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メキシコ、その明るさの裏にあるもの。小谷忠典映画監督インタビュー

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こんにちは。TRiPORTライター、旅と写真でできている赤崎えいかです。
前半のインタビューでは、小谷忠典監督作品、映画『フリーダ・カーロの遺品—石内都、織るように』の内容や壮絶な人生を歩んだメキシコの女性画家フリーダ・カーロについてお伺いしました。後半では映画撮影のためにメキシコを旅した話や、メキシコの文化についてインタビューしてみました。

ーメキシコに行ってどのような印象を持ちましたか?
最初に行ったときから感じていたのは、こんなに統一感のない変な街は他に知らないなという印象を持ちました。そんな中でもメキシコのアイデンティティ、例えば刺繍や死者の祭りが残っているんですね。おそらくそれらは、他国が制圧してきたり入ってきたときに拒絶していたら、逆に守れなかったと思うんです。メキシコの人たちは受け入れる文化だからこそ自分たちのアイデンティティを残すことができたのではと思いました。

ー今回、メキシコ各地をまわった目的を教えてください。
写真家の石内都さん(以下、石内さん)と共にメキシコに行き、撮影の行程を見ていくなかで、石内さんはフリーダだけではなく、遺品の色彩や刺繍の模様からフリーダを越えて、メキシコの文化や歴史、記憶などを含んだ深い表現をしていました。それを僕も映画として目に見える形で表現にしたいという想いがあり、1年後に再びメキシコの記憶を知るために死者の日であったり、刺繍職人を訪ねに行きました。

ーそれによって、フリーダのことをより理解できたところはありましたか?
僕は「どうして彼女は晩年に至るまでテワナドレスをここまで好んで着ていたのか?」というひとつの疑問を持っていました。フリーダの夫で、当時世界的にも有名だった同じ画家でもあるディエゴ・リベラがそういったトラディショナルなものを好んでいたから着ていた、着せられていた、という理解をしている人もいるのですが、実際に遺品を見ると、丁寧で細かい修繕や、リメイクが見られ、執着心みたいなものを感じます。着せられていただけではなく、彼女は自分のアイデンティティとして着ていたんだなと。
また、長い間を経て受け継がれてきた刺繍の民族衣装をフリーダがボロボロの身体にまとうことによって、痛みから少しでも守られていたのではないかという印象も受けましたね。

ー刺繍が施されたテワナドレス一着作るのにどれぐらいの期間がかかるんでしょうか?
長いもので3年ほどかかり、なかには何百万円とするものもあるようです。ミシンで作られた数万円のものもあるようですが、やはり手縫いの花が全面に施されているものはそれぐらいみたいですよ。また、テワナドレスは代々受け継がれていくものだそうです。映画の中でダンサーが着て踊っている衣装は90年近く前に作られた1920年代のものです。つまり、フリーダが実際に着ていた時代と同じ時代のものになりますね。

ーメキシコというと死者の日が有名ですね。映画の中でも撮影されていますが、実際に見られた印象はどうでしたか?
まずびっくりしましたね。町中ガイコツだらけで騒ぎ立てていておかしなことになっている。日本人からすると、なんかこうやっちゃいけないことをやっているような、トンカチで頭を殴られたような光景でした。陽気で楽しく騒いでいるんですけど、彼らの裏には痛みとか苦しみみたいなものがあって、だからこそ明るさがあるように感じましたね。

ー興味深いですね。彼らの苦しみとはどのようなものだと思われますか?
メキシコはずっと制圧の歴史を持っています。この感じはどこかで経験したことあるな、と思って考えてみたら、撮影で沖縄に行ったときのことを思い出しました。沖縄の人は本土と違う明るさと陽気さを持っているんですけど、でもその裏には沖縄も制圧の歴史を持ってます。悲しい歴史を笑い飛ばす明るさと、メキシコの死者の祭りは自分の中でどこか共通点がありましたね。

ーメキシコ人にとって死は悲しいものではないのでしょうか?
いや、本来、悲しくてつらいものだと思うのですが、それもエンターテイメントにしてしまう強さや、そうしないとやりすごせなかった歴史があるのではと思いましたね。

ー今でこそカトリック大国のメキシコですが、メキシコはもともとどのような宗教だったのでしょうか?
もとは様々なものに神が宿っているという感じだったようですが、そこから様々なもの入り込み、今はごちゃまぜになってイベント化されているお祭りがたくさんあります。「お墓に行く」というのが昔からあるメキシコの死者の日のスタイルだと思います。

ーメキシコ人にとってのお祭りはどのようなものでしょうか?
メキシコ人がよく言う「毎日がお祭り」という言葉通り、結婚式や誕生日などのイベントがあれば大々的に祝うのが習慣です。お祭りやイベントがあるからこそ生きていけるというか、逆に言うと、経済的にも豊かな国ではないですし、日々苦しい生活を強いられている中で、イベントがあるからこそ生きていけるのではないかと感じましたね。
常に死と隣り合わせだった歴史がある分、メキシコに行って不思議だったのが、死んでる人と生きている人の差があまり感じられないというか、僕の祖母は、亡くなった先祖に「今日こんなことがあったよ」って普通に話しかけるような人なんですけど、それとメキシコ人は似ていて、死者の日にお墓に行ったときも、まるでまだ生きている人に話しかけているように接していて、生と死の境目がよく分からないような感覚がありましたね。

ー死と再生をテーマとしている監督ですが、死生観は国によって違いますよね。今後行ってみたい国などはありますか?
映画やってると映画祭などで色んな国に行く機会が多いんですけど、メキシコは本当に今まで行った国の中で一番魅力的で「どこでも行っていいよ」と言われたら、またメキシコに行きたいと思っています。過去も現在も多くの芸術家がメキシコを好んだ理由を自分も物作りの端くれとしてもっと知りたいと思っています。

■映画『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』公式サイトはこちら
2015年8月8日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開

映画『フリーダ・カーロの遺品−石内都、織るように』明かされる新たなフリーダの一面

ライター:赤崎えいか
写真提供:サニー映画宣伝事務所

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*Eika Akasaki「【メキシコシティ】フリーダ・カーロ、愛憎の芸術家のミュージアム

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