大きな注目を集めた。

 そして2015年、本作が豪華キャスティングによりオーディオブックとなって帰ってきた
 渋川春海役を『FAIRY TAIL』ガジル役などで知られる羽多野渉さん、えん役を『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』平塚静役などで活躍中の柚木涼香さんが演じる。さらに、裏情報では作者の冲方さんも声優として登場しているとか…。
 今回、新刊JPでは『天地明察』オーディオブック版について、作者の冲方丁さんと主演の羽多野渉さんの対談を企画! 「渋川春海」「ライバル」「オーディオブック」「これから挑戦したいこと」という4つのテーマでお話をうかがった! 後編となる今回は「オーディオブック」「これから挑戦したいこと」について語ってもらっている。
(司会・構成:金井元貴)

前編:冲方丁「書店にある本は全部商売敵」!?はこちら

○オーディオブックについて――「まさに新しいメディアになっている」(冲方)

司会:ここからは「オーディオブック」というテーマでお話をうかがいたく思います。これまでご自身の作品でさまざまなメディアミックスを展開されてきましたが、冲方先生はこの「オーディオブック」に対してどのような印象をお持ちですか? また、このオーディオブック版『天地明察』に声優としてご出演されていますが、そちらについてもご感想をお願いします。

冲方:声優って、そんなたいそうなもんじゃないです(笑)!

羽多野:いやいや、業界騒然ですよ(笑)!

冲方:誰にも言っていませんから。ちらっと、知り合いの音響監督にコツを聞いたのですが、(何をやるのか)聞き返されそうになったのでシラを切りました(笑)。今日この対談の前に収録をしたのですが、胃が痛かったですよ(笑)。
でも、オーディオブックって実は物語を伝える文化としては小説よりも古いんです。琵琶法師の時代から講談形で親しまれてきました。書いて読むということが当たり前になったのはここ100年くらいの話で、もともとは耳で聞くということが基本だったんです。そういう意味では、テクノロジーを使って音声を収録し、ダウンロードで分配できるというオーディオブックは、本来の形をそのまま進めたものかもしれません。
音声にすることで聴きやすいように言葉遣いも変わる。そういう風にして書き言葉と話し言葉の違いがうまく回転していくと、日本語自体が洗練されていくのかなと感じました。だから、この作品は若い方に聞いて欲しいと思いましたね。

羽多野:収録中は頭の中で(物語の)絵が作りにくかったところがあったのですが、アナウンサーの方が読まれた地の文の音声を聞かせていただいたときに、すごく温かみがあって、立体的な感じがしたんです。声優は感情を込めて読むことが多いですけれど、アナウンサーさんはそこに書かれている事実を淡々と語ります。それが対比になっているのが新鮮でした。また、音楽もつけていただいているので、音声だけなのに奥行きがある世界を味わえると思いましたね。

冲方:まさに新しいメディアになっていますよね。音声でこんなに手間をかける作品はなかなかないですよ(笑)

羽多野:声優陣も本当にそうそうたるメンバーが揃っています。高齢の登場人物が多いので、僕が所属している声優事務所(81プロデュース)の大ベテランの先輩方が楽しそうに演じていらっしゃるんです(笑)。水戸光圀であったり、保科正之であったり、皆さん生き生きと演じていらっしゃっていて、先輩方に背中を強く押していただいているような感じで春海を演じることができました。

冲方:そう考えると、羽多野さんは完全に春海と同じ立場にいるんだ。

羽多野:そうなんですよ(笑)! 道策は事務所の今もう急上昇中の若手が演じていますし、関は尊敬してやまない先輩が演じていらっしゃいます。収録前からどんな感じになるのか想像していましたけど、それを上回るものがありましたね。

冲方:朗読でそんな座組み考えないですよね。まさに別媒体ですよ、これは。

羽多野:春海が失敗を重ねたり、出会いや別れを経験したりしていきながら、成長をしていくという姿がこの約17時間の中で表現できていれば幸せですね。

冲方:17時間って長いように思えますけれど、おそらく一般的な人が2冊文庫本読むペースくらいだと思うんですね。1日1時間ちょっと聞けば2週間ですからね。

司会:今回、冲方先生はどのような役で登場されているんですか?

羽多野:春海の義兄の安井算知ですね。

冲方:台詞が3つくらいだと思っていたら、意外に多くて。さらに役者さんの音声を聞いて、「これは絶対無理、こんなんできるわけないだろ」って怯えていましたよ。

羽多野:いやいや、読者からしたら創造主が降臨されたわけですから(笑)

冲方:しないほうが良かったですよね?(笑)

羽多野:算知さんと春海が話すところってすごくいいシーンなんですよ。

○今後挑戦してみたいこと――「自分に限界をもうけずにやっていきたい」(羽多野)

司会:では、最後のテーマですが、「今後挑戦してみたいこと」をお願いします。

羽多野:僕は役者なので、仕事を受ければ何でも挑戦したいと思いますし、また表現者の一人として自分の限界をもうけずにいろいろなことをやっていきたいですね。そういう意味では今回も新たな挑戦をさせてもらいましたね。でも、今回本当に驚いたのは台本の厚さでした。700ページくらいあるので(笑)

冲方:そんな分厚い台本、なかなか聞いたことないですよ(笑)

羽多野:春海役はすごく面白かったです。冲方先生は今回声優デビューを飾ったので、次は俳優デビューを!

冲方:そんなことしたら大問題ですよ(笑)!だんだん本職が分からなくなってきたところもありますが、本職でやらないといけないことはたくさんありますからね。今は時代物、現代物、SF物をちゃんと並行してできるようにしています。もっと経験を積み重ねないといけないなと思っていますよ。

司会:今回のオーディオブック版『天地明察』の聴きどころをお聞かせ下さい。

羽多野:まさに約17時間すべて!…と言いたいです。もしかしたら原作よりもややコミカルなところがあるかもしれませんが(笑)オーディオブックという一つのメディアをすみずみまで楽しんでいただけると思っています。

冲方:小説で出そうとしても限界がある部分を、演技力に引き出してもらいました。17時間、どこから聴いても引き込まれると思いますし、いろんな役者さんから叱咤激励される“羽多野春海”を楽しんでいただければ嬉しいですね。

羽多野:喜びに、恋に、挫折に、いろいろやってますから(笑)。恋愛のシーンでも散々怒られっぱなしですよ。でも、楽しくコミカルに演じさせていただきました。
登場人物の個性とか、読んでいても楽しく想像できるところが音声表現を重ねるとどうなるのか挑戦させてもらったので、ぜひ聴いてほしいですね。

冲方:売れてほしいです。ぜひ、お願いします。

(了)

▶オーディオブック「天地明察」特設ページはこちらから!
http://www.febe.jp/documents/special/tenchi-meisatsu/
*3名様にメインキャスト、ナレーション、著者のサイン色紙をプレゼント!(7月末日まで)

■冲方丁
1977年岐阜県生まれ。
1996年『黒い季節』でスニーカー大賞金賞を受賞し、デビュー。2003年『マルドゥック・スクランブル』で第24回日本SF大賞を受賞。2009年に刊行した初の歴史小説『天地明察』で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、2011大学読書人大賞、第7回北東文芸賞、第4回舟橋聖一文学賞を受賞。12年『光圀伝』で第3回山田風太郎賞を受賞。

■羽多野渉
3月13日生まれ。長野県出身。
出演作品 TVアニメ『FAIRY TAIL』ガジル役、『しろくまカフェ』半田さん役、『HUNTER×HUNTER』シャウアプフ 役、『ダイヤのA』増子透役等。声優として、精力的に活動を続けており、2008年には、第二回声優アワード新人男優賞も受賞している。
2011年12月21日リリースの「はじまりの日に」で、音楽活動も開始。その後2ndシングル「流星飛行」、自身の31歳の誕生日には3rdシングル「君はぼくが帰る場所」をリリース。4thシングル「Hikari」は、2014年1月より放送されたアニメ「ハマトラ THE ANIMATION」のエンディングテーマ となった。同作では、声優として主人公・ナイスの相棒・ムラサキ役も務めている。
2014年10月22日には1stアルバム 「W」の発売、年明けには1stライブツアーを予定しており、音楽活動にもますます力を入れている。
(公式ホームページより)


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