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LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」 — LINE MUSIC 高橋明彦氏

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LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」
LINE MUSIC 高橋明彦氏 インタビュー

LINE MUSIC 株式会社 取締役
高橋明彦
 2013年の夏、LINEが音楽サービスについての構想を発表し各方面に衝撃が走った。同年内のリリースという話もあり、その動向に誰もが注目していた。それから約2年、ソニーミュージック、エイベックス、そして後ほど参加のユニバーサルミュージックとの共同出資企業「LINE MUSIC株式会社」が手がけるサービスとして「LINE MUSIC」はスタート。国内5,800万人という圧倒的な登録ユーザーを持つLINEと連携ができるというのは、やはり他のサービスにはない唯一無二の特徴と言っていいだろう。本格的に普及が始まった音楽ストリーミング市場で、LINE MUSICはどのように展開していくのだろうか。
(Jiro HONDA)
2015年7月17日掲載

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揃った3要素「LINEの成長」「デバイスの進化」「市場変化」

—— LINE MUSICのローンチがこのタイミングになった経緯というのは?

高橋:事業アイデアとしては、LINEの前身時代からありました。もう4年ほど前になりますが、音楽という万人に愛される魅力あるコンテンツを活かして何かできないかということで、その時あった企画の一つがサブスクリプション型音楽配信サービスでした。ちょうどSpotifyも海外で勢いを増し始めていた時で、同じようなことが日本でできないかなと思いまして。それで、各レーベルさんに話をしにいったのですが、その時は全然相手にしてもらえず(笑)ペンディングになっていました。その後、おかげさまでLINEが成長し登録ユーザー数も現在では国内5,800万人になり、やっと音楽業界を盛り上げることのできるパートナーとして認めていただけたのか、改めてその企画が実現できる状況が整いました。

—— 4年越しの企画だったんですね。

高橋:デバイスの進化も、今回実現できた背景にあります。基本的にストリーミングで利用するサービスモデルなので、スマートフォンおよび通信環境の普及によりストレス無く使える状況になったというのは大きいですね。

もう一つは、市場の変化です。海外でのストリーミングサービスの成功例や、それを求めるユーザーの声もあって、国内でもマインドチェンジが徐々に進んできました。CDやダウンロードとのカニバリゼーションに対する懸念も薄まり、ストリーミングへの期待も合わさって、各方面の機が熟したのかなと感じます。

ですので、ユーザーから見ると「どうして一斉に定額サービスが始まったの?」という感じがするかもしれませんが、今申し上げたような色々な事情もあって、偶然この時期が新しい市場にプレイヤーが揃うタイミングだったんだと思います。

—— そしてリリースからたった2日で100万DLを突破(※)し、その後も順調に伸びているようですね。

高橋:おかげさまでDL、再生数ともに伸びていまして、さらにユーザーのアクティブ率が予想以上に高く、我々も驚いています。再生時間のパラメーターなどを見ると、本当にしっかり使っていただけているんですね。その数値がユーザー数とともに日々増加しているので、まずはみなさんに受け入れていただけたのかなと。

※開始後、1ヶ月(7月9日の時点)で430万DL、4億再生を突破している。

みんなへ「シンプルに届ける」デザイン

LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」 — LINE MUSIC 高橋明彦氏(2/4)

LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」
LINE MUSIC 高橋明彦氏 インタビュー

みんなへ「シンプルに届ける」デザイン

—— 直前にリリースされたAWAがSpotify寄りというかスタイリッシュなデザイン/UIなのに対して、LINE MUSICはどちらかというとシンプルでスタンダードな印象を持ちました。デザインのコンセプトはどのようなものだったのでしょう。

高橋:そこはかなり悩みましたね。海外サービスのようなクールさ、「音楽のカッコ良さ」を前面に出すという意見ももちろんありました。ですが、ストリーミングサービスがまだあまり馴染んでいない中で、我々が相手にするのは5,800万人というLINEユーザーでもありますし、あまり尖ってしまうとユーザーを選んでしまう可能性もありますので、まずは「みなさんにシンプルに届ける、受け入れて頂く」ということを念頭において設計しました。

あと、お気付きかも知れませんが、実はLINE MUSICにはLINEのキャラクターを敢えてどこにも登場させていないんです。

—— 確かにそう言われてみれば。

高橋:キャラクターにも良し悪しがあって、ポップな反面、大人の方に若者向けのサービスだと思われてしまうのももったいないので、今回はフラットに、より多くの人たちに違和感無く楽しんでもらえるようなサービスデザインにしました。

「コンテンツとして音楽を大事に扱う」

—— 高橋さんは立ち上げからずっと携わってこられたということで、このプロジェクトのアイデンティーを教えてください。

高橋:とにかく「コンテンツとして音楽を大事に扱う」ですね。ITサービスはともすると、権利関係だったり割とコンテンツを曖昧に扱うケースも多かったりしますが、今回そこはきちんとやろうと。ソニーミュージック、エイベックス、ユニバーサルミュージックとジョイントベンチャー(以下、JV)を組ませて頂いたのも、その証になっています。音楽をサービスで扱う以上は、アーティストさんも含めて本当に大切にしようという考えで取り組んでいます。

音楽をスタンプのようにネタっぽく扱うこともできたのかもしれないですけど、最初からそれをやるのは何か違うなと。代表の舛田も「『LINE×音楽』というのは面白くなるから、まずは100%の『音楽』を届けようよ」と言っています。良い意味でクラシックな、しっかりとしたサービスで立ち上げようと。

—— 裏を返せば、それだけ音楽業界とコンセンサスを作り上げるのに苦労されたということになりますか?

高橋:音楽業界は伝統があり、「音楽」という唯一無二のコンテンツを扱っていて、アーティスト、そしてファンがいる。そういう他にはない業界のみなさんに共感して頂くために、先ほども申し上げたように、JVを組ませていただくことによって我々も本気だという姿勢を示させていただきました。

—— 業界のみなさんは、JVの座組におけるパワーバランスが少し気になっているかなと思うのですが。

高橋:基本的には出資比率に応じた舵取りですね。ですので、現在はソニーミュージックと我々がメインになります。LINE MUSICという会社も、ソニーミュージックとLINEからの出向スタッフで成り立っています。もちろん重要な事は4社でしっかり決めていますが、実務的なところは2社が責任を持つという形になっています。

—— 技術的な部分はLINEが受け持っているのでしょうか?

高橋:多くの部分は、LINEが受け持っています。「LINE」の名前を冠したLINEのファミリーサービスなので、そこは責任を持ってやっていますし、音楽のマインドやレーベルの視点はソニーミュージックにしっかり注入していただいています。

リスクもメリットも覚悟を持って共有

LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」 — LINE MUSIC 高橋明彦氏(3/4)

LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」
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リスクもメリットも覚悟を持って共有

—— ユニバーサルミュージックが後から参加した経緯というのは?

高橋:ソニーミュージックやエイベックスとのケースでもそうなのですが、お話をするうちに「どうせ一緒にやるなら、もっとしっかりパートナーとしてやりましょう」という流れですね。結局、LINE1社で動いてもダメなんです。我々はユーザーをたくさん集めて、クオリティの高いアプリを作って届けることを責任持ってやります。その代わり、JVに参加いただいたレーベルさんが率先して、楽曲・コンテンツに関してはお願いします、と。リスクもメリットも覚悟を持って共有するパートナーとしてご一緒しています。

—— 今後も音源提供するレーベルが増える予定はありますか?

高橋:我々としてはもちろん増やしていきたいですが、まだ過渡期なので、サブスリプションに対する判断は様々で当然だとも思っています。

世界で最もパッケージが売れている日本でも、その売上は年々下がっています。パッケージという柱も残しながら、喰い合うのはではなく、サブスリプションという新しい柱を作っていくのが我々の役割だと思っています。YouTubeなどで音楽を無料で聴いていたり、音楽から少し距離ができてしまった人を「LINE×サブスリプション」の魅力で引き寄せて、もう一回音楽のマーケット全体を盛り上げていきたいとを考えています。そのために学割といった仕掛けも用意しました。

—— 当然若いユーザー層を意識している?

高橋:最近音楽から離れていっている、一番音楽を聴いて欲しい若い層にいかに使って頂くかを考えたときに、負担の少ない価格でサブスクリプションの楽しさを、まずは体験していただきたいと思いました。なので、単なる割引ではなく「学割」としてユーザーメッセージも鋭く設定しました。

一旦途切れてしまった音楽を聴く習慣を、スマホとサブスクリプションならではの体験でもう一度繋いで、昔、音楽ラバーだった人達が再び音楽を沢山聴くようになると最高ですよね。

—— 音楽を積極的に聴いている若い層も、いわゆるグレーな聴き放題系音楽アプリを無意識に使っている状況があります。

高橋:その問題もクリアしないと、最終的に課金まで繋がらないと思っていますので、そういうアプリやサービスとの差別化や機能強化は進めていきます。例えば、バックグラウンド再生やオフライン対応、レコメンド機能、そして最大の特徴としてのLINEとの連携ですね。シェアで、グループで楽しんだり、気分に合わせて友達に音楽を送ったり。

グレーなアプリは、しっかり作られていないので、結局隙がありますよね。我々はしっかり対応し、アプリとしても勝ちたいと思っています。ああいうグレーなサービスは、基本的にレコード会社やアーティストに対して一切対価が発生しませんからね。負けられません。

「音楽をシェアして楽しむ」までの二段階

—— LINEによる「音楽 × コミュニケーション」は相当なインパクトがあります。

高橋:とはいえ、実は「友だちと音楽をシェアして楽しむ」というステージに辿り着くためには、最初の段階として音楽でLINE MUSICがみなさんの求めるニーズをクリアしなければいけないと考えています。

—— そもそもLINE MUSICがオフィシャルな音楽アプリとして認められる必要があると。

高橋:その土台がないと、結局、最終的に選ばれることは無いと思っています。LINE MUSICが課金に値する音楽サービスかどうかは、シビアに見られていると思うので、その土台をしっかり作った上で、LINEならではの新しい音楽の楽しみ方を提案していきたいです。この二つの段階は常に意識して取り組みたいと思っています。

—— まだサブスクリプションに対して、その楽しみ方をみんな試行錯誤している状況もあるようですね。通信制限にすぐ達してしまうという声もあったり。

高橋:そこに対しては、音質・通信量を選べるようになっていたり、7月10日からオフライン再生機能の提供も開始するなど、様々な仕組みを積極的に採用していますので、wi-fiなどを上手に活用していただくことで通信負担を軽減して楽しんでいただくことができると思っています。

「日本発のサブスクリプションサービス」を作ることが使命

LINE MUSICで音楽業界に参入したLINEの「本気」と「覚悟」 — LINE MUSIC 高橋明彦氏(4/4)

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「日本発のサブスクリプションサービス」を作ることが使命

—— 普及の目標として、最近よく2,000万人の会員を集めれば、サプスクリプションはサービスモデルとして本物になると言われています。

高橋:やはり着うた最盛期のユーザー数である2,000万人というのは一つのベンチマークですよね。一時代を築いた着うたのようなサービスになる事を求められているのが、サプスクリプションだと思います。ですので、我々はサブスクリプションサービスのトップランナーとなるべく5,800万人のLINEユーザーを出来る限り取り込みたいと考えている一方、他サービスを全て出し抜いて市場の独占を目指す必要は必ずしも無いとも思っています。というのも、ニュースアプリが多くあるように、音楽アプリも趣味嗜好に合わせて色々なものがあっていいと。これからも様々なサービスが登場して、市場全体で2,000万や3,000万に成長できれば、全体としてみなさんにもっと音楽を楽しんで頂けるのではないかなと思っています。

さらにマーケティング的に言うと、サービスが一つだけの場合は、「やるorやらない」の2択ですけど、同じようなサービスが二つ以上あれば、「やらない」という選択より「どれを選ぶか」という選択になるので、その意味でも今は良い波が来ていると思います。

—— 海外のサブスクリプションでスタンダードなフリーミアムモデルについてはどのように思われていますか?

高橋:日本の市場環境を鑑みると、フリーミアムはロスが大きすぎます。歩留りがよくない。フリーに留まる六割以上の課金機会のロスは日本では致命的だと思っているので、フリーミアムは日本では適切なビジネスモデルではないと考えています。日本は、世界的にも珍しい「少額課金」が成り立つガラケーからの文化、しっかりと対価を支払っていただける良いマーケットを持っていますから、それをフリーミアムで殺すのではなくて、「小額課金(ライトミアム)からプレミアム」という流れを創ることが、LINE MUSICの一つのチャレンジです。「日本発のサブスクリプションサービス」を作ることが、我々の使命だと理解しています。

アーティスト、ファン、レーベルの三方にメリットを

—— LINE MUSICの海外展開についてはいかがでしょうか?

高橋:すでにLINEが普及している国では行っていまして、例えばタイでは日本より先にLINE MUSICをリリースしています。これは、許諾等の関係もあって、「箱(アプリ)が一緒で中身(コンテンツ)が違う」というものなのですが、近いうちには日本の楽曲を海外に出していくということも含めて検討していければと思います。

—— 世界の潮流を見ても、ストリーミングサービスはいずれ日本でも定着すると思うのですが、その際いわゆる「アーティストへの報酬」という議論が国内でも起きると思います。

高橋:そうですね、流行れば流行るほどそういう話は加熱すると思います。我々としても、そこに関しては放置せずしっかり向き合っていかなければならないと考えています。もちろん「良いサービスを創り、しっかりと売上を上げ、多くの金額をレーベル・アーティストに分配できるようにする」のはもちろんですが、それだけではなくLINE MUSICは「5,800万人のユーザーが毎日使っているホットな場に、直接、アーティストの音楽や声を届けることができるツールでもある」という価値を感じて頂きたいです。LINE MUSICで新たなアーティスト・曲との出会いを作り、そこから公式アカウントというツールを活用して、今までにない「新たなファン」を獲得できる場にしたいと思っています。。そうすれば、そこから新曲の告知だけでなく、ライブへの集客や、グッズの販売にも繋がりますし、360度のビジネスをサポートするプラットフォームとしてLINE、そしてLINE MUSICをフル活用してもらいたいです。アーティスト、ファン、レーベルの三方にメリットのある流れをLINEで形成するのが理想の形です。

—— 舛田社長の発言などからは、ワクワク感とともに、音楽産業に対する使命感のようなものも感じました。

高橋:舛田自身もエンターテイメントにとても興味がありますし、もう一回音楽業界が元気になればLINEにとっても素晴らしいことなので、情熱を注いでいると思います。LINEのエンタメプラットフォームにおいても、LINE MUSICは重要なサービスパーツとなっているので、今後もみなさまの期待にお応えできるように取り組んでいきます。

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